「 新感染 」「 ソウル・ステーション・パンデミック 」などを手掛けるヨン・サンホ監督によるSF作品。
地球を出て大規模なコロニーでの生活を余儀なくされた人類、長期化したコロニー間の内戦。
壮大な舞台装置に、人間の脳データを用いた人工知能と戦闘用のロボットたち。
そして伝説的な女傭兵。
並べるだけでワクワクする単語ばかりです。
国内での注目はイマイチですが、世界的にはヒットを記録している本作。
早速観てみました。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
JUNG_E ジョンイ
あらすじ
公開日
2023年1月20日
原題
Jung_E
上映時間
98分
キャスト
- ヨン・サンホ(監督)
- カン・スヨン
- キム・ヒョンジュ
- リュ・キョンスほか
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
タイトルの「 ジョンイ 」とは伝説的な女傭兵の名前であり、彼女の脳データを複製し最強の戦闘AIを作り上げるプロジェクト名。
しかし、ジョンイが戦場に馳せ参じた背景には、娘ソヒョンの高額な手術費を稼ぐという切実な理由がありました。
やがて戦闘AIを作るチームの中心となったソヒョンは、母は自分を憎んでいるのでないかと思いながらも、同じ戦闘を繰り返し、苦しみのなか廃棄される母を幾度となく見送り続けます。
全てを覆い隠そうとするような淡々としたソヒョンの表情からは、静かな悲痛さが感じられました。
母を戦争に縛り付けてしまった罪悪感や、玩具同然の扱いを受けながら、母の脳が無限に複製・消費されることへの葛藤を抱えながら、やがてソヒョンは大きな決断を下します。
アクションは非常に高密度。
ロボットとの戦闘は「 攻殻機動隊 」を連想させ、非常に緊張感のあるシーンでした。
派手さはありませんが、スリリングな格闘は素直にカッコイイと唸らされます。
単なるアクション映画で終わらず、母と娘の絆や愛情が、ドラマチックかつ丁寧に描かれていた点も抜群によかったです。
壮大なSF的舞台設計ながら(経済格差による人間の尊厳の格差について問題提起しつつも)大きな物語へと展開せず、母と娘のごくパーソナルな関係を描くことから軸がブレなかったのが非常に好印象でした。
ある程度は先が読める展開ではあるのですが、たとえ予定調和だとしても、何が起きようと決して消えることのなかった母の愛情の、その気高さと力強さはきっと多くの人の心を打つだろうと思います。
まとめ
本作は昨年5月に急逝された主演のカン・ソンホさんの遺作となりました。
母の想いを知った娘の慟哭。
あるいは決して消えることのない鋼鉄の母の温もりのなかで流した娘の涙。
どちらも観るものの魂を震わせる、鮮烈な演技とシーンでした。
きっとこれから先もあのシーンを忘れることはないでしょう。
隣国の片隅より、ご冥福をお祈りいたします。