「 キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド 」の映画情報・あらすじ・レビュー

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サム・ウィルソンが新たなキャプテン・アメリカとしてスクリーンに戻ってくるMCU最新作。

新アベンジャーズへの序章として重要な意味を持つ作品であり、等身大ヒーローとしてのサムの魅力が光る。

しかしストーリーの弱さやスペクタクルの地味さなど問題点も多く、特に日本人が見ると複雑な気分になるところも。

今後への期待感と物足りなさが交錯する本作について、詳しく見ていこう。

本記事はネタバレを含みます。閲覧の際はご注意ください。

目次

キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド

©Captain America: Brave New World

原題

Captain America: Brave New World

あらすじ

“正義の象徴”を受け継いだ〈新たなキャプテン・アメリカ〉の物語。

アメリカ大統領ロスが開く国際会議でテロ事件が発生。それをきっかけに生まれた各国の対立が、世界大戦の危機にまで発展してしまう。この混乱を食い止めようとする新キャプテン・アメリカことサム・ウィルソンに、〈赤いハルク〉と化した大統領ロスが襲いかかる…!

だが、全ては“ある人物”によって仕組まれた陰謀だった——。
(公式サイトより引用)

公開日

2025年2月14日

上映時間

118分

予告編

キャスト

  • ジュリアス・オナー(監督)
  • アンソニー・マッキー
  • ダニー・ラミレス
  • シラ・ハース
  • カール・ランブリー
  • ショシャ・ロケモア
  • ヨハネス・ヘイクル・ヨハネソン
  • ジャンカルロ・エスポジート
  • ティム・ブレイク・ネルソン
  • ハリソン・フォード
  • リブ・タイラー
  • 平岳大

公式サイト

キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド

新アベンジャーズへの序章

©Captain America: Brave New World

スティーヴ・ロジャース(クリス・エヴァンス)から盾を引き継ぎ、新たなキャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)の活躍を描く作品。

「 キャプテン・アメリカ 」シリーズの第4弾というよりは、MCUのメインストリームシリーズ再開第1弾として、新アベンジャーズへの序章と見るべきだろう。

ロス大統領(ハリソン・フォード)がサムにアベンジャーズの再結成を依頼するなど、彼がこれから新しいリーダーとして成長していくことが暗示されているので、その見方は決して間違っていないはずだ。

そのような重要な位置付けをなされた作品だが、おもしろいようなそうでもないような微妙な出来だった。

「 及第点ギリギリ 」というのが妥当な評価だろう。

決してつまらないわけではないが、一言で言えば「 地味 」であり、アクションやスペクタクルの興奮を期待すると肩透かしを食うことになる。

以下、本作のよい点と不満な点を述べていこう。

作品の詳しいネタバレがあるため、観賞後に読まれることをおすすめします。

2代目キャプテン・アメリカは等身大のヒーロー

先によい点を挙げると、サム・ウィルソンという人物の魅力に尽きる。

サムは超人血清によって並外れた能力を持つ前任者のスティーヴと違い、優れた身体能力はあるにせよ、基本的にはごく普通の人間だ。

ワカンダの科学力で桁違いにパワーアップされたヴィブラニウム製のウィングスーツは強力だが、あくまでも外付けのメカであり、中身は我々とそこまで変わらない人間なので、危なっかしいことこの上ない。

そんなサムが勇気と使命感を拠り所に活躍する姿は、スティーヴとは違う等身大ヒーローとしての魅力がある。

劇中の台詞にもある通り、彼は人々の「 希望 」ではなく「 目標 」となりうる人物だ。

そんなキャラクターを演じるアンソニー・マッキーは、初登場時とは比べものにならないほど精悍さを増し、MCU作品の主役にふさわしい魅力を見せている。

スポーティーな肉体は美しく、アクションもキレがいい。

もちろんほとんどの場面はウィングスーツを利用したVFXアクションだが、その基礎となる身体の動きはやはり見事なもの。

彼の活躍には今後も期待できそうだ。

ストーリーの弱さと控え気味なスペクタクル

ただしストーリー面は弱い。

ほとんどの部分が、黒幕となる人物の陰謀を探るミステリータッチ。

それ自体は問題ないのだが、さして複雑でもない設定を無駄に複雑に描いているため、謎を解き明かしていく過程のドキドキ感や、真相が分かったときの驚きなどは皆無と言っていい。

