「 ゴールド・ボーイ 」考察レビュー、先読み不可能な青春残酷物語

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文・ライター:ぼのぼの

予告編を見てもほとんど惹かれる部分がなく、見る予定はなかったのだが、一部の人が強力に推しているので見ることに。

見終わって大いに納得。

この手のクライムサスペンスとしては近年希に見る面白さだ。

なるほど、これは強力に推したくなるのも無理はない。

しかしこの映画には大きな問題がある。

何がどう面白いかを説明するのが、極めて困難なのだ。

配給会社の宣伝部は、この面白さを広く伝えられないことに悶々としているのではなかろうか。

目次

ゴールド・ボーイ

©︎ゴールド・ボーイ

あらすじ

物語の舞台は沖縄。地域最大の実業家である東家に婿養子として入った昇(岡田将生)は、財産を自分のものにするため義理の両親を崖から突き落として殺害し、事故に見せかける。その光景をたまたま動画に収めてしまった3人の少年少女がいた。彼らはそれぞれに家庭の問題を抱えていたが、その内の1人朝陽(羽村仁成)は「金さえあれば、僕たちの問題は解決するはずだ」と言い、動画を使って昇から大金を脅し取る計画を提案。昇と朝陽たちの駆け引きは、やがて思いもかけぬ方向へと転がり出す。

公開日

2024年3月8日

上映時間

129分

予告編

キャスト

  • 金子修介(監督)
  • 港岳彦(脚本)
  • 岡田将生
  • 羽村仁成
  • 星乃あんな
  • 黒木華

公式サイト

ゴールド・ボーイ

先読み不可能な展開と青春映画としての魅力

©︎ゴールド・ボーイ

本作の魅力は主に2つだ。

  • 先読み不可能な幾重にも引っ繰り返るストーリー
  • 青春残酷物語

そして具体的に面白さを伝えようとするとき、特に難物なのが①だ。

当然のことながら「 幾重にも引っ繰り返る 」部分をくわしくネタバレはできないし、仮にネタバレ全開でストーリーを説明したところで、この面白さはまず伝わらない。

その理由は主に2つ。

「 実際の映画表現で見ないと、そのサスペンスが伝わらない 」こと、「②(青春残酷物語)が密接にからむことでキャラクターの人間的魅力が引き立ち、ドンデン返しだらけのストーリーが内実のあるドラマになっている 」から。

つまり実際に映画を見ないことには、その魅力が伝わらない部分が多すぎるのだ。

さらに厄介なことに、観客をパッと引きつけるような映像的な華やかさがない。

本作の予告編に惹かれなかった理由の1つは、映像が妙にくすんだ、彩度の低い地味なルックだったためだ。

本編を見ても「 これは劇場の上映がおかしいのでは?」と疑ってしまうほど地味だ。

しかし最後まで見ると、確かにこの彩度の低い映像で良かったのだと分かる。

沖縄が舞台なのに、原色の輝きとは無縁な鬱屈したような映像だからこそ、この青春残酷物語が映える。

そんなわけで具体的なことがほとんど書けないし、書いても仕方ないのだが、ドンデン返しに満ちたクライムサスペンスとして観客をグイグイ引っ張っていく面白さは無類のものだ。

しかもそこに切ない青春ものの要素が入り交じり、息を呑むようなクライマックスへと突き進んでいく。

宣伝では面白さが伝わらないし、一体どんな映画なのかさえ分かりにくいほどだが、同時にどんな映画か分からない方が一層楽しめる映画でもある。

騙されたと思って、ぜひ見てほしい作品だ。

「 美少女映画作家 」金子修介健在なり

役者では、夏月役の星乃あんなという女の子が圧倒的に素晴らしい。

彼女なくして、本作はここまでの傑作とはなりえなかったと言えるほどだ。

可憐さと薄幸さと退廃とほのかな色っぽさが入り交じった魅力は、昨年の映画「 市子 」の杉咲花に通じるものがある。

おそらくこの2〜3年で売れっ子となり、「 ポスト杉咲花 」的なポジションを確立することだろう。

映画全体としても金子修介が久々に底力を発揮した作品だが、「 美少女を魅力的に描く 」という昔からの特色もいまだ健在なようで何よりだ。

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