最も予約の取れない最高のシェフによる最高の提供は、フードでなくミステリー。
最高のシェフが強いる緊張感は、スタッフやゲストだけではなく観客にも強いてくる。
「 食は人の天なり。よく味はひを調へ知る人。大きな徳とすべし(吉田兼好『徒然草』122段)
飽食の現代にとって美食とは?
食とは?
満足とは??
ザ・メニュー
あらすじ
公開日
2022年11月18日
原題
The Menu
上映時間
107分
キャスト
- マーク・マイロッド(監督)
- レイフ・ファインズ
- アニヤ・テイラー=ジョイ
- ニコラス・ホルト
- ホン・チャウ
- ジャネット・マクティア
- ジュディス・ライト
- ジョン・レグイザモ
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
世界で最も予約の取れない離島にある高級レストラン。
至高のシェフ(ジュリアン・スロウィク)の「 ホーソーン 」で今宵、素晴らしいディナーが待つ。
本年公開の「 ボイリング・ポイント 」にも類似した厨房とサービスとゲスト間の「 緊張感 」に導かれる。
この「 緊張感 」にミステリーが万遍なく降り注がれる。
主体はフレンチなのに、和食であり、イタリアンであり、TAXMEXでもある。
インド、タイ、中華の要素を、目まぐるしく変化させる天才シェフの調理による官能を描くミステリーなのだろう。
しかし、ミステリーは次第にオカルト・クライムと変様していく。
計算し尽されたメニューに異分子が混入され、変貌していく予定外の妙が物語に花を添える。
今宵のメニューの全てに共通するのは、登場人物のエゴイズムだと言える。
エゴは自己の確立と主張において必要では在るものの、尊大なエゴイズムは他者を緊張させ貶め、その存在を消去させていく所業である。
現代のSNS等々による過大な承認欲求は、某世界的なグルメ紙のキャラクターの如く肥え鈍重に見えてしまう。
今宵のゲストは厳選された「 場 」で同席したくない輩。
料理人と給仕の放つシリアスな「 緊張 」と「 緊張の強要 」でゲストは支配される。
故に「こんなRestaurantは嫌だ 」
「 食 」は味も場も関係も全てにおいて「 良い塩梅 」で在るべきだ。
だが、その塩梅を狂わせるのは「 人間の欲望 」に他ならない。
だとしたら「 欲望 」とは、本質的で素直な思いほど人間らしさを保てる案配だと言える。
本作は現代社会に内包されたエゴイズムと言う毒の味を見せつける「 大人の寓話 」
鑑賞後に貴方はファストフードに行きますか?
それとも「 東京カレンダー 」を購入しますか?
これはウィリアム・シェイクスピアの寓話をベースに、アガサ・クリスティのサスペンスを、最新の香辛料とソースで彩った珠玉のテーブルなのだろう。
まとめ
僕は偏執的なフーディーでもないし、立場をわきまえないグルメ気取りのセレブレティでもない。
しかし「 食 」「 場 」に対する「 思い 」は強い。
丁寧に処理された良い食材。
培われた技術の成果が映える皿。
良き場を構築するゲストと料理人と給仕。