歴史に残る事件やテロは、私たちの想像をはるかに上回るほど壮絶で、人間の残酷さや複雑さを思い知らされます。
今回は、海外で実際に起きた事件やテロに基づいた実話映画の名作を5つ紹介します。
紹介する作品は全て、現実の出来事に基づいており、驚きと感動を感じ取ることができると思います。
映画を通して、衝撃的な事件の舞台裏を垣間見てみましょう。
デトロイト(Detroit)
1967年に発生したデトロイト暴動と、その最中に発生した「 アルジェ・モーテル事件 」に基づいたサスペンス映画です。
60年代後半のデトロイトでは、黒人差別が法律により撤廃されつつも、日常的な人種差別は依然として存在していました。
この作品では、当時の白人警察の不正義と、抑圧される黒人たちを鮮明に描き、不条理で残酷な差別や暴力の模様を生々しく浮かび上がらせています。
現代にも通じる不平等社会の問題や真の正義について深く考えさせられる作品です。
監督は、オスカー受賞作「 ハート・ロッカー 」などでおなじみのキャサリン・ビグロー。
ジョン・ボイエガやウィル・ポーターをはじめとする、俳優たちの鬼気迫る演技にも注目です。
ホテル・ムンバイ(Hotel Mumbai)
2008年に発生したムンバイ同時多発テロが題材となっているスリラー映画。
宿泊客とスタッフ(総勢500人以上)が滞在していた五ツ星ホテルが舞台。
観客は、臨場感のある演出と俳優たちの迫真の演技によって、無実の人々が次々に犠牲になっていく残虐な無差別テロの恐怖を体感することでしょう。
極限状態の中での脱出劇は、手に汗握る展開に目が離せません。
この作品は事件の忠実な再現だけではなく、宿泊客を命がけで守ろうとするホテルスタッフの勇敢な行動と心理の模様を丁寧に描き、
困難な状況でも助け合う、人々の絆や相手を思いやる気持ちの大切さを感じ取ることができます。
主演は「 スラムドッグ$ミリオネア 」や「 LION / ライオン〜 25年目のただいま〜 」で活躍したデーヴ・パテール。
この作品でも見事な演技で観客を魅了しました。
ウトヤ島、7月22日(Utoya 22. juli)
2011年7月22日に発生した、ノルウェー連続テロ事件の模様をリアルに再現したパニック映画です。
監督のエリック・ホッペは、この事件の生存者の証言を基に、極限状態となった当時のウトヤ島の模様を忠実に再現しました。
ワンカット撮影にこだわり、余計な演出を省いた映像からは、手に汗握る臨場感と事件の凄まじさを体感できます。
77人もの犠牲者を出した史上最悪の単独犯テロを描いた本作を観れば、日常が突如として奪われていく恐怖と、不条理に殺害されてしまった人々やその遺族、
トラウマを背負った生存者の心情を考えずにはいられなくなるでしょう。
体力的にも精神的にも消耗が激しい作品ですが、事件を風化させないためにも一度は鑑賞しておきたい1本です。
エレファント(Elephant)
1999年アメリカのコロラド州で発生した、コロンバイン高校銃乱射事件を基にしたクライムスリラー映画です。
平凡な高校生たちの日常を一瞬で奪い去った事件の様子を、長回しや追跡カメラなどを駆使して撮影された映像は、終始臨場感に溢れています。
出演俳優もあえて素人役者をキャスティングし、よりリアリティを追求した作品です。
事件の悲惨さだけではなく、内向的ないじめられっ子である主人公の心理を描き、なぜ暴力へと手を染めてしまったのかを観客に問いかけています。
いじめやスクールカーストが横行する学校生活が引き起こす若者たちの不安や恐怖、苛立ちを感じ取ることができるでしょう。
第56回カンヌ国際映画祭で、パルムドールと監督賞をダブル受賞した、ガス・ヴァン・サント監督屈指の名作。
81分という短い上映時間の中で、濃密な物語を描いています。
ワールド・トレード・センター(World Trade Center)
2001年に発生したアメリカ同時多発テロで襲撃されたワールド・トレード・センターを舞台にしたノンフィクションヒューマンドラマ映画です。
事件当日に取り残されたベテラン警察官2人を中心に、建物内に取り残された人命の脱出劇や建物の崩壊の模様を、迫力のある映像で表現しています。
リアリティのある描写に、当時の出来事が記憶に蘇った観客も多かったとのこと。
崩れゆくワールド・トレード・センター内で、急激に事態が悪化していく中、人々の生きようとする決心や命を助けようとする気持ちに心を打たれる作品です。
ニコラス・ケイジやマイケル・ペーニャの演技は、この作品を盛り上げる名演です。
最後に
今回は、海外で実際に起きたテロや事件を基にした洋画を5つ紹介しました。
どの作品も非常に現実味に溢れており、エンターテイメントの枠を超えるほどの衝撃や悲劇に、思わず胸が苦しくなるかもしれません。
しかし、映画を通して事件を振り返ることで、犠牲者を哀悼の意が芽生え、生きられなかった人の分まで強く生きようという前向きな気持ちが芽生えることもあります。
世界で起きた惨劇を風化させないためにも、一度鑑賞してみてはいかがでしょうか。