お嬢さん(2016)

原題(英題)
Ah-ga-ssi
公開日
2017年3月3日
上映時間
145分
キャスト
- キム・ミニ
- キム・テリ
- ハ・ジョンウ
- チョ・ジヌン
- キム・ヘスク
- ムン・ソリ
コメント
前作のハリウッドから戻り、地元韓国での作品。
パク・チャヌクの映画としてはめずらしい原作付きの作品だが、サラ・ウォーターズの原作「 荊の城 」が
ヴィクトリア朝のイギリスを舞台にしているのに対し、映画の舞台は日本統治時代の朝鮮半島である。
一部分、日本でも撮影が行われている。
「 オールド・ボーイ 」同様、原作とはほぼ別物であり、特に映画のラストシーンは、原作と全くの別物になっている。
出演者の大半は韓国の俳優だが、そのような時代背景に設定されているため、劇中のかなりの部分の台詞が日本語である。
パクらしい、大胆な性描写に加え、劇中でかなりの頻度で日本語の非俗語(放送不適切用語を含む)が出てくる。
日本語ネイティブとしては何かおかしくなってしまうのだが、内容はいかにもらしいインモラルなサスペンスである。
ブラックユーモアの要素も垣間見える。
原作者は「 原作 」表記ではなく「 原案 」表記を促したが、映画が完成するとその出来に納得し、原作でのクレジットを許可した。
「 復讐者に憐れみを 」以来のR-18指定作品となっており、鑑賞時は注意が必要である。
英国アカデミー賞の最優秀非英語作品賞はじめ、多くの国際的な賞を受賞している。
別れる決心(2022)

原題(英題)
Decision to Leave
公開日
2023年2月17日
上映時間
138分
キャスト
- パク・ヘイル
- タン・ウェイ
- イ・ジョンヒョン
- コ・ギョンピョ
- パク・ヨンウ
- キム・シニョン
コメント
時代物の前作と変わり、再び現代ものの韓国映画。
意外なキャスティングで、主人公の刑事を翻弄するファム・ファタール的なポジションに中国人女優のタン・ウェイが起用されている。
舞台は全編韓国だが、彼女のみ本人の出自そのまま中国人の役である。
タン・ウェイは韓国人映画監督のキム・テヨンと2014年に結婚しているため、韓国映画への出演はその縁もあるのだろう。
前作の「 お嬢さん 」と変わり、R指定なし、もちろん過激な性描写はない。
直接的な暴力表現も控えめで、今までのパク・チャヌクと比べ間接的な表現が多い。
筋立ては、ある転落事件で被害者の未亡人に、殺人の疑いを持った刑事が彼女に疑いを持ち始め捜査に乗り出すサスペンスなのだが、
この映画においてはサスペンスは主題を描くための乗り物といった印象だ。
どちらかというと本筋に見えるのは、妻子のある身でありながら、謎めいた未亡人と惹かれ合う刑事と未亡人の関係で、2人の視線が絡み合うカット構成が妙に艶めかしい。
過激な描写がないことに、彼の他の作品を知っている身からすると物足りなさも感じるが、過激な描写抜きでも魅せるところはさすがと言ったところだろうか。
前作に続き、本作も国際的に高く評価され、カンヌ国際映画祭の監督賞を受賞し、ゴールデングローブ賞の最優秀非英語映画賞候補になった。
アカデミー賞の国際長編部門にも韓国代表として出品され、最終候補まで残っている(ノミネート作の5本には惜しくも残れず)。
長編映画監督以外の活躍
イギリス制作のテレビシリーズ「 リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ 」で監督を務めている。
時折短編作品を監督することもあり、「 審判 」(1999)「 Day Trip 」(2012)の2本は短編、
また3作品のオムニバス映画「 もし、あなたなら 6つの視線 」(2003)の一編「 N.E.P.A.L. 平和と愛は終わらない 」、
「 美しい夜、残酷な朝 」(2004)の一編「 cut 」はパクの手によるものである。
大物監督によくあるように、製作、脚本として参加することもある。
ポン・ジュノ監督のハリウッドデビュー作となった「 スノーピアサー 」(2013)では、製作に名前を連ねている。

文・ライター:ニコ・トスカーニ