監督・是枝裕和(「万引き家族」)×主演・ソン・ガンホ(「パラサイト 半地下の家族」)で送るオリジナル企画の今作。
まずカンヌ国際映画祭で男優賞に輝いた演技は圧巻。
主演のソン・ガンホは、乳幼児を違法に売りさばくブローカー。
不器用で甲斐性のない父親、心根の優しい中年男性……と多面的な人物を実に細やかに、そして自然に演じていました。
今作は1人の若い女性が日本にもある「 赤ちゃんポスト 」へ赤ん坊を捨てるシーンから物語が始まります。
是枝監督の他作品にも通ずる「 家族 」というテーマはもちろん、より根源的な、生むこと、そして生きることへの問いを投げかける130分はまさに傑作。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ベイビー・ブローカー
公開日
2022年6月24日
原題
Broker
上映時間
130分
キャスト
- 是枝裕和(監督)
- ソン・ガンホ
- カン・ドンウォン
- ペ・ドゥナ
- IU(イ・ジウン)
- イ・ジュヨン
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
「 万引き家族 」しかり、是枝監督の描く家族には1つの共通する理念があります。
それは血縁を超えた絆。
是枝映画の家族を定義するなら「 同じときを過ごし、互いに思いあい、様々な感情を共有する人たち 」とでも言えるでしょう。
そういう意味で、洗車場のシーンや遊園地で射的ゲームを楽しむシーンは印象的で、かつ彼らの関係性を象徴していました。
血のつながりはなく、それどころか彼らの間にあるのは「 赤ん坊を売る 」という不道徳な目的。
ですが、スクリーンに映る彼らは紛れもなく「 家族 」以外のなにものでもないのです。
また冒頭で記したように、単なる家族ドラマとして終わらないのが今作。
登場人物たちはみんな、「 家族 」をキーワードとした苦しみを抱えています。
借金を背負い、妻子に逃げられたサンヒョン。
かつて自分を捨てた母親の帰りを心の奥底で待ち続けるドンス。
家出をして娼婦となり、一人で子供を産んだソヨン。
養子縁組の暗黙のリミットである6歳を超えてしまったヘジン。
そんな彼らが赤ん坊を売るための旅の日々を通じて、互いを知り、許し合い、受け入れていく過程は生きる苦しみからの救済を描いていると感じられます。
どんな人生でも、生まれて生きることはどこかで誰かに関係し、意味を生んでいる。
脈絡なく言葉にしてしまえばただの綺麗事にしか聞こえないそれを、今作は観る者へ自然に伝えてくれます。
それはきっと、是枝作品だから為せる技なのでしょう。
まとめ
普段は真っ直ぐなメッセージに感動できない筆者ですが、素直に感情移入させられました。
「 家族 」という誰もが少なからず持っている(持っていた)ものだからこそ、多くの人にとって共感できる物語になっているのではないかと思います。
ぜひ劇場にて、作品の優しさ、そしてそこから生まれる感動を味わってほしいです。