「 マン・オブ・スティール 」(2013)に始まり「 アクアマン / 失われた王国 」(2023)で終わりを迎えたDCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)
その間に作られた全16作品を独断と偏見に基づいてランク付けしてみた。
DCエクステンデッド・ユニバース【 DCEU 全16作品 】
マーベルコミックスとDCコミックスは、アメリカンコミックの2大巨頭。
それまでは散発的に作られていたアメコミシリーズを体系的に映画化するため、まずマーベルがマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のフランチャイズ構想を打ちだした。
2008年の「 アイアンマン 」に始まり、ヒーロー総結集のアベンジャーズシリーズに向けて、次々と作品を作り始める。
その路線が成功を収めたことで、ライバルであるDCも腰を上げ、同じくヒーロー総結集のジャスティス・リーグに向けて、DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)のフランチャイズを作りだした。
第1作は2013年の「 マン・オブ・スティール 」で、当初はザック・スナイダー監督がユニバースの舵取り役を担っていた。
明朗快活な作風が基本のMCUに対し、DCEUはスナイダーの個性が反映されたダークで重厚な作品が先行。
それは一部マニアに熱狂的に支持されたが、「 重苦しいヒーローものなど見たくない 」という否定的な意見も多く、賛否両論。
興行的にもMCUの後塵を拝していた。
マイルストーンとなるはずだった「 ジャスティス・リーグ」(2017)はザック・スナイダーの途中降板によって大きな失敗に。
「 ワンダーウーマン 」(2017)や「 アクアマン 」(2018)は評価・興行共に成功したが、スナイダーという舵取り役を失ったままのユニバースは迷走せざるをえず、
会社の合併やトップの交代、興行的な不振などが重なって、2023年の「 アクアマン / 失われた王国 」をもってDCEUは幕を閉じることが宣言された。
とはいえ、DCコミックスのヒーロー映画が完全に消えたわけではなく、今後はジェームズ・ガンが舵取り役となって、新たなDCユニバース(DCU)のフランチャイズが始まることになっている。
だが全てを0から仕切り直すため、ヘンリー・カヴィルのスーパーマンやジェイソン・モモアのアクアマン、ガル・ガドットのワンダーウーマンなどには、もう会えないようだ。
なお、DCコミックスのキャラクターが主人公でも「 ジョーカー 」(2019)「 ザ・バットマン 」(2022)などは、DCEUやDCUとは別枠扱いの単独シリーズとされている。
「 ジョーカー 」の続編は2024年、「 ザ・バットマン 」の続編は2025年に公開予定だ。
そんなわけで、2023年をもって棺の蓋が閉じられたDCEU。
残された16本の作品について、その出来映えをS〜Dでランク付けしてみた。
もちろん筆者の主観に基づくランキング・読者の方とは意見が食い違うところもあるだろうが、その点はご了承願いたい。
こんな具合に各自がDCEUやMCUのランキングを発表すれば、他の鑑賞者のためのガイドとなって面白いのではないだろうか。
Sランク(必見の傑作)
- ジャスティス・リーグ ザック・スナイダー・カット(2021)
- マン・オブ・スティール(2013)
- アクアマン(2018)
ジャスティス・リーグ ザック・スナイダーカット
DCEUの到達点。
6人のヒーローたちのドラマが、ザック・スナイダーならではの映像美学で描かれる。
この4時間の大作が実現しなかったらDCEUに対する評価は大きく変わっていただろう。
マン・オブ・スティール
ザック・スナイダー作品がトップ2本を占めることに。こちらもドラマ的に深みのある作品なので、詳しくは単独レビューをお読みいただきたい。
アクアマン
未体験の映像美に満ちた、ユーモアたっぷりでド派手なアクションスペクタクル。
だがイメージほど脳筋な作風ではなく、王位継承をめぐる兄弟の骨肉相食む争いは、シェイクスピアを参照した形跡さえある。
他との絡みを考えず、純粋なエンタテインメントとして楽しめる作品を1本勧めるなら、本作で決まりだ。
Aランク(欠点もあるが十分な見応え)
- バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(2016)
- ザ・フラッシュ(2023)
- ジャスティス・リーグ(2017)
- ブラックアダム(2022)
バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
ザック・スナイダー作品だが、脚本に少々難あり。
両雄が和解するきっかけなどかなり無茶だ。しかしそれを力業で押し切り、ワンダーウーマンの見得を切るかのように鮮やかな登場で見る者を歓喜させてしまう、暴力的な作品。
