文・ライター:リリヲ
70年代の恋愛リアリティ・ショーで、女優志望のシェリルがデート相手に選んだのは有罪判決を受けた連続殺人鬼!?
そんなまさかありえない!
恐怖の実話をアナ・ケンドリック初監督&主演で映画化したサスペンス・スリラー。
アイズ・オン・ユー

あらすじ
1970年代のロサンゼルス。テレビ番組「ザ・デートゲーム」の出演者に選ばれた駆け出しの女優と連続殺人鬼。2人の運命が交差する様子が、実話を基に描かれる。
(公式サイトより引用)
原題
Woman of the Hour
公開日
2024年10月18日
上映時間
95分
キャスト
- アナ・ケンドリック(監督・主演)
- ダニエル・ゾヴァット
- ニコレット・ロビンソン
- オータム・ベスト
- ピート・ホームズ
- ケリー・ジェイクル
- キャサリン・ギャラガー
- トニー・ヘイル
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽(BGM)
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
女性蔑視に迫る、アナ・ケンドリック初監督作品

アナ・ケンドリックはこれまでスパイスの効いた、一癖ある作品に多く出演してきたが、本作ではそのステージが一段階上がった。
前監督が辞退したため、急遽アナが監督兼主演を務めることになったという珍しい経緯の監督デビュー作なのだ。
しかも、内容はシリアル・キラーの実話もので、精神的攻撃を含めた性暴力描写が満載の、扱いが難しい作品。
通常、実話を描くとき、実在の人物の名前は変えることが多いが、本作ではアナ演じるシェリル・ブラッドショーも
ダニエル・ゾヴァット演じる連続殺人犯、ロドニー・アルカラも実名そのままで登場している。
2人の出会いとなった番組「 ザ・デート・ゲーム 」も当時のタイトルそのままだ。
このリアリティ・ショーは70年代当時の感覚でも女性蔑視と軽視だらけの番組で、
女性を下品にこき下ろすことがエンタメだと勘違いしているテレビメディアが不快感たっぷりに描かれている。
メディアだけでなく、当時の社会では女性は日常的に女性軽視に晒されており、そのような扱いを受けても「 なんてことないのよ 」と言わなければ、
冗談の通じない、空気の読めない人認定されてしまいそうな社会構造もリアルに表現されている。
同業男性のシェリルに対する態度も、リアリティ・ショーの男性スタッフ&出演者も、ロドニーが殺人犯だと気付き、
番組や警察に訴えた女性への対応も、とても雑で、女性の尊厳が踏みにじられまくっており、見ているこちらも不快感MAX!
見事にリアルな追体験をさせられた。
女性はそんなハードモードな日常に加えて、常に男性からの暴力性の危険にも晒されていた。
シェリルとロドニーが駐車場で緊迫したやりとりを繰り広げる場面では、シェリルの恐怖を疑似体験しているような
ゾワッとくるリアルな没入感があり、素晴らしい演出だった。
シェリルと同じ女性目線で、これらの悪習は全て、現代社会でもそう改善されていないように感じる。
特にアメリカ社会においては日本よりももっと露骨で下劣なのではないだろうか。
だからこそ、今、わざわざ70年代のリアリティ・ショーをこき下ろす作品を作ったのではないか。
まとめ
シェリルが番組後半から“ 頭の軽い見た目だけの女性 ”を演じることをやめ、男性陣に痛快な反撃を加えることで、
当時の男性たちが女性をどう思っているかを浮き彫りにする構成も見事だった。
ロドニーが殺人を犯し続けていた理由や背景が描かれていないため、物語の深みに欠けるなどの改善点はある。
しかし、初監督でこれだけシンプルに鋭く映画を作り上げたアナ・ケンドリックの監督としての可能性を感じ、
これからアナが何を選び、または作るのか、ますます楽しみになった。