こんにちは、Johnです。
映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@mai)さんからの投稿レビューです。
絶対的なもので、かつ無意識化で進行する「 支配 」は本当に存在する。
そう実感させられた作品です。
しかも、その「 支配 」が構築されたのは母親と息子の間でした。
幼い頃から母親としか、まともに接してこなかった息子が、最終的に実の祖父母に対して強盗殺人を働いてしまうというあまりにも残酷で辛い話。
そこから見えてくる「 彼の母親への愛は何だったのか 」を考えたいと思います。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
MOTHER マザー

公開日
2020年7月3日
上映時間
126分
キャスト
- 大森立嗣(監督)
- 長澤まさみ
- 阿部サダヲ
- 奥平大兼
予告編
公式サイト
感想レビュー

好きだった点
演じている俳優の演技力が軒並み高い点。
この作品は、コメディ要素一切なし、大人のクズさと弱さを前面に出したものです。
だからこそ、大人の俳優は振り切って役に染まった演技をすることが求められ、子役には反抗心などの静かな怒りが求められます。
どちらにも共通するのは、オーバー過ぎない演技です。
これらを違和感なく演じられる演技力は、他の作品に比べても圧倒的でした。
嫌いだった点
母親と行きずりの男性との恋愛シーンの描かれ方です。
長澤まさみ演じる母親が見せる妙な隙のようなものは確かに魅力的なのだとは思います。
しかし、それにしても彼女とどうにかなってしまう男性はどこに惹かれたんだろう?
というくらい展開が雑でした。
「 そういう魔性の役どころ 」なのは重々承知ですが、見つめあうだけで…などは無理があるのではないかなと思いました。
彼女に惑わされるのも無理はない、仕方ないという程では無いなと感じてしまいました。
見どころ
「 母親が自分にとって全ての世界で、息子はどうなっていくのか 」という点。
奥平大兼演じる息子にとって、長澤まさみ演じる母親がこの世界の全てであり、母親が言うのであれば、それが悪だとしても言われた通りに動きます。
その無意識のうちに出来上がっている「支配」の構図が恐ろしくもあり、
でも実は現実世界でも隠れていろいろなところに存在しているかのようなリアルさも感じました。
考察・疑問点
息子は母親が絶対であり、何よりも大切にしなくてはいけない存在だと考えています。
盗めと言われれば、殺せと言われれば、彼はそれが社会的に悪いことだと分かっていても、言われた通りに行動してしまいます。
彼をそこまで突き動かすのは、母親への愛なのでしょうか。
私は違うと思いました。
本来ならば、子供というのは家庭と社会との両方に属し、それぞれに別の関係性を築くことで人間性と社会性を獲得していくものであるはずです。
しかし、今回息子には人間性を構築する場しか与えられませんでした。
赤の他人と築くはずだった「 信頼 」や「 愛情 」といった社会性を獲得する機会がありませんでした。
だからこそ、彼の口からは何の疑いもなく「 母親が好きじゃダメなんですかね 」という言葉が出てきたのだと思います。
この言葉は、息子の母親への真っ直ぐな愛を示すものでもなければ、彼の純粋さを示すものでもありません。
この言葉は、幼い頃から自分の周りには「 母親 」が常にいて、その母親が一番なのだという世界しか与えられなかった少年の寂しすぎる人間性を強調するものです。
自分の中に湧く外の世界への興味をあきらめて、親への反抗心に蓋をする…
1人の人間として必ず通るはずの成長過程で、自分の言動を委ねる我が儘さえも許されなかった少年がどこまでも堕ちていく様を描いた辛すぎる作品です。
考えさせられるという点ではかなり完成度の高い作品でもあると思いました。
まとめ
映画とは、自分が体験してこなかった日常や非日常を体験できる機会を与えてくれるものだと思っています。
その点で言えば、この作品は確実に「 体験し得なかった日常を知る 」機会を与えてくれる作品です。
母親と子供の関係性や、その密接さに目を向けさせてくれます。
もっとライトに親子関係に迫った作品として「 いろとりどりの親子 」というドキュメンタリー映画をオススメします。
様々な家族の形があって、この作品よりも温かさに満ちた作品になっています。
現在、コロナ禍で家族と過ごす時間が増えた人も多いと思います。
「 自分と家族 」という関係性に目を向けるいい機会なのかもしれません。