原作はNYタイムズ紙のベストセラー小説

あらすじ
公開日
2022年3月25日
原題
PACHINKO
上映時間
54分
キャスト
- コゴナダ(監督)
- ユン・ヨジョン
- イ・ミンホ
- キム・ミンハ
- ジン・ハ
- パク・ソヒ(Soji Arai)
- チョン・インジ
- 南果歩
- アンナ・サワイ
- ジミ・シンプソン
- ノ・サンヒョン









予告編
公式サイト
Pachinko パチンコ(第1話)

影島で育った若き日のソンジャは、日本の植民地支配下の韓国で生まれた。
彼女の母親は、子どもを何度も失った後にムーダン(巫女)に助言を求め、ソンジャを授かった。
ソンジャは貧しい環境で育ちながらも、豊かな感性を持つ。
本ドラマは、在日コリアン三代に渡るサーガだ。
1話のレビューを見る
AppleTV +で独占配信中のオリジナル作品。
原作はNYタイムズ紙でベストセラーとなりました。
世代を超えた、在日コリアン家族の物語。
今作の魅力を、追います。
物語の舞台は1920年代の朝鮮半島。日本の植民地支配下で、一人娘を必死に育てるヤンジンとフニ。豊かな暮らしを求めて祖国を離れた家族の物語が幕を開ける。

1915年、日本帝国による植民地支配下の朝鮮(韓国)。
主人公は、影島で母ヤンジンと父フニに、大事に育たれた娘のソンジャ。
子に恵まれず息子3人をハンドル(一歳)足らずで亡くしてしまったヤンジンは、涙ながらにムーダン(巫女)の助言を請います。
「 子供は無事に生まれて、元気に育つだろう。そして、必ず子孫を残し、血筋は受け継がれる 」
というお告げを得て、無事に可愛い娘が誕生します。
ソンジャは、植民地下の貧しい暮らしの中、たくましく、そして怜悧に育ちながらも、その豊かな感受性は、世の矛盾を感じているようでした。
時を経て1989年、ニューヨーク。
大企業の副社長となったソロモンは、生まれ故郷である大阪に里帰りして、ハンメ(祖母)と再会します。
アカデミー賞女優のユン・ヨジョン演じるハンメとは、かのソンジャです。
物語は、三代の軌跡を架け橋とした、一大サーガとなるようです。
蛇足ながら、筆者も朝鮮ルーツの在日コリアン4世なので、観賞しながら血がザワザワする感覚がありました。
これから、幾つかの在日コリアン映画と対比しながら、今作の主人公たちと、ルーツをたどる旅をしたいと思います。

日本ではあまり話題になっていないですが、今作は韓国で大ヒットを記録し、シーズン2も確定しています。
Apple TV+ 独占配信ということもあり、日本での視聴者が少ないのが残念ですね。
ご存知の人はいるかと思いますが、パチンコ産業の歴史は在日コリアン1世により作られました。
パチンコ業界で在日コリアン系が多いのは、そのためです。
管理人の先輩がシーズン2のオーディションを受けるため、韓国へと旅立ちました。
スクリーンで会えることを楽しみにしてい
Pachinko パチンコ(第2話)
ミン・ジン・リーによる原作は、全米図書賞の最終候補となり、本ドラマは過去と現在を交互に描くことで、立体感が生まれている。
主題歌の「 今日を生きよう(グラス・ルーツ)」が、ノスタルジックな雰囲気を誘い、物語は1989年 – 東京の結婚式場から始まる。
しかし、そこで新郎の父が発した言葉には、朝鮮人に対する蔑視が受け脈々と受け継がれていた。
物語は1930年代に遡り、ソンジャが同年代の男たちに暴行を受けそうになる場面が描かれる。
彼女は、大金持ちの貿易商コ・ハンスに助けられ、2人は密会を重ねる。
物語の行方とロマンスに注目。
2話のレビューを見る
下宿屋の娘ソンジャが成人した1930年の影島(朝鮮)と、1989年の大阪(日本)。
隣国同士の、現代と過去が交錯します。
ソンジャはロマンスに落ちるのか?
ハンスのおかげでソンジャの視野は広がる。それにより、ソンジャは代償を伴う夢を抱くことになる。ソロモンは在日コリアンであることを上手く利用しようと試みる。

