伝説ホラーの序章「 オーメン:ザ・ファースト 」6月6日午前6時 “悪魔の子”ダミアン誕生物語【 続編に期待 】

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オーメン:ザ・ファースト

©︎The First Omen

あらすじ

全世界を恐怖に包み込んだレジェンド・オブ・ホラー「オーメン」、その“はじまり”の物語。 6月6日午前6時──“悪魔の子”ダミアンの誕生が迫る中、それを阻もうとする者が次々と惨たらしい死を遂げていく。 修道女になるためにローマの教会で奉仕するマーガレットは、その不可解な連続死に巻き込まれる。 やがて彼女は、恐怖で人々を支配するため、悪の化身を誕生させる教会の邪悪な陰謀を知ってしまう。 すべてを明らかにしようとするマーガレットの前に、さらなる<戦慄の真実>が待ち受けていた…

公式 HPより

原題

The First Omen

公開日

2024年4月5日

上映時間

118分

予告編

キャスト

  • アルカシャ・スティーブンソン(監督)
  • ティム・スミス(脚本)
  • アルカシャ・スティーブンソン
  • キース・トーマス
  • ネル・タイガー・フリー
  • ビル・ナイ
  • ラルフ・アイネンソン

公式サイト

オーメン:ザ・ファースト

48年後に作られた前日譚は意外な傑作

©︎The First Omen

オリジナルの「 オーメン 」(1976)は子どもの頃大好きだった映画だ。

しかし、スタッフもキャストもほとんど交代して作られた続編「オーメン2 / ダミアン」(1978)は酷いものだったし、初代から48年も経って突如作られた前日譚など1ミリの興味もなかった。

ところが妙に良い評判が聞こえてくるので、オーメン好きとして見なければなるまいということになった。

ビックリするほど地味な作りだ。

今時のホラー映画としてはありえないほど外連味がない。

そのため前半はかなり眠くなる。

だがそんな反応など意に介さぬかのように、重厚な作風のまま堂々と歩を進める様子に次第に惹きつけられ、後半はその格調高い作りに感動さえ覚えた。

半世紀近く前のネタを使った出涸らしのB級ホラーかと思いきや、驚くほど本格的な宗教ゴシックホラー。

さまざまな突っ込みどころも多いが、それを遥かに凌駕する魅力がある。

なるほど、これは評判になるのも当然だろう。

古典的な「 怪奇映画 」の風格

本作の魅力は数多いが、主なものとして3点上げよう。

1つはローマの教会が主な舞台だけあって、光と影を生かした古典的ゴシックホラーの空気感に満ちていること。

派手なショック演出ではなく、不気味な雰囲気で観客を包み込むような演出は、地味ではあるが、この時代にあっては逆に新鮮ですらある。

暗闇の中で何かがかすかに動いているのだが、よく見えない…という演出は「 ホラー 」というよりも「 怪奇映画 」の原点だ。

後半で重要な役割を果たす禍々しい写真の数々も、あの絵作りの中でこそ映える。

画面の質感からして、撮影は間違い無くフィルムだろう。

舞台となる1970年代初めの雰囲気がよく出ているし、時系列的には続編となる「 オーメン 」と続けて見ても、さほど違和感はないはずだ。

神は悪魔を必要とする

2つ目は、ストーリーの根本である「 ダミアンはなぜ誕生したのか 」というアイデア。

これが拍子抜けするほど単純だ。

単純なのだが、実はすごく深い。

ザック・スナイダーの「 ウォッチメン 」(2009)にも通じるテーマであり、バットマンとジョーカーの関係も彷彿とさせる。

いや、そんな特殊な例を持ち出すまでもなく、世界中の政治で今もしばしば行われていることだ。

政治や宗教というシステムが人心を掌握するために、どうしても持ってしまいがちな邪悪な一面であり、人類にとって普遍的なテーマだと言ってもいい。

一見馬鹿馬鹿しいのだが、現実の歴史や文化と照らし合わせたとき、その発想を一笑に付すことができないという、思いがけない深さ。

マニア心をつかむホラー映画の引用

3つ目は、さまざまなホラー映画の引用だ。

「 オーメン 」とのさまざまなつながりは当然だが、オリジナルの見せ場をうまくアレンジしたシーンが出てくるひねり具合にはニヤリ。

アカデミー歌曲賞にもノミネートされたジェリー・ゴールドスミスの名曲「 アヴェ・サターニ 」が新録音で鳴り響くだけでもオリジナルのファンは胸アツだ。

この作品を見て「 アヴェ・サターニ 」が「 アヴェ・マリア 」と対になっていることに初めて気がついた。

しかもこの映画においては、その対比がオリジナルの「 オーメン 」にはない重要な意味を持つことに鳥肌が立つ思いだ。

舞台がローマということもあって全体の雰囲気は「 サスペリア 」(1977)を思わせるし、聖職者たちが主役で神と悪魔の関係が問われるところなど「 エクソシスト 」(1973)の影響は濃厚だ。

一番驚いたのはイザベル・アジャーニ主演の「 ポゼッション 」(1981)で、あのシーンはどう見ても偶然ではなく本家からの引用だろう。

恥ずかしながら未見なのだが「 ローズマリーの赤ちゃん 」(1968)の影響も明らかだし、修道女たちが集団で教会の床に身を横たえるシーンは「 尼僧ヨアンナ 」(1961)を思わせる。

後半は、「 内臓感覚 」という言葉で語られていた初期のクローネンバーグ色たっぷり。

そして終盤は、台詞も含め、明らかに「 シャイニング 」(1980)を想起させる。

他にもすぐにはタイトルが出てこない、さまざまな元ネタがあるはずだ。

この辺は映画に詳しければ詳しいほど身悶えしてしまうことだろう。

しかもそれらが適切に処理され、これ見よがしではない地味なタッチで描かれているため、単なるパロディやパクりではなく、何やらホラー映画の大いなる原型を見ているような気分になってくる。

これは映画をよく見ている人ほど魅了されてしまうであろう要素だ。

続編はあるのか?

ところでこの作品、明らかに続編がある作りになっている。

もちろん本来の続編は「 オーメン 」なのだが、それとは違う、別の知られざる物語も存在していたこと暗示する結末。

あの「 オーメン 」の裏で一体どんな物語が同時進行していたのか? 

できればこちらも、この程度のクオリティで実現してほしいものだ。

執筆者

文・ライター:ぼのぼの

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