本年(2025年)の米アカデミー賞で、不名誉な「 ラジー賞 」を受賞すること4回のデミ・ムーアが、40年を超えるキャリアで初めてアカデミー賞候補になった。
アカデミー賞の受賞は逃したものの、ゴールデングローブ賞など主だった他の賞を受賞しており、カムバックを印象付けた。
本年のアカデミー賞では、キャリア30年以上、50代で初候補になったガイ・ピアース、50年近いキャリアで初候補になったイザベラ・ロッセリーニも印象的だった。
結局、彼らも受賞は逃したが、候補入りでも栄誉なことである。
だが、その候補入りを何度も果たしながら一度も受賞がないスターや、長いキャリアを誇るにも関わらず候補入りすら無縁のスターもいる。
今回は、アカデミー賞となぜか縁のないスターたちを取り上げる。
アクションに冷たいアカデミー賞

アカデミー賞は賞傾向として、芸術性と娯楽性が相半ばする中庸的な作品が好まれる。
「 タイタニック 」(1997)「 ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 」(2003)はアカデミー賞で作品賞を含む11部門を受賞しているが、これらは典型的な” アカデミー賞向け “作品の例である。
そのため、アカデミー賞は娯楽に振り切ったアクション映画には冷たい傾向にある。
アクション映画で演技部門の候補入り、受賞したことがあるのは
- 「 エイリアン2 」(1986)…シガニー・ウィーバー
- 「 パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち 」(2003)…ジョニー・デップ
- 「 ダークナイト 」(2008)…ヒース・レジャー
の3人しかおらず、受賞はヒース・レジャー、一人のみである。
アクション映画で作品賞候補入りした作品も少ない。
今のところ、
- 「 マッドマックス 怒りのデス・ロード 」(2015)
- 「 ブラックパンサー 」(2018)
- 「 トップガン マーヴェリック 」(2022)
の3本のみである。
そういった賞傾向から、アカデミー賞はアクションスターに冷たい。
アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェット・リー、チャック・ノリス、ジャン=クロード・ヴァンダム、スティーヴン・セガール、ジャッキー・チェン、ジェイソン・ステイサム、ドウェイン・ジョンソン、ヴィン・ディーゼルは候補経験なし。
アクション専門ではないがアクションのイメージが強いトム・クルーズは3回候補になって受賞ゼロ。
シルベスター・スタローンは候補2回で受賞ゼロである。
同じくアクション専門ではないがアクションのイメージが強かったブルース・ウィリスは候補経験なしのまま認知症で俳優業を引退してしまった。
「 マトリックス 」シリーズと「 ジョン・ウィック 」シリーズでアクションのイメージが強いキアヌ・リーヴスも候補経験がない。
コメディに冷たいアカデミー賞
前述の通り、アカデミー賞は賞傾向として、芸術性と娯楽性が相半ばする中庸的な作品が好まれる。
そのため、娯楽に振り切ったコメディ映画にも冷たい傾向にある。
ヴィンス・ヴォーン、アダム・サンドラー、ウィル・フェレル、ジャック・ブラック、ベン・スティラー、ヒュー・グラント、ジム・キャリーはコメディ俳優としてのイメージが強いが、彼らは誰一人としてアカデミー賞候補になったことがない。
ヒュー・グラントと同学年で同じイギリスのスター俳優であるコリン・ファースもコメディのイメージが強く、長年アカデミー賞と無縁だったが、「 シングルマン 」(2009)で初候補になり、「 英国王のスピーチ 」(2010)で受賞した。
どちらもシリアスなドラマ作品である。
作品選び(作品の出来ではなく賞傾向的に好まれそうなジャンル)もアカデミー賞を獲得するには重要な要素と言えるだろう。
ヒュー・グラントは「 異端者の家 」(2024)が評判になり、今年、ゴールデングローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)、英国アカデミー賞の主演男優賞など複数の大きな賞で候補になったが、結局アカデミー賞は候補漏れだった。
未受賞コメディスター俳優組でも特に悲哀に満ちているのが、ジム・キャリーのキャリアだ。
ジムは「 トゥルーマン・ショー 」(1998)でゴールデングローブ賞の主演男優賞(ドラマ部門)を受賞した。
ゴールデングローブ賞はアカデミー賞との一致率が非常に高く、アカデミー賞の有力候補と見なされていたが、結果はまさかの候補漏れだった。
ジムは翌年の「 マン・オン・ザ・ムーン 」(1999)でもゴールデングローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞したが、アカデミー賞では2年連続で候補落ちだった。
これほど前哨戦の結果に裏切られた例はめずらしい。
ジム・キャリーは未だにアカデミー賞の候補経験すらない。
まだまだいるアカデミー賞受賞経験のないスター
レイフ・ファインズは今年「 教皇選挙 」(2024)で28年ぶり3度目の候補になったものの受賞に至らず。
エドワード・ノートンは「 名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 」(2024)で10年ぶり4度目の候補になったが受賞を逃がした。
グレン・クローズは8回候補、エイミー・アダムスは6回候補、アネット・ベニングは5回候補になって受賞ゼロ。
ベン・アフレックは監督作の「 アルゴ 」(2012)で作品賞、「 グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち 」(1997)で脚本賞を受賞しているが、俳優としては候補経験すらない。
ケビン・コスナー、メル・ギブソン、クリント・イーストウッドは監督賞は受賞済みだが、俳優としては受賞なし。
メル・ギブソンは俳優としては候補経験もない。
ロバート・レッドフォードは監督賞は受賞済みだが、俳優としては「 スティング 」(1973)での候補1回のみで既に俳優引退宣言をしている。
ブラッドリー・クーパーは俳優として5度候補になって受賞ゼロ。
多彩なブラッドリーは、俳優・プロデューサー・脚本家として実に12回も候補になっているが、今のところ受賞はない。
マット・デイモンは「 グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち 」でベン・アフレックとの連名で脚本賞を受賞しているが、俳優としては3回候補になって受賞ゼロ。
ハリソン・フォード、サミュエル・L・ジャクソンは長いキャリアで一度候補になったのみである。
ユアン・マクレガー、ケビン・ベーコン、リチャード・ギアは長いキャリアがありながらここまで候補経験もゼロ。
ピーター・オトゥールは8回ノミネート、リチャード・バートンは7回ノミネートされたが受賞できないまま鬼籍に入ってしまった。
まとめ
アカデミー賞にはタイミングなどの運にも恵まれる必要があるのかもしれない。
とはいえ、彼らがスターであることに変わりはない。
アカデミー賞俳優はステータスではあるが全てではない。
受賞していなくても彼らの地位、実績は揺るがないだろう。

文・ライター:神谷正倫
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