映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@ジョナ)さんからの投稿レビューです。
たまにある書店やCDショップでの「 タイトル買い 」
今作もタイトルに釣られて見ることを決めました。
後に知ったのですが、新人監督キム・ヨンフンは、日本小説のこのタイトルに惹かれて、原作を元に脚本を書いたようです。
タイトルは作品の顔と言われますが、今作の中身はどうでしょうか?
他の日本小説を、原作の韓国映画と比較しながら、今作の魅力を書いてみます。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
藁にもすがる獣たち
公開日
2021年2月19日
原題
Beasts Clawing at Straws
上映時間
109分
キャスト
- キム・ヨンフン(監督)
- チョン・ドヨン
- チョン・ウソン
- ぺ・ソンウ
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
感想レビュー
好きだった点
うら寂(さび)れていて喧騒(けんそう)の絶えない港町である平沢市が、今作の舞台としてピッタリでした。
光と影のコントラストを活かしたキム・テソン(撮影監督)の腕が奮っていて、映画ならではの臨場感を愉(たの)しめました。
ジュンマンが、アルバイトで生計を立てているサウナの店名が「 ユートピア 」というのも、皮肉がきいていますね。
原作者の曽根圭介も、サウナの従業員だったそうです。
シリアルキラーのヨンヒを演じるチョン・ドヨンや、女性に騙され借金地獄に落ちているテヨン役のチョン・ウソン、その他、豪華俳優たちの演技はさすがの一言でした。
韓国俳優たちの演技力には、目を瞠(みは)るものがありますね。
嫌いだった点
あえて最後まで見せない撮り方が好みではありませんでした。
シリアルキラーが登場人物A(女)を台に縛りつけて、チェーンソーまで稼働させて以下省略とか、大型トラックが登場人物B(男)に衝突して以下音声のみとか。
「 悪魔のいけにえ(1974年)」や「 ソウ(2004年)」のように、トコトン突っ走る新人監督の冒険を見てみたかったです。
園子温監督みたいに、生首ゴロゴロ血飛沫プシューはやり過ぎですが(笑)
今作はよく言えば優等生的、悪く言えば、事なかれ主義という感じでしょうか。
よくできた素晴らしい作品だけど、個人的にはあまり好きではないというところです。
見どころ
ある日、10億ウォン(=約1億円)の入ったバッグをロッカーの中で見つけたらどうするか?
というシュミレーションを、追体験できる点が見どころです。
地獄から抜け出すために藁にもすがりたい、ヨンヒ、テヨン、ジュンマンの欲望が、二転三転としながらぶつかり合います。
もしも自分が大金入りのバッグを手にしたら?
お気に入りのキャストに感情移入しながら、夢想するのも楽しいですね(すみやかに交番に届けましょう)
考察レビュー
「 オールドボーイ(2003年)」は日本漫画原作の傑作でしたが、日本小説が原作の映画はどうでしょうか?
幾つか作品を挙げて考察してみます。
まずは、貴志祐介原作の「 黒い家 」
日本映画版(1999年)は原作の良さが生かされず酷いものでしたが、リメイクの韓国版(2007年)は、素晴らしい仕上がりでした。
次は、伊坂幸太郎原作の「 ゴールデンスランバー 」
日本版は2010年、堺雅人主演。
韓国版は、2018年、カン・ドンウォン主演。
これは、映画としての完成度の高さはさておき、原作寄りの日本版に軍配が上がっています。
最後に、村上春樹原作の「 バーニング(2018年)」
これは、今作と重なる点もあるのですが、クオリティーは高いけど原作とはほど遠く、個人的には好みではありませんでした。
日本小説を韓国映画に置き換えるのは、是か非か?
今作は、アリ。
原作者が韓国映画に憧れていて、監督も原作に惹かれたという両想いが成立しているからです。
まさに理想形ですね。
言い換えれば、そうでない場合、原作からの映画化は反対です。
前述の「 黒い家 」の場合、貴志祐介はリメイク版を絶賛し、自作に惚れ直したそうなのでアリ。
ゴールデンスランバー。
伊坂幸太郎は「 楽しませていただきました 」と韓国版にコメントを寄せていますが、社交辞令っぽい感じがするので、サンカク(笑)
バーニング。
村上春樹作品へのリスペクトは強烈に感じられましたが、片思いの感があるのでナシ。
監督が原作に魅力を感じて撮り、原作者もその映画を見て賛嘆する。
これくらいの関係性があれば文句なしの「 是 」ですね。
まとめ
「 パラサイト 」のアカデミー賞受賞、ドラマ「 愛の不時着 」の大ヒットもあり、いま韓国作品に多くの関心の目が向けられています。
今作も新人監督の長編デビュー作というのですから、驚きを通り越して呆れてしまいます。
これからも韓国映画界においては、決して驕らずマイペースに、良作を世界に送り出して欲しいと願います。