在米コリアン、ミン・ジン・リーによる原作は、全米図書賞の最終候補となりました。
原作では、時系列でじっくりと家族の歴史を味わえる作りとなっています。
一方、今ドラマでは、過去と現在を交互に描くことで、立体感が生み出されています。
主題歌の「 今日を生きよう(グラス・ルーツ)」が、ノスタルジックな「 あの頃 」へと魔法のように誘い込んでくれます。
1989年、東京。
とある結婚式場で、ソンジャの孫となるソロモンは、かつての日本の友人が幼い頃に彼へ言った言葉を伝えます。
「 韓国人は犬に育てられているから、食べるときに皿に顔を突っ込む 」
ソロモンの上司であるアメリカ人のトムは、新郎の父の発言に、
「 なぜ過去のことを引きずるんだ?」
と不思議がります。
1930年、ソンジャは、日本から来た同年代の男たちに、
「 こんなもの(マクワウリ)を食べているから、臭いんだよ 」
と暴行を加えられそうになります。
時代が変わっても、朝鮮蔑視は受け継がれているようでした。
ソンジャは、すんでのところで、大金持ちの貿易商であるコ・ハンスに助けられます。
2人は、洗濯場である岩場で、密会を重ねるようになります。
果たして、ロマンスは成立するのでしょうか。
Pachinko パチンコ(第3話)
ソンジャは、懐かしき故郷のお米を一口食べて涙を流す。
故郷のお米の味に、母のことや、嫁いだ日のことを思い出したのだった。
「 私たちが育てたお米は全て(日本に)奪われた 」
ソンジャを演じるユン・ヨジョンの表情と仕草は必見だ。
過去編のソンジャは、身ごもった事実をハンスに知らせるも、ハンスは身勝手な事実をソンジャに突きつけ、ロマンスに終わりを告げるであった。
神の導きかの如く現れた平壌出身の牧師イサクは、ソンジャの受難を知り、思いがけない提案をするのであった。
3話のレビューを見る
若きソンジャとコ・ハンスの恋の行方は?
土地の買収に苦戦するソロモンの取引の結果は?
歳月とともに、老いたソンジャの望郷の念が深まります。
ハンスの真実を知ったソンジャの運命が少しずつ動き出す。ソンジャに命を救われた牧師のイサクは、彼女に、ある提案をするのだった。
1989年、東京。
ある在日コリアンのハンメ(老女)の土地を買収したいソロモンは、10億円の価格を提示しても断られてしまいます。
途方に暮れた彼は、祖母(ソンジャ)に同行を求めて、再度、訪問します。
今話の見所は、ハンメと食事を囲みながらのシーン。
ハンメは、昔は貧しくて行けなかった、小学校に通い直して卒業証書をもらったことを嬉しそうに話します。
筆者の、ウェハンメ(外祖母)も同じく老年に学校へ通いました。
済州島から日本へ渡って来て、苦労の中を生き抜いた姿が重なりました。
ソンジャは、ハンメのお米を一口食べて涙を流します。
故郷のお米の味に、母のことや、嫁いだ日のことを思い出したのでした。
「 私たちが育てたお米は全て(日本に)奪われた 」
老ソンジャを演じるユン・ヨジョンの表情と仕草は必見。
在米コリアンの移民生活を描いた「 ミナリ(2021)」では、主人公の祖母役でアカデミー助演女優賞を獲得しました。
一方、過去のソンジャは、身ごもったことをハンスに知らせます。
しかし、彼は身勝手な事実を突きつけ、ロマンスに終わりを告げるのでした。
そこへ神の導きのように現れた、平壌出身の牧師イサク。
瀕死の状態を救われたイサクは、ソンジャの受難を知り、思いがけない提案をするのでした。
Pachinko パチンコ(第4話)
1931年 – 日本へ旅立つソンジャの母は、娘に故郷の白米を食べさせようと奔走する。
彼女は、嫁ぎ先の日本で女性が生きていく厳しさを語り、個人の尊厳が失われる未来を予見していた。
1980年代 – 孫のソロモンは、ビジネス取引の正念場で、祖母と同年代の女性から、自分たち朝鮮人労働者が日本人によって差別され、クビにされた過去を打ち明けられる。
銀行や企業の面々は蔑むような表情を見せ、彼女の独白を遮るも、サインは形式に過ぎないとソロモンは言い放つ。
彼女はソロモンに問いかけた。
「 あんたの祖母がここに座っているとして、この人たちの顔を見ながら、彼女の悲痛に満ちた血の一滴一滴が、サインすることを止めたら、なんと声をかける? 」と。
4話のレビューを見る
若きソンジャの大きな決断、そしてソロモンの決断。
過去にこだわることは、大事なのでしょうか。
それぞれが新しいスタートを踏み出します。
牧師イサクは、ソンジャによって命を救われる。ハンスの子を宿す恩人ソンジャとの結婚を決意したイサクは、大阪へと旅立つのであった。

