映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@ジョナ)さんからの投稿レビューです。
春の七草をそらんじることは出来ますか?
せり、なずな、御形、はこべら……(何だっけ?)
ところで、今作のタイトルとなった「 ミナリ 」は、韓国語で「 芹(せり)」のこと。
本記事では、今作の魅力とタイトルが示す意味と時代背景について考えてみます。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ミナリ
公開日
2021年3月19日
原題
Minari
上映時間
116分
キャスト
- リー・アイザック・チョン(監督)
- スティーヴン・ユァン
- ハン・イェリ
- ユン・ヨジョン
- アラン・キム
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
感想レビュー
好きだった点
監督の幼少体験をもとに脚本が作られ、リアリズムたっぷりのストーリーが良かったです。
アメリカに移住し農業開拓するという物語に、石川好の「 ストロベリー・ロード 」という小説を思い出しました。(映画化もされています)
展開に起伏が少なく、家族のあり方に焦点を当てる手法には、小津安二郎の「 東京物語(1953年)」を彷彿としました。
どちらも好きな作品なので、すぐに入り込めましたよ。
嫌いだった点
本編そのものではなく、「 アカデミー賞最有力! 」という宣伝が煩(うるさ)く感じられました。
昨年度のアカデミー作品賞が「 パラサイト(2019年)」で、今作もコリアン色の濃い作品なだけに、どうしても両作を比べてしまい、ギャップの激しさに戸惑いを覚えてしまいました。
前者は刺激が強くショッキングだったのに対し、今作はハートウォーミングで穏やかな雰囲気でした。
どちらにも、良さはありますよね。
アカデミー賞云々は、あまり意識せずに鑑賞することをお勧めします。
見どころ
主演のスティーヴン・ユァン(父親役)が、ハマり役を通り越して、まるで彼のために用意されたような役だと感じました。
主人公同様、彼自身も韓国で物心ついてからアメリカに移住した韓国系アメリカ人です。
スティーヴンは、ロングランヒットの長編ドラマ「 ザ・ウォーキング・デッド(2010年〜) 」のグレン役で人気を博し、それからも「 オクジャ/okja(2017年)」「 バーニング(2018年)」などの映画で高い評価を獲得しました。
今作でノミネートされたアカデミー賞主演部門は、アジア系では初となるそうです。
結果が楽しみですね。
他の俳優陣の演技も光っていました。
監督の少年時代を投影させた子役のアラン・キム。
最近では「 藁にもすがる獣たち(2021年)」など幅広い作品で、おばあちゃん役を演じているユン・ヨジョン。
この祖母と孫という構図で繰り広げられる様々なエピソードが、時には笑いを誘い、ときにはチクリと胸を刺すような痛みを伴いながら、美しい情景と懐かしい匂いを思い出させてくれますよ。
考察レビュー
時代背景や登場人物たちのバックボーンを具体的に描かず、あくまで家族の在り様に焦点を当てた点にあります。
ここでは作品をもう少し深く味わえるように、掘り下げてみます。
作中で韓国の作物を作り始めた父親が「 毎年、韓国からアメリカに渡る移民は3万人 」としています。
テレビ画面から「 レーガン大統領 」が映るシーンがあります。
ここから、今作は80年代の物語であることが推察できます。
その時代は、韓国は20年以上続いた軍事政権下にあり、普通に暮らすことが困難でした。
代表的な事件として、光州事件がありますが、映画「 タクシー運転手 約束は海を越えて(2017年)」
「 光州5・18(2007年)」に詳しく描かれているので、紹介だけに留めておきます。
今作でも韓国から来たクリスチャンが、ひっそりと暮らしていますが、キリスト教信者たちも軍部の監視下に置かれていました。
タイトル「 ミナリ 」は何を示唆しているのか?
ミナリは韓国料理には、欠かせない香味野菜。
おばあちゃんが故郷から持ってきて、家族が分断の危機に見舞われる中、見事に実らせます。
水辺でも逞しく育つミナリは、困難な状況で何度でも立ち上がる不屈の精神の表れでしょう。
ミナリの味はジワジワと効いてきます。
ミナリは2度目が旬だとも言われます。
きっと今作も同じでしょうね。
まとめ
春の七草の続きを思い出しました。
「 せり、なずな、御形、はこべら……仏の座、すずな、すずしろ、これぞ七草 」という歌で覚えちゃいましょう。
ついでに、ミナリは「 せり 」のことだということ、映画「 ミナリ 」はジワジワと効いてくること。
2回目はもっとおいしい。