完成度は高くないが、見どころたっぷり。
ザ・フラッシュ
単独レビューではかなり辛辣なことを書いたが、可愛さ余って憎さ百倍だとご理解いただきたい。
詰め込み過ぎの脚本に難があり、BvsSと同じく完成度は高くないが見どころは山ほど。
ジャスティス・リーグ
ザック・スナイダーの降板を受けてジョス・ウェドンが代わりに完成させた劇場公開版。
製作上のゴタゴタや興行的な失敗、ウェドンへのパワハラ告発などもあって、何かと評判の悪い作品だが、実はそこまで不出来とも言えない。
ザック・スナイダー・カットのような深みと壮大さは望むべくもないが、手軽なエンタメとしては十分に及第点だ。
ブラックアダム
こちらもDCEU末期のゴタゴタを象徴するような作品となったため、あまり良い評判を聞かないが、実は結構面白い。
見どころはタイトルロールのブラックアダムではなく、ジャスティス・リーグとはパラレルな存在っぽいヒーローチームのジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ(JSA)
元ジェームズ・ボンド役者のピアース・ブロスナンがいぶし銀の名演で美味しいところを取っていくし、あまり強そうに見えないホークマンがリーダーとして頑張っている姿が泣ける。
Bランク(意外と楽しめるエンターテイメント)
- ブルービートル(2023)
- ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(2021)
- アクアマン/失われた王国(2023)
ブルービートル
日本ではDCEU作品中唯一の劇場未公開作品という不名誉な肩書きを背負っているが、内容は良質なジュブナイル。
突出した傑作ではないが見応え十分。
ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結
最初の「 スーサイド・スクワッド 」をほぼリブートする形でジェームズ・ガンが監督した作品。
前作よりもはるかに面白く、マニアックなファンも多い。
しかし「 ただ面白いだけ 」とも言え、ジェームズ・ガンがマーベルで監督した「 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 」のようなドラマチックな感動は得られないので、そこまで高く評価する気にもなれない。
アクアマン / 失われた王国
傑作「 アクアマン 」の続編にして、DCEUの最後を飾る作品。
まさに「 肩肘張らずに楽しめるエンタメ 」だが、前作と比較するとドラマチックな要素は激減し、映像的な派手さも後退。普通に楽しめることは間違い無いが、一抹の寂しさも感じる。
Cランク(ちょっと微妙)
- シャザム!(2019)
- ワンダーウーマン(2017)
- スーサイド・スクワッド(2016)
シャザム!
魔術の力で、大人の姿をしたヒーローとなった14歳の少年の物語。
「 ブルービートル 」と並んでジュブナイル要素の強い作品で、悪くはないにせよ、そこまで誉めるところもない。
ワンダーウーマン
私と世間一般で評価が一番食い違うのが、このシリーズだろう。
ガル・ガドットのワンダーウーマンは、ザック・スナイダー作品においては魅力的だが、パティ・ジェンキンスの演出は少々ユルすぎる。
やたら頑丈なヒーローとヴィランが派手にドツきあい、周りの物は壊しまくるが本人たちには傷ひとつつかない紋切り型のアクションには、「 またか 」という感じ。
この点は「 シャザム!」も同様だ。
スーサイド・スクワッド
そもそもあんな魔女を退治するために、並外れた悪党とは言え、超能力を持たない普通の人間たちを使うという計画が無茶過ぎでは? 面白い部分も多いのだが、話の根本に乗れなかった。
せめてもう少しジョーカーが活躍してくれれば…
Dランク(見る必要はない)
- シャザム!〜神々の怒り〜(2023)
- ワンダーウーマン1984(2020)
- ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(2020)
この辺の作品になると、あれこれ語る気になれない。
そもそも見てすぐに忘れるので、語ることもできない。
1つだけ注釈するなら、最下位の「 ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY 」が日本で劇場公開されたのは2020年3月20日。
つまり日本がコロナ禍に本格的に突入する時期で、明日の生活がどうなるか分からない不安が社会を重く覆い尽くしていた。
大作映画の公開が次々と延期され、この2週間ほど後にはすべての映画館が休業を強いられることになる。
世の中の動きがほとんどストップするという、3.11のときすら凌ぐ異常事態。
そんな状況下で楽しめるような映画ではなく、見た時期が悪すぎたという点は考慮すべきかもしれない。
文・ライター:ぼのぼの