1931年、釜山(プサン)。
婚礼のお祝いのために、せめて白米を手に食べさせてあげたいと奔走するソンジャのオモニ(ハングルで母という意味)。
嫁ぎ先の日本(大阪)では苦労するだろうと、女性の厳しさを滔々と語ります。
81年生まれの筆者が、思い出したのは「 82年生まれ、キム・ジヨン(2019)」。
結婚を機に仕事を辞め、育児、家事に追われ男性中心社会で個人の尊厳が失われていく未来が視えるようでした。
さて、80年代。
ソンジャの孫であるソロモンは、大手取引の正念場で、署名を待つだけである取引相手のハンメから、過去の話を打ち明けられます。
「 すべては過去の話じゃないか 」
しかし、その過去は、ソロモンの想像を絶する屈辱と悔恨の日々だったのです。
筑豊の炭鉱に動員され、あまりの過酷さに400人の朝鮮人がストライキをしたものの、20日後に、全員がクビにされたこと。
「 日本人は私たちのことをゴキブリと呼んだ 」
大手銀行や大企業の面々は、蔑むような表情で、ハンメの独白を遮ります。
サインは、形式に過ぎない、と。
ハンメはソロモンに問います。
「 あんたの祖母がここに座っているとして、この人たちの顔を見ながら、彼女の悲痛に満ちた血の一滴一滴が、サインすることを止めたら、なんと声をかける? 」
ソロモンの答えは..。
Pachinko パチンコ(第5話)
1931年、大阪の鶴橋は在日コリアンの町として知られる。
ソンジャは「 この痛みは乗り越えられない。でも耐え方が身につくはず 」と、女性の辛さを語るキョンヒから励まされる。
半世紀後の東京、同僚のナオミに女性の尊厳について問うソロモン。
ソンジャが借金取りとやり合い、質屋で金時計を売るシーンに注目。
5話のレビューを見る
大阪・鶴橋で夫イサクの兄夫婦と同居生活を始めた、若き日のソンジャ。
戦時中の劣悪な環境で、どのような生活が待っているのでしょうか。
一方、取引を不成立にしたソロモンの行く先は?
夫と共に日本に到着したソンジャは、生活を他人に頼らざるを得ず、苦しい生活を強いられる。一方ソロモンは契約不成立の後始末に追われる。

1931年、大阪。
大阪・鶴橋は在日コリアンの町と呼んでも過言ではありません。
北野武が、とある凶暴な在日コリアンの役を演じた「 血と骨(2004)」も、舞台は大阪でした。
身重のソンジャは、義姉のキョンヒから、
「 この痛みは乗り越えられない。でも耐え方が身につくはず 」
と女性として生きることの辛さを、語られます。
一方、半世紀後の東京。
ソロモンは同僚のナオミに、
「 女に生まれて運が悪かったですね。特にこの国で、一生蔑ろにされる会社にいる意味ってあるんですか 」
という言葉を投げかけます。
時を経ても変わらない、女性たちの尊厳の在り方について、考えずにはいられませんでした。
今話のハイライトは、キョンヒの夫を探しにきた借金取りに毅然と向き合い、金時計を売るため、質屋の主人に負けずにやり合う強き女性・ソンジャの姿でしょう。
1989年、釜山。
義姉キョンヒの遺灰を海に返し、父の墓を探す老ソンジャ。
社会産業局で、ソンジャが在日コリアンと知った職員に、「 あちらの方ですか、国籍は日本ですか?」と蔑むように問われます。
特別永住者です、と代わりに答える、息子モーザスのうんざりした顔。
同じ特別永住者である筆者も、息子のような表情をしていたでしょう。
Pachinko パチンコ(第6話)
1975年 – 大阪、ソロモンは初恋の相手にそそのかされ、万引きをしてしまう。
その出来事をキッカケに、父モーザスは、ソロモンをアメリカに留学させることを決意する。
新生児ノアの命名シーンに注目。
1989年 – 東京、ソロモンは祖母を批判し、祖母は実の親であるコ・ハンスを思い出す。
6話のレビューを見る
一世(ソンジャ)の自己犠牲が、三世(ソロモン)の重荷になるのか。
苦難と葛藤が交差しながらも、物語は加速する。
ソロモンの初恋の人は、変わり果てた姿に。
イサクが政治活動に励んでいる間、ソンジャは早産する。一方、ソロモンはハナに会い、かつての恋心が再燃する。

