マーベル映画の異端児にして問題児・デッドプールが活躍するシリーズの第3弾。
これまでマーベル映画の本流であるアベンジャーズとは関わりがなかったデッドプールだが、本作ではX-MENの主要メンバーであるウルヴァリンと共演する。
なぜこの二人が関係を持つのか?
「 ローガン 」で死んだはずのウルヴァリンはなぜ生きているのか?
デッドプールの世界は、アベンジャーズが活躍するバースやX-MENが活躍するバースとどのような関係にあるのか?
数々の謎をはらみながら、巨大な興奮が押し寄せる。
MCU起死回生の快作!
デッドプール&ウルヴァリン
あらすじ
戦う動機は超個人的、破天荒でなんでもアリの“クソ無責任ヒーロー”デッドプールに世界の命運は託された!?ヒーローになんて興味はないけど、大切なファミリーの大ピンチなら頑張っちゃう!予測不可能なミッションのカギを握るのは…よりにもよって“あの爪野郎”。クソ真面目で“キレるとヤバい最恐アウトロー”ウルヴァリンに助けを求めるが…。 全く異なる個性のR指定ヒーロー2人が暴れまわる、過激なアクション・エンターテイメント!
(公式サイトより引用)
原題
Deadpool & Wolverine
公開日
2024年7月24日
上映時間
128分
予告編
キャスト
- ショーン・レビ(監督)
- ライアン・レイノルズ
- ヒュー・ジャックマン
- エマ・コリン
- マシュー・マクファディン
- モリーナ・バッカリン
- レスリー・アガムズ
- ステファン・カピチッチ
- ブリアナ・ヒルデブランド
- 忽那汐里
- カラン・ソーニ
- ロブ・ディレイニー
公式サイト
MCUの異端児とX-MENのヒーローが異色の共演
改めて整理しよう。
アイアンマン、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカ、ハルク、スパイダーマン、ドクター・ストレンジなどの
アベンジャーズが活躍するバースをマーベル映画の本流(MCU/マーベル・シネマティック・ユニバース)だとすれば、
彼らと一切共演せず我が道(R指定の道?)を行くデッドプールは完全に異端の存在だ。
ただしアベンジャーズとは別枠で、マーベル映画のもう一つの柱であるX-MENとはそれなりに縁がある。
X-MENの一員であるコロッサスらがこちらのシリーズに出ているし、そもそもライアン・レイノルズ演じるデッドプールのデビュー作は「 ウルヴァリン:X-MEN ZERO 」(2009)なのだ。
ただしこのときはウルヴァリンの敵として登場し、壮絶な戦いを繰り広げ、敗北している。
そもそもこのときのデッドプールは、キャラ的に現在とは全く別物。
いわばデッドプールの黒歴史だ(それについても本作でネタ的に回収されている)。
マルチバースの破壊者デッドプール
ではこの作品でデッドプールとウルヴァリンはどのような経緯で出会い、何者を敵とし、なぜ共闘することになるのか?
詳しいことはネタバレになるので言えないが、例によってのマルチバース設定によるものとだけは言っておこう。
マルチバース!
MCU堕落の根源であるマルチバース!
ところがこの作品では、マルチバースそのものを徹底的におちょくり、ネタにしてしまう。
マルチバース設定の本作において「 マルチバース設定を使った作品は皆失敗作 」としれっと言ってのける厚かましさ。
一つひとつは批評と言えるほど深い内容ではなくとも、この手のブラックジョークやパロディを、予想外のアイデアでマシンガンのように浴びせられると、確実にこちらの認識が変容してくる。
アメコミ界の異端児デッドプールの面目躍如と言ったところだ。
ストーリーではなく映像的快楽と膨大なネタを楽しむべし
ストーリーに関してはあってなきがごとし。
はっきり言えばメチャクチャだ。
キャラクターの行動の動機などを、通常のドラマツルギーに従って真面目に追っていくことは徒労に過ぎない。
本作は、よくもまあと呆れるほど次から次へと出てくる笑いのアイデア、R指定も無理はないハードでグロなアクション描写、
そしてMCUやX-MENをはじめとする様々なネタを楽しむ映画だ。
なかでも笑えるのは、企画は発表されたものの実現しなかった作品、業界の噂などを惜しげもなく映像化して笑わせるところ。
DC映画「 ザ・フラッシュ 」(2023)でも、実現しなかった企画であるニコラス・ケイジ版スーパーマンがチラリと登場してファンをにやりとさせたが、こちらはさらに本格的。
まさか彼の演じるあのキャラが見られるとは…。
異端児が開いたMCUの未来
結論から言えば、これこそ低迷にあえぐマーベル映画の救世主とも言うべき傑作だ。
「 アベンジャーズ/エンドゲーム 」以降の作品としては、「 スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 」「 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLME 3 」と並ぶもの。
しかもその2作が、それぞれの三部作を完璧に締めくくる作品であったのに対し、この作品はデッドプールとウルヴァリンの新たなる物語を始めるもの。
つまりは未来へと繋がる作品だ。
1968年生まれのヒュー・ジャックマンがどこまでウルヴァリンを演じられるか不安もあるが、この珍コンビの物語を、せめてあと1本は見せてほしいものだ。
X-MENの血脈をつなぐ者たち
この作品を見ると、デッドプールが、アベンジャーズのいるMCUではなく、X-MENの流れに属するキャラクターであることがはっきりと分かる。
彼が、これまでアベンジャーズのメンバーと関わりを持たずに来たのも無理なからぬことだろう(今回はあれやこれやと関係を持っているが)。
それをダメ押しのように教えてくれるエンドクレジットに胸が熱くなる。
X-MENをずっとリアルタイムで追い続けてきたファンには、最高のプレゼントだった。
この先X-MENシリーズがリブートされるとしても、公開は5年以上先のことだろう。
その間X-MENの血脈は、デッドプールとウルヴァリンの二人に託された。
世界を滅亡の危機から救った二人なら、マーベル映画やX-MENの世界を救うこともきっとできるだろう。
「 デッドプール&ウルヴァリン 」感想レビュー【 ネタバレなし 】
文・ライター:ぼのぼの