
小説家・カツセマサヒコのデビュー作の実写映像化。
作品の舞台となるのは明大前や高円寺。
これらの街に青春の思い出が詰まっている人も多いのではないでしょうか。
20代前半、まさに人生のマジックアワー。
現代という時代感を的確に捉え、この世代の若者たちが抱える恋や友情、仕事などさまざまな葛藤や感情を切実さとともに丁寧に描いています。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
明け方の若者たち


公開日
2021年12月31日
上映時間
116分
キャスト
- 松本花奈(監督)
- 北村匠海
- 黒島結菜
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー


明大前の沖縄料理屋での出会いに、夜中のクジラ公園で語り合うラッドのアルバム三枚目か四枚目か論争。
高円寺の純情商店街。
下北のビレバンで待ち合わせてスズナリで舞台を観て、アラームに流れるのはエイリアンズ。
入ってみた会社は想像と全然違って、フジロックの代わりにあてのない旅をする。
こうして並べてみるだけでも抜群のエモさ。
僕らが過ごした青春、あるいは僕らが過ごしたかった青春が、たしかな温度と手触りで感じられます。
「 僕 」たちと同年代であれば、思い出に突き刺さるシーンの連続にグっときた人も多いはず。
登場する固有名詞が観る側の共感を喚起する強力なフックになる点や、
学生から社会人という変化で起きる様々なギャップを描く点は、「 花束みたいな恋をした 」と似ています。
しかし、肝心の恋愛模様はあまりに痛切です。
「 いつか、この時間に終わりが来る 」というあらすじの言葉通り、始まる前から終わりの決まっている「 僕 」と「 彼女 」の関係。
原作未読であれば予想外の展開に驚き、原作ファンであれば幸せなマジックアワーの儚さを、より一層感じることができると思います。
そう、「 花束 」と決定的に違うのは、その恋は必ず終わると決まっている点。
この恋はまさにマジックアワー。
束の間の薄明のように、あっという間に過ぎ去ってしまう黄金色の甘いひとときでしかないのです。
好きになってはいけなくて、決して報われなくて。
それでも人は恋に落ちて。
法律も倫理も恥も、全部を捨てて誰かを愛したくなってしまう。
そんな愚かな不合理さもまた、ただの他人事、スクリーンの出来事とは思えないものでした。
まとめ


「 僕 」と「 彼女 」に名前がないことも、物語られる彼らの恋が三人称ではなく一人称、つまり「私たち」の物語であることを象徴しているのでしょう。
ラストシーン、明け方のクジラ公園で「 僕 」が一体何を思ったのか、ただの観賞者ではなく、ある種の当事者として、見届けてみてほしいと思います。