1975年、大阪。
ソロモンは初恋相手のハナに唆され、万引きをしたことを機に、父モーザスは息子のソロモンをアメリカへ留学させる決意を固めます。
一方、半世紀前のソンジャは、陣痛を迎えます。
赤ちゃんの顔を見て、私の知ってるアボジ(父)、オモニ(母)の顔だ、と感涙する姿が印象的でした。
破水から、出産までの過程を端折らずに描くことで、産むことの大変さを強調してますが、同年代の在日コリアンの生活を描いた、映画「 パッチギ!(2005年)」でも似たようなシーンがあったことを思い出しました。
育ての親となるイサクは、
「 自分の輪郭を意識しながら、持てる力を尽くして、堂々と生きて欲しい 」
と希望を語り、兄に名付け親となって欲しいと懇願します。
兄ヨセプは、
「 新たな世界を開く人。誰も信じなくても、一人で信じ続ける人 」
という願いを込めて、ノアと名付けます。
子は、その名を得て、これからどのように成長するのでしょうか。
1989年、東京。
一族の子孫である、ソロモンは、祖母であるソンジャを誹(そし)ります。
「 どうして戦前、なんでも与えてくれると話した人を拒んだのか 」と。
その人とは、 ノアの実の親でもあるコ・ハンスだった。
Pachinko パチンコ(第7話)
1923年、在日朝鮮人たちが抑圧される中、ハンスはアメリカ人一家の家庭教師として働いていた。
しかし、関東大震災で父と死別し、無実の朝鮮人が自警団によって殺害された。
窮地を脱したハンスの行方に注目。
7話のレビューを見る
1923年、9月1日、関東地方を大地震が襲いました。
若かりしハンスも、未曾有の大災害に巻き込まれます。
天災と人災が起こした禍根とは。
1923年、運命を左右する未曾有の大震災がハンスを襲う。

1923年、横浜。今話の主人公は、若きハンス。
当時、日本で抑圧され、自由を奪われていた在日朝鮮人たちの一人として、父の仕事を手伝いながら、ハンスは、裕福なアメリカ人家族の家庭教師をします。
ハンスに大きなチャンスが巡ってきたとき、父は身を呈して、息子が夢へ向かって歩いていけるように、行動をします。
しかし、9月1日、正午過ぎ。
突然、襲ってきた大きな揺れと建物の崩壊により父と子は、死別。
瞬く間に、あたりは地獄絵図に。
「 監獄から300人の朝鮮人が脱走した 」
「 朝鮮人が井戸に毒を入れた 」
「 街で暴動を起こしている 」
事実無根のデマが、朝鮮人大虐殺という人災を生み出したのです。
この関東大震災では、10万人以上の人たちが命を落とし、その中には、自警団によって殺された無実の朝鮮人たちが含まれます。
その数は、政府が隠蔽を図ったため、正確には不明ですが、多くの歴史学者が数千人規模だったと推定しています。
「 金子文子と朴烈(2017)」でも、その時の様子が映像で再現されていましたが、歴史書や研究書を読むのとは違い、画面を正視することが出来ませんでした。
虫けらのように殺されていく同胞たちを助けられずに、歯を食いしばって逃げ抜くハンス。
Pachinko パチンコ(第8話)
1938年 – 大阪、ソンジャとイサクの幸せは無惨にも終わりを告げる。
労働者たちを扇動した罪で、牧師イサクは特高警察に逮捕される。
生きるため、ソンジャはキムチ売りとなった。
植民地時代、200万人以上のコリアンが日本に移住し、そのうち60万人は日本に残り無国籍状態となった。
今でも在日コリアン1世は、日本各地でたくましく生きている。
8話のレビューを見る
戦争から復興していく日本社会。
パチンコ玉のように運命に翻弄されるソンジャと、息子と孫たち。
最終回を迎え、シーズン2にも期待が高まります。
イサクが逮捕されたことを知ったソンジャは、幼い息子を連れてイサクを探す。そして、ソロモンは一大決心をするのであった。

大阪1938年。
ノアの弟、モーザスのトルチャンチ(朝鮮半島の伝統行事で、1歳のお祝い)。
選択するものによって将来を占うトルチャビで、糸をつかんだ兄ノアは、弓が良かったなあと振り返りながら、モーザスは金を掴まないとね、と父イサクに笑いかけます。
さて、家族たちが見守る中、弟は何を掴んだのでしょうか。
幸せも束の間、牧師イサクは思想犯として特高警察に捕まります。
労働者たちの目を開き、誇りに目覚めさせた代償として。
妻のソンジャは、特高の居丈高な尋問に、毅然と答えます。
「 私の知る旦那は、ただの父親であり、夫であり牧師であり、善良な人です 」
キムチ売りとなったソンジャは、たくましく生きる決心をします。
大阪最高のキムチ、世界一美味しいキムチ、味見してってください、母親に教わった我が国のキムチです。
植民地時代、200万人以上のコリアンが日本に移住し、そのうち約80万人が日本政府により労働者として連行されました。
第二次大戦後、その大部分は祖国に戻りましたが、60万人は日本に残り無国籍状態となります。
エンディングでは、在日ハンメたちのインタビューが挿入されます。
苦難を生き抜いた無数のソンジャたちは、今でも日本各地に根をはり、たくましく生きているのです。