オフビートな映画は、突拍子もない物語と緩めの展開がミソである。
本作も例外ではない。平坦な調子であるにもかかわらず、最後に残るのは不思議な満足感と懐かしさだ。
所々顔を覗かせるアニメ的な演出や台詞たちも、作者の自慰行為であるはずなのに、見ている側もなぜだか少々気持ちがよい。
とにかく本作を見ることは、決して時間を無駄にする行為ではないはず。
なぜなら、自分自身の甘酸っぱい青春や思春期を存分に思い出し、恥ずかしさと懐かしさに浸れるからである。
このレビューで興味を持った方は、ぜひ本作を視聴してほしい。
正しいアイコラの作り方
あらすじ
河原に遺棄されたエロ本を拾うために深夜徘徊していた富岳三郎は、路地裏で幼馴染のローカルアイドル谷川あさひを見かける。こんな夜更けに何をしているのだろうか?何の気なしに三郎は彼女の姿を写真に撮って家に帰るが、翌朝のニュースであさひを見かけた場所で死体が発見されたことを知って驚く。学校にも刑事が現れ参考人として聴取を受けるが、三郎は昨晩あさひを見かけたことは伏したまま帰宅する。すぐに通報した方がいいのか、彼は悩むがそれを見透かしたかのようにあさひが数年振りに彼の家を訪れる。彼女の口から出たのは「黙っててくれるならエッチしてあげる」そんな口止めの言葉だった。
(公式サイトより引用)
公開日
2024年2月10日
上映時間
126分
予告編
キャスト
- 神谷正智(監督・脚本)
- 神谷正倫(脚本)
- 坪根悠仁
- 花音
- 高石あかり
- 菅生直也
- 古林南
- 大石菊華
- 新良貴優士
- 高橋和心
- 井上慶人
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- 総合評価
おふざけにもほどがあるのに憎めない
小説投稿サイト「 小説家になろう 」から誕生した本作は、シリアスなミステリー要素を微量に組み込み、くすぐったい恋模様を突飛に描いたオフビート映画である。
青春映画だからといって、ここまで男子高校生の性欲を剥き出しにした映画も、そうはないだろう。
序盤から飛び交う男子校での会話は「 おふざけにもほどがある! 」と言いたいところだが、これがあながち嘘でもないのが悔しいところだ。
なにせ高校生の頃の私は然り、周りの男子もこんな感じだった(私は男子校ではなかったから、男子だけの環境だったらなおのことだろう)。
もちろん常に棒の皮を剥き剥きした話をしているわけではないのだが、ある一瞬を切り取ったら男子高校生の話なんて大抵がエロい話だろう。
ただ、会話も物語も性欲をブンブンと振り回しておきながら、何気にストーリーがしっかりしているところが憎めないうえに、おもしろい。
オフビートならではの“ 緩さ ”と逸脱が笑える
「 そもそもオフビートって何なの? 」という方も少なくはないだろうから、念の為説明しておこう。
映画でいうところのオフビートとは、端的に言うと“ 緩くて独特 ”な映画だ。
一般的な起承転結の浮き沈みがある物語とは異なり、作中でなんら調子が変わらないものの、
ぶっ飛んだ設定やユニークな視点で独自の世界観を演出するのがオフビート映画である。
本作がクスッと笑える理由にも、やはりオフビートならではの作り方が起因しているだろう。
設定自体は「 青春×ミステリー 」なのだが、緊迫した謎解きシーンがあるわけでもキュンキュンする萌えポイントがあるわけでもない。
淡々と打ち続けられるリズムの中に、随所でインパクトのあるビジュアルや言葉が平然と通り過ぎてゆくから笑える。
秀逸なのは、序盤の事件を解明してくれながらも、主人公を取り巻く周囲の関係に、伏線を忍ばせながら進展があることだ。
緩いのに心をくすぐる仕掛けが盛りだくさんの本作は、食べ出したら止まらないスナック菓子のようである。
青春の思い出に浸れるタイムマシン
最後に一つだけ言いたかったことがある。
それは、筆者の高校時代に「 エロ 」を象徴とする同級生がおり、そいつと主人公の友人である月山(菅生直也)がそっくりであったことだ。
「 こだま 」というその同級生は、同じ年代でありながら“ こだま先輩 ”と敬称されるほど、あまりにも強い性欲を剥き出しにし、男子から一目を置かれる男だった。
月山に似ているのは見た目もなのだが、馬鹿げた「 エロさ加減 」も一緒なのである。
と、筆者の個人的な話をしてしまったが、おそらくこの映画はそういうことなのだろう。
気になる子のコラ画像を作ったり、意中の相手から言われた嬉しい一言に酔いしれたりと、思春期を思い出させる要素が各々で必ず見つかるはずなのだ。
その淡くも甘酸っぱいばかりか、馬鹿らしくも愛おしい青春の思い出に浸れるタイムマシンこそが「 正しいアイコラの作り方 」という映画なのだと思う。
上映予定
2024年12月20日に、フォーラム仙台で上映予定。この機会にぜひご覧ください!
文・ライター:みくと