「 犬神家の一族(2006)」解説・考察レビュー【 金田一耕助シリーズ 】
犬神家の一族(2006)
1976年の監督と主演は同じですが、他キャストは一新されています。
中でも等々力を演じた加藤武は、本作で市川崑監督の金田一シリーズの皆勤を達成しました。
リメイクではありますが、旧作と演出やカメラワークは殆ど同じです。
1976年版を鑑賞済みの人にとって、本作の見どころとなるのは、役者陣の演技が比較できること。
それ以外にも細かいエピソードの追加はありますが、現代版のアレンジや再解釈された「 犬神家の一族 」を期待している方は、吉岡秀隆が金田一を演じた2023年のNHK版をお薦めします。
本作は「 犬神家の一族 」の実写化作品を未鑑賞の方や金田一シリーズのファンの方なら、より楽しめる作りとなっています。
旧作との変更点としましては、犬神佐清と野々宮珠世のロマンスを強調するにあたって、ラストで金田一が去るシーンの演出が変わっています。
金田一と古舘が遺言発表後に話し合う場面は旧作では運転中のシーンでしたが、本作では原作通りの那須ホテルで行われていました。
これ以外にも様々な細かい修正がされています。石坂浩二は約30年ぶりに金田一耕助を演じるにあたり、自分の年齢まで生きてきたキャラクターの人生を加味した演技がしたいと、本作のパンフレットのインタビューで語っていました。
金田一は年齢不詳という設定ですが、石坂浩二の掲げる金田一像の変化によって、今回の金田一は旧作よりも人間味のある気がします。
トリビア
本作の豪華なキャスティングは、製作陣の拘りが滲み出たものである。
プロデューサーの一瀬隆重は、本作を製作する条件として、野々宮珠世役を松嶋菜々子にするよう市川崑監督に持ち掛けた。
市川崑監督は、金田一役について、石坂浩二以外の役者は起用しないと強く主張した。
本作のセリフや演出は、旧作とほぼ同じだが、異なる点が随所に見られる。
旧作の物語の中盤で白いゴムマスクを被った佐清とされる男は、珠世から時計の修理を頼まれた際、無口でその場を離れた。
本作では、「 今は気が向かないからその内に 」と返事をしてから去っている。