文・ライター:@リリヲ
「 チェリまほ 」「 ペンディングトレイン 」「 こっち向いてよ向井くん 」など今まさにブレイク直前俳優・赤楚護二の主演最新作。
良くも悪くも日本を象徴する、誰も死なない爽やかゾンビ映画なのでバッドエンドが苦手な方にオススメ。
ゾン100 ゾンビになるまでにしたい100のこと
あらすじ
日々続く上司からの圧力、残業。精神を削られながら働く会社員は、ある日、突如として始まったゾンビの増殖を機に、生きる希望を取り戻すことになり…。
公開日
2023年8月3日
上映時間
129分
予告編
キャスト
- 石田雄介(監督)
- 赤楚衛二
- 白石麻衣
- 柳俊太郎
- 市川由衣
- 川崎麻世
- 早見あかり
- 高橋洋
- 筧美和子
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
ネトフリで世界60ヵ国デイリーTOP10入りなんて記録を叩き出していたので期待していたが、残念ながら日本映画の既存枠から抜けきれなかったようだ。
「 アイアムアヒーロー 」「 新感染 」以降、アジア圏のゾンビ映画の秀逸さが注目される中での公開で、ゾンビ描写は「 アイアム~ 」のゾンビ像を引き継いでおり、主人公の吹っ飛ばされ方ひとつでゾンビの腕力が分かるように描かれるなど良くできていた。
しかし、もはやゾンビ映画に“泣ける”や“感動”、そして驚き、ワクワクを求めるようになってしまった私には、誰も死なず、アニメちっくな台詞で〆られる爽やかラストは、物語としての甘さを感じざるを得なかった。
そして、これが過労死大国日本です!と逆に自信を持って世界に言えるほど、ブラック会社描写だけが超リアル(笑)これ、アニメもやっていて子どもも観るんだよね?
ゾンビのように働く社畜とか、ユートピアを目指したら、ブラック会社に辿り着いたとか大人の嫌な社会を見せすぎではないだろうか?
ディストピアになってまで“本当にしたいこと”と“社畜”を天秤にかけ悩んだアキラが最後にとった行動は「(クソ)上司の為に命懸けで戦う 」というまさに“社畜の鏡”だし、ブラックジョーク過ぎて震えた。
ゾンビ化したサメ相手にサメスーツを着て戦うシーンは、特撮JAPANらしくて、クローズキター!と心の中で叫んだ(赤楚は仮面ライダー俳優)
人は天災やパンデミック、病気など「 自分の命が危険に晒される 」というショッキングな経験をしないと中々変われない。
人生に絶望していたアキラが人生の終わりが明確になることで建前や立場を捨て、やりたいことに猛進しようと生きる気力を取り戻していく過程はとても共感できた。
人は普段、本当にやりたいことを何かしらの理由をつけて諦め、先延ばしにして日常をすり減らしているからだ。命の終わりが見えた時「 他人にどう思われても構わない、自分が本当にしたいこと、やり残したことはギリギリまでやれるだけやってやる 」という気持ちになる。
終わりがあるからこそ、人は輝く。
最後の輝きを放つ姿は美しく、それが“生き様”と言うものなのかもしれない。
現実にパンデミックを経験した今、私たちは本当にやりたいこと、生きる意味と本気で向き合う時が来たのではないだろうか。
変わってしまった世界で、どう生きたいか?
アキラたちの爽やかな奮闘は私たちにそれを問いかけている気がした。