「 バッド・ジーニアス 」で日本を沸かせたクールビューティー、チュティモン・ジョンジャルーンスックジン主演のタイ映画。
ひと癖ありでサスペンスフルな骨太人間ドラマです。
ハンガー 飽くなき食への道
あらすじ
才能を見いだされた若き料理人は、有名シェフのもとで修行を始める。常にパーフェクトを求められる過酷な環境で、彼女は自身の限界と料理への情熱を試されてゆく。
原題
Hunger
公開日
2023年4月8日
上映時間
130分
予告編
なし
キャスト
- シティシリ・モンコルシリ(監督)
- オークベープ・チュティモン
- ノパチャイ・チャイヤナーム
- ガン・スワスティ
- ブミバット・タウォンシリほか
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
偶然か必然か本作の鬼シェフ、ポールが出す最初の一皿は「 ザ・メニュー 」と同じ食物連鎖を意識した一品。
展開も同作と重なる部分が多いが、本作ではそれに加えて格差社会、ここ10年で急速に人々の間で意識されるようになった承認欲求問題を真正面から捉え、
自分が食べることのどこに重きを置いているか?に気づかされ、考えさせられる。
ポールの言う「 食べるだけで“特別な存在”になれる料理 」
昨今の承認欲求を満たすことに命を懸けている層にとって、そそられる台詞なはず。
一流シェフの出す料理は、高いから特別なのか?
特別だから高いのか?
人々の“美味しい”の本当の意味とは?
私自身はすでにその答えを持っている。
好きなものは千円だろうと一万円だろうと食べたいし飲みたい。
つまり、いくらであろうと自分にとっては特別だから高い値段を出す価値のある商品なのだ。
それがたとえ他人にとってはワンコインしか出す価値のない商品だとしても、私にとって“特別”なのは変わらない。
ただ、食べ物が「 人生で欠かせないもの 」になることは少ないと思う。
日本人だと米がなくなったとしたら、毎日食べているスーパーフードだから体調を崩す人が出てくると思うが、体調を崩さない人々にとっては他で代用できたり、諦められたりするのではないだろうか。
そういう意味では食べ物は「 飢えを満たす必需品 」であると同時に「 人生を豊かにする嗜好品 」とも捉えられる。
自らを法を超越した存在だと誇り「 愛のこもった料理など貧乏人の言い訳 」「 人が食べるものはその社会的地位を表す 」と語るポール。
オエイの祖母直伝料理の愛込め料理、全然届かなかったーとポールの突き抜け具合に思わず吹き出してしまったことは置いておいて、
オエイの出した“特別”の答え=「 愛 」は貪欲さで圧倒するポールの承認欲求に勝てるのか!?
シェフの世界の過酷さ、料理における空間演出の重要性、貧困と富の間にある絶対的な壁を超える創造力を持つ者と持たざる者の差をスリリングに描きながら、物語のクライマックスは料理映画の醍醐味、子弟対決へ。
ポール師匠の戦い方が清々しいほどにえげつない(笑)
一流と言われている人間が実は泥水みたいなクソ野郎ってアジア映画らしいオチだが、駄々っ子麺は美味しそうだし、幾重にも面白さを増しながら絡み合う綿密な人間ドラマに大満腹な逸作である。