派手な見せ場は主に2つだけ。中盤の空中戦と、終盤のレッドハルクとの対決だ。

見る前は、クライマックスで何かそれ以外の隠し球が出るのだろうと思っていたが、レッドハルクとの戦いだけで終わってしまった。

つまりスペクタクルシーンは、ほとんど予告編で披露されたものばかり。

しかもロスがレッドハルクになる種明かしまで見せているので、驚きもない。

ドラマ主体の作品ではあるが、MCU作品に期待されているアクションやスペクタクルの見せ場を、もう少し派手にしてもよかったのでは。

また、黒幕となる人物が、あれほどの知能と科学技術を持ちながら、やりたかったことは個人的な復讐に過ぎないというスケールの小ささも、ドラマの盛り上がりを大きくトーンダウンさせる結果になっている。

黒幕の設定に問題あり

そもそもその黒幕の設定に問題がある。

全く記憶にないので、初めて出てくるキャラクターだろうと思っていたが、後で調べてみると、実は「 アイアンマン 」(2008)に続くMCUの第2作目「 インクレディブル・ハルク 」(2008)に出てきたキャラクターだった。

しかしそう言われても、17年前に一度見ただけの映画に出てきた脇役までは、さすがに覚えていない。

サディアス・ロスの方は、その後もちょこちょこシリーズに出てきていたので、「 そうか、これは亡くなったウィリアム・ハートが演じていた、あのキャラクターか 」と思い出し、何とか話についていけたのだが、

こちらの黒幕は完全に17年ぶりの登場で、存在そのものを覚えていなかった。

「 インクレディブル・ハルク 」では、エドワード・ノートンがハルク/ブルース・バナーを演じている。

彼がマーベルと対立し、「 アベンジャーズ 」(2012)以降はマーク・ラファロに交替したこともあってか、MCUの中でも黒歴史化し、ほとんど触れられずに来た作品だ。

第1期アベンジャーズの物語が集結した今となっては、まさに紀元前のお話。

今更そこに出てきた脇キャラクターの因縁を物語のベースに置かれても困ってしまう。

もう一つ、本作の重要なベースになっているのが「 エターナルズ 」(2021)だ。

監督がクロエ・ジャオでかなり好きな作品だったが、その後全く触れられることなく、こちらも黒歴史化しつつあったので、その設定を生かしてくれたことは嬉しい。

シリーズの中で傍流に位置することは否定できないが、製作年は新しいし、設定として引用されたのは人間関係ではなく世界観なので、こちらは許容範囲。

しかしさすがに「 インクレディブル・ハルク 」の方は…。

「 シリーズの他の作品を見ていないと話がよく理解できない部分がある 」という、近年のMCUの問題点は相変わらずだ。

日本は中国の代役

もう一つ、日本人として気になった点を書いておこう。

本作では「 日本 」がストーリーの上で重要な役割を果たしている。

アダマンチウムを巡る国際的駆け引きの中で、日本がアメリカと真っ向から対立するのだ。

日本の尾崎首相(平岳大)は毅然とした態度を示し、ロス大統領に対して一歩も引かない。

「 日本がアメリカにこんなに強気でいられるわけがないだろう(笑)でも本当は、これくらい明確な意思表示をしてほしいものだな 」と苦笑しつつも、このあたりはおもしろく見ていた。

念の為書いておくと、日本だけでなく、フランスとインドもアメリカに対して非常に強気。

MCUのアメリカは、現実よりもかなり弱い存在なのである。

しかし日本がインド洋に艦隊を派遣し、米軍と開戦一歩手前の緊張状態になったとき、やっと気が付いた。

これは本来なら「 中国 」が果たすべき役回りなのだ。

だがこれを中国にしてしまうと、今のリアルな世界そのままで、政治色が出すぎてしまう。

巨大市場である中国で公開できなくなる可能性もある。

そこで日本が「 中国の代役 」として描かれたというわけだ。

幸い、その描かれ方は「 国際社会の極めて有力なプレーヤー 」というものであり、フランスやインドからも一目置かれている。

単なる悪役ではないし、姑息な描写は一切ない。

これまでにハリウッドエンタメに登場した、最も立派な日本像とさえ言えるかもしれない。

しかしそれはあくまでも「 中国の代役 」に過ぎない。

「 中国にこの役回りを振ると怒り出して厄介なことになりそうだが、日本なら絶対に怒らないから大丈夫 」ということであてがわれた役…

ポジティブに考えれば「 今さら日米が戦争をするわけはなく、両国の信頼関係があるからこそ振られた役回り 」と言えるが、何だか微妙にバカにされたような気分だし、ナメられている感が拭えない。

右翼的な思想とはかなり距離があるはずの自分ですら、これにはどこか釈然としない思いが残った。

執筆者

文・ライター:望月正人

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