アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー

あらすじ
6つすべてを手に入れると、全宇宙を滅ぼす無限大の力を得るインフィニティ・ストーン。そして、その究極の石を狙う“最凶最悪”の〈ラスボス〉サノス。彼の野望を阻止するため、スパイダーマン、ドクター・ストレンジ、ブラックパンサー、ガーディアンズたちも集結した、最強ヒーローのチーム“アベンジャーズ”が、人類の命運を賭けた壮絶なバトルに挑む。果たして、彼らは地球を、そして人類を救えるのか?
公式サイトより
原題
Avengers: Infinity War
公開日
2018年4月27日
上映時間
149分
予告編
キャスト
- アンソニー・ルッソ(監督)
- ジョー・ルッソ(監督)
- クリストファー・マルクス(脚本)
- スティーヴン・マクフィーリー(脚本)
- ロバート・ダウニー・Jr.
- クリス・エバンス
- クリス・へムズワース
- スカーレット・ヨハンソン
- エリザベス・オルセン
- トム・ホランド
公式サイト
MCUの最高到達点

劇場で2回見ているが、今回はDisney+で3回目の観賞。
最高に面白い。
やはりMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)は、このアベンジャーズ最後の2部作が最高のクライマックス。
これを超える興奮にはもうなかなか出会えないのでは。
149分の長尺だが、ダレるところが全くない。
それだけクライマックス続きだと見ていて疲れ、逆に内容が頭に入ってこなくなるのが普通だが、そうならないのは全編がユーモアに溢れていて、緩急のバランスが絶妙だから。
急が面白いのはもちろんだが、緩も面白いから、一瞬たりとも退屈しない。
作品の意義を理解した俳優たちの名演

特に感心するのは「 演技 」と「 絵作り 」の素晴らしさだ。
この手の作品は、俳優がひたすらグリーンバックの前で演技するせいか、どこかやる気がなかったり集中力を感じなかったり、型にはまった演技をしたりしているものが多い。
だがこの作品に関しては、皆その作品の意義を理解しているのか名演だらけ。
中でも傑出しているのはトニー・スターク / アイアンマン役のロバート・ダウニーJr.とサノス役のジョシュ・ブローリン。
この2人が次作で最後の決着をつける最重要キャラということもあってか、一点の曇りもない演技。
今にして思えば、この映画でジョシュ・ブローリンは、オスカーの助演男優賞にノミネートされても良かったのでは。
そして絵作り。
人間以外ほとんどCGで作られたような作品は、絵作りが無駄に派手になるものが多いが、この作品に関しては、そんなことが全くない。
常に最適の構図、最適のタイム感覚で、どんなに速いアクションでも「 速すぎる 」ことがなく、どこで誰が何をしているかがよく分かる。
ルッソ兄弟は実によい職人仕事をしている。
トロッコ問題のショーケース

脚本面で、本作がこれほど素晴らしい作品になったのは、正義 vs 悪といった単純な形、言い換えれば特定のイデオロギーに偏った物語にならず、さまざまな登場人物がさまざまな価値観に基づいて行動し、その間で揺れ動くからだ。
この作品は全編が「 トロッコ問題 」のショーケースとなっている。
「 トロッコ(路面電車)が暴走し、そのままでは前にいる5人の作業員が轢き殺される。しかし分岐器を操作すれば、トロッコは別の路線に逸れ、そちらにいる1人が轢き殺される。分岐器の側にいるあなたは、どのような行動を取るべきか 」という道徳的ジレンマに関する問題だ。
もちろん、そこにあるのは「 正解 」ではなく、「 決断 」と「 倫理的な責任 」だけだ。
この物語の中でもっとも揺るぎない価値観を持ち、強い意志で前に突き進んでいく人物がサノスである。
だからこそ彼はこの作品では勝利を収めるのだが、他の人物も大なり小なり、「 何を救い、何を犠牲にすべきなのか 」という問題と直面することになる。
特に大きな試練に向き合うのはワンダ(エリザベス・オルセン)だ。
ヴィジョン(ポール・ベタニー)を、彼の希望通りもっと早く殺していれば、あの未曾有の惨劇は防げたはずだ。
しかしヴィジョンへの愛ゆえに、彼女にはそれができない。
ギリギリで決意するものの、もはや時遅し。
ギリギリまでガモーラ(ゾーイ・サルダナ)に引き金を引けなかったクイル(クリス・プラット)とサノスの違いも明白だ。
この映画は、そのような選択や失敗を単純な倫理観で裁かない。
サノスの狂気に満ちた確信も、アベンジャーズやガーディアンズの愛ゆえの迷いも、すべて人間の意思や心のあり方として、そのまま公平に提示し、「 正義 vs 悪 」ではなく「 意思 vs 意思 」の闘いとして描いていく。
だから特別分かりやすいメッセージなどない大エンタテインメントでありながら、紛れもない「 人間ドラマ 」となっている。
それが本作のドラマ的な豊かさだ。
ある意味「 七人の侍 」に近い豊かさを持つ作品と言ってもいいだろう。
唯一最大の不満はハルクの扱い

本作および次の「 エンドゲーム 」でたった1つだけ不満点を上げるとすれば、ハルクがまったく活躍しないことだ。
活躍しないどころか、ただひたすら株を下げていく。
「 アベンジャーズ 」1作目ではあれほど痛快無比な活躍を見せてくれたハルクが、その魅力を全て奪われ、ここまで酷い扱いを受ける理由は一体何なのだろう。
製作チームはハルクが嫌いなのか?
そこだけがどうしても納得できない。

文・ライター:ぼのぼの

