近年、多忙過ぎる福田雄一。
しかも、コメディーとしての「爆笑」を求める期待が強大過ぎる。
一般大衆とスポンサーの「期待値」を元に大半の映画製作予算が決まる時代。
僕は時々、鑑賞途中に興冷め感覚に襲われる。
バラエティー番組で用意されたオーディエンスがADの合図による、乾燥した仕込み笑いが起こった瞬間。
業界の「 期待値 」とは、仕込み笑いと類似している。
聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団

あらすじ
広い宇宙の数あるひとつ、燦然と輝く命の星、地球。世紀末を無事乗り越えた神の子イエスと仏の悟りを開いたブッダは、
日本の四季折々を感じながら下界で密やかにバカンスを楽しんでいた。東京・立川にある風呂なし6畳一間のアパートをシェアし、ふたり暮らし。アイスを分け合ったり、近所の商店街で福引きを楽しんだり、お笑いコンビ「パンチとロン毛」を結成したり。ゆるーい日常を過ごす2人の元にある日、天界からの使者が現れ、禁断のオファーが伝えられる。やがてそれは、神も仏も天使も悪魔も入り乱れる、まさかの地球滅亡の危機へと繋がっていく!?(公式サイトより引用)
公開日
2024年12月20日
上映時間
93分
予告編
キャスト
- 福田雄一(監督)
- 松山ケンイチ
- 染谷将太
- 賀来賢人
- 岩田剛典
- 白石麻衣
- 勝地涼
- 仲野太賀
- 神木隆之介
- 山本美月
- 桜井日奈子
- 川口春奈
- 中田青渚
- 吉柳咲良
- 田中美久
- 森日菜美
- 安斉星来
- 山田孝之
- ムロツヨシ
- 佐藤二朗
- 窪田正孝
- 藤原竜也
- 中尾隆聖
- 緒方恵美(声の出演)
- 置鮎龍太郎(声の出演)
公式サイト
聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽(BGM)
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー

本作の絶妙手たる「 妙 」とは山田孝之プロデューサーの存在が絶大と言える。
僕は、そもそもとして中村光の原作のファンでもある。
松山ケンイチのイエス。
染谷将太のブッダ。
東西トップの信者数を誇る宗教のアイドル(象徴)であり、人間として生まれ、神の眷属となった人類の導き手たる2人が、世紀末も越えた地球の日本で、一緒に一般人としての穏やかな日常生活を満喫する物語。
超重要なのは福田雄一監督と山田孝之プロデューサーの求める嗜好性。
山田孝之が主演を努め、ある意味で佐藤二朗やムロツヨシを一躍認知度アップさせた「 勇者ヨシヒコ・シリーズ 」
スベっても、スベっても、スベっても、繰り返すネタ展開。
この連続に、われ関せずを装いつつも、いつしか癖になりツボ化する。
駄目っぽい展開だと、前向き生真面目に大声で挑む。または、大声で諭す展開で畳みかける。
結論として、解った風で、解ってないことが快感になっていく。
他にも、勇者ヨシヒコ後のドラマでムロツヨシ、シソンヌ、本多力が出演した「 新解釈・日本史 」も同様の緩さだった。
しかし、数年後に大作扱いで公開された「 新解釈・三國志 」は同じ方向性ながらも、相当肩に力の入った力作で「 緩さ 」がユルく発生しているのではなく、無理矢理構築されていた次第。
同じく「 劇場版・今日から俺は!!」も同様の力みを感じたのは言うまでもない。
しかしながら、本作の酷評層は、劇場作品的なパワーの予定調和を求め過ぎたのではないだろうか。
要するに福田雄一への期待過多なのだ。
近年のハリウッド作品でも配給側の期待値から外れた場合、シリーズ系でも露骨な介入が入り、方向転換やシリーズ打ち切りが散見される。
本作の鑑賞。
いやいや福田雄一作品鑑賞の神髄は、イエスとブッダの立ち位置のようなもの。
予定調和追求型のイエスの期待はハズレまくる。
自然調和で彼我の涅槃に佇むブッタは敬われる。
承認欲求絶大なマーラーはアピール職人に。
絶大なパワーを持っていながら、孤高でいられる堕天使ルシファーは最期を締める。
このスタンスこそ「 達観 」で、福田雄一を理解するための必須事項。
何故に神々も悪魔も緩いのか?
それは、人類の求める信仰は神々にも悪魔にも向いてなく、個の求める欲望の先に在るモノに対してだけになっている現代だからだ。
信仰の1つが「 笑い 」だとすれば、個人的承認欲求予定調和で事の可否判断を行う者は、世界森羅万象を純粋に楽しみ喜ぶ精神を喪失してしまってるのだろう。
人は誰でも、自分が主人公たる人生を省みる走馬灯ならば、ヒーローであり得たと思いたいじゃないか。
輝かしい思い出と共に旅立ちたいじゃないか。
しかも、イエスとブッダが協力してくれる幸福。
だから「 幸福な結末 」を人類に。
まとめ
偉そうに否定派の否定をしましたけれども。
単純な事を言います。
福田雄一監督の妙は「 ウケる 」ではなく「 ジワる 」
「 ジワる 」は「 ウケる 」よりも、心のツボに届く速度に個人差がある。
批判ばかりしていると、藤原竜也が黒いカバーのノートにアナタの名前を記載しちゃいますよ。

文・ライター:LEDMAXI