「 ふたつの部屋、ふたりの暮らし 」考察レビュー
高齢のレズビアンカップルが直面する困難。
社会の様々な側面が反映される社会派にならざるを得ない美しい映像。
まさにラブストーリー。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ふたつの部屋、ふたりの暮らし
公開日
2022年4月8日
原題
Deux
上映時間
95分
キャスト
- フィリッポ・メネゲッティ(監督)
- バルバラ・スコバ
- マルティーヌ・シュバリエ
- レア・ドリュッケール
- ミュリエル・ベナゼラフ
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
映像の美しさや細部へのこだわり、配慮が人の気持ちへの思慮深さにもそのまま通じているようで丁寧に作られた良作だなと感じました。
監督のフィリッポ・メネゲッティ氏は現在42歳の男性。
今作が初監督とは意外に思うほど、映像の作りこみや観客に訴えかける心理描写が巧みだと感じました。
今作は彼が過去に出会い、映画の魅力を教えてくれたレズビアンカップルが原体験となっているそうですが、属性の異なる彼が高齢のレズビアンカップルを描くことに大きな意味があるし、
しかも、それがこの手の作品によくあるバッドエンドに毒されていない点に好感を持ちました。
やはり、主人公の女性ふたりが70代であり、それぞれの思いで人生を築いてきた存在であることは味わい深いです。
かつて自分たちが出会ったローマに二人だけで暮らす。
そんな夢のようでいて、ささやかな願いは複雑な背景や年齢ゆえの事情で、なかなか実現できません。
そこに歯がゆさを感じつつも、この世界の現実を思い知るような気持ちになりました。
ラストシーンにみる、不確かながらも、ちゃんと存在した愛情に救いを感じます。
こんなに丁寧に女性の気持ちを描写できるのだから、きっと監督は女性なのではないかと思いましたが、それこそが私自身のバイアスだったようです。
監督は人の気持ちや境遇、背景、築いてきた歴史などにリスペクトと想像力を持てる人なのだと感じました。
そして、自分もそうありたいと感じました。
まとめ
「 若い女性の物語ならすぐ資金調達できるのに 」と言われ、苦労しながらもこの作品の核である主人公が、70代の女性同士であることは曲げなかった結果、
心揺さぶる素晴らしい作品を作った監督に拍手の気持ちです。
そうした志ある映画製作を応援したいです。
痛みと真摯に向き合う姿勢を感じる良質な作品でした。