映画ライフ楽しんでますか? 今回は、ペンネーム@ジョナさんからの投稿レビューです。
劇団おぼんろによる、不思議な海の冒険譚。
あっという間に、物語に飲み込まれてしまいました。
まるで、空飛ぶクジラの大きな口の中に飲み込まれた、少年少女たちのように。
この記事では、私自身が過去に見てきた演劇を思い返しながら、今作で感じたことについて記してみます。
画像の引用元:公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

公開日
2021年11月12日
上映時間
152分
キャスト
- 末原拓馬(脚本・演出)
- さひがしジュンペイ
- 塩崎こうせい
- 末原拓馬
- 高橋倫平
- わかばやしめぐみ
予告編
公式サイト
作品評価
[rate title=”5つ星”]
[value 3]映像[/value]
[value 4]脚本[/value]
[value 5]キャスト[/value]
[value 3]音楽(BGM)[/value]
[value 2]リピート度[/value]
[value 1]グロ度[/value]
[value 4 end]総合評価[/value]
[/rate]
感想レビュー

まず驚いたのが、作品の顔ともいわれるタイトルについて。
「 瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった 」
長い。
すでに、文です。
しかも、一読では意味不明の。
まるで5W1Hゲーム。
5W1Hゲームとは「 いつ 」「 どこで 」「 誰が 」「 何を 」「 なぜ 」「 どうしたか 」という問いに当てはまる語を、
数名が書き、シャッフルした後に、並べて、おかしな文を楽しむというもの。
ディックの小説「 アンドロイドは電気羊の夢を見るか 」を連想しました(映画「 ブレードランナー 」の原題ですね)
しかし、劇を見ているうちに、この長い題は、荒唐無稽な文ではなく、必要な長さで、意味もあると気付きます。
鑑賞後はきっと、そらで読むことができるでしょう。
次に驚いたのは、冒頭で、今作が夢オチで終わることを告知すること。
「 この作品は、なんだ夢だったのか、いい夢だったなというセリフで終わります」と。
夢オチは、SF作家の星新一以降は、ほとんどタブー扱いされていますが、あえてそれを宣言しています。
陳腐なのか、無謀なのか。
それとも、よっぽど大事な仕掛けがあるのでしょうか?(もちろん後者でしたよ)
演劇は、本番の1回1回を、その場で、生身の役者が演じるという点で、熱量や緊張感の伝わり方が毎回、異なります。
だからこそ、見たときの感触が忘れられないのでしょうね。
役者と観覧者が一体となる舞台が多く(「 美藝公(2007年)」という筒井康隆原作の演劇もそうでした)、今作も、クライマックスで観客が物語の一部となる演出がありました。
見る人が傍観者でなく、物語の一部に取り込まれることで、没入感が深まりますね。
役者たちの熱演ぶりに、演劇「 ろくでなし啄木 (2011年)」で主演・藤原竜也の汗を飛び散らしながらの演技を思い出しました。
何よりも、伝えたい、という想いがストレートに心に響きました。
演劇界では当然のことかも知れませんが、1人ひとりが2時間以上の舞台で、長回しのセリフを噛むこともなく、マイクも使わずに大声量で繰り広げるだけで、圧倒されてしまいますね。
(伊坂幸太郎原作の朗読劇「 マリアビートル (2015年)」では、役者たちがノンストップで3時間半セリフを話し続けていました、さすがに台本を手にしながらでしたが)
今作を通じて、一番、強く感じたのは、生きているものは最後まで生きなければならないということ。
たとえ、どんなに辛くても。
今作を見ることになる前日に、一緒に音楽をしていた仲間が、永遠の旅に出ました。
気持ちの整理がつかないままに、無心で鑑賞すると、語り部たちが、「 スタンド・バイ・ミー 」のような冒険を通して、
暗闇の海原を照らす群青の星空の下で、大事なことを教えてくれたのでした。
本当に会いたい人とは、いつか、夢の中でまた会えると。
まとめ
演劇を映像で見ることは初めてでした。
くり返し役者たちの表情や動き、演出の魅力を余すことなく感じられるというのは、とても贅沢なことです。
それでも、やっぱり実際に、劇場で、役者たちや観客たちの生み出す熱や匂いや空気を感じながら見てみたいです。
そして、翌朝は、朝日に包まれながら、つぶやきたいですね。
「 いい夢だったな 」