ある用務員
あらすじ
用務員としてとある高校で働く主人公・深見(福士)は元暴力団員だった父を持つ男。暴力団には属さず、学校に用務員として身をおくのは父親の組兄弟・真島善喜(山路)の娘・真島唯(芋生)の見張りとして務めているからだ。ある日、暴力団の抗争が勃発し善喜が殺され、その娘の唯が狙われる事により、学校が戦場となる。深見は用務員としての衣を脱ぎ捨て、閉ざされた学校内から唯を救出しようとするが…。
公式サイトより
公開日
2021年1月29日
上映時間
86分
予告編
キャスト
- 阪元裕吾(監督・脚本)
- 福士誠治
- 芋生悠
- 前野朋哉
公式サイト
「 ベイビーわるきゅーれ 」はここから生まれた
阪元裕吾が「 ベイビーわるきゅーれ 」の前に監督したアクション映画。
本作の大きな注目点は、髙石あかりと伊澤彩織の2人が女子高生殺し屋として登場すること。
ちさと / まひろのコンビと別人ではあるが、実質的なキャラクターはほぼ同じ。
つまり、この映画に登場した2人が魅力的だったので、そこからスピンオフするような形で「 ベイビーわるきゅーれ 」が生まれたということだ。
公開日で言うと半年しか離れていないが、本作はコロナ期の混乱により製作から公開までにかなり時間を要したらしい。
髙石と伊澤のインタビューを読むかぎり、「 この2人を主役にした映画があったら面白いね 」的な撮影中の会話から「 ベイビーわるきゅーれ 」の企画が持ち上がったということで間違いないようだ。
ストレートだが変な個性に満ちたアクションもの
ヤクザ組織に殺し屋として育てられた深見晃(福士誠治)が、紆余曲折あって、組長の娘である唯(芋生悠)を守るために学校へ用務員として潜り込み、他の殺し屋たちと血みどろの戦いを繰り広げる物語。
「 レオン 」や「 レザボアドッグス 」の影響が随所に見られ、ストーリーやアイデアにさほどの新味はない。
しかし結論から言えば、非常に面白い。
阪元裕吾の作品としては最もストレートなアクションものだが、それでなお他の監督の映画に比べたら変な要素がいっぱい。
この監督の一筋縄ではいかない個性に満ち溢れている。
キャラ立ちまくりの殺し屋たち
本作のクライマックスは、学校内での殺し屋軍団との一大バトルだが、敵となる殺し屋やボス(前野朋哉)のキャラが立ちまくっている。
本作が比較的シリアスなイメージを抱かせるのは、晃と唯のキャラが生真面目で遊びがないためだが、それに対して敵側は、これでもかとばかりに奇天烈なキャラ揃い。
そのキャラ立ちぶりは、スピンオフで「 ベイビーわるきゅーれ 」が生まれたという一点だけを取っても十分過ぎるほど分かるだろう。
アクションはもちろん本格的なもので、基本はそっち系が大好きな人なのだということがよく分かる。
コマの中抜きを端々に入れているが、アクション以外のところでもそれを使っているので、ごまかしという感じは受けず、面白い個性となっている。
「 ベイビーわるきゅーれ 」に比べるとまだ荒削りな部分も目立ち、特に戦いが終わってからの終盤が無駄に長いのは大きな欠点だ。
しかし20代前半の若さで、この低予算で、ここまで面白い映画を作れるなら、及第点などと言うレベルをはるかに超えている。
映画の見せ方の基本をよく理解している人だ。
芋生悠ファンとしては不満も
実は筆者は「 ソワレ 」「 ひらいて 」などに出ていた芋生悠の大ファンであり、それも本作を見た大きな理由だ。
ただ残念ながら、彼女のシリアスな、はっきり言えば根暗な個性は、本作のヒロイン役にあまり合っていなかった感じがする。
彼女の演技だけが突出して重い。
あの役は、もっと地獄の中に一筋の光を見せてくれるような個性を持った子の方が良かった。
ただしそれは彼女だけの責任ではないだろう。
「 ベイビーわるきゅーれ 」など他の作品に出てくる女性たちと比較しても、この唯というキャラは個性が違いすぎ、阪元裕吾もどう扱って良いものか迷っていたように見える。
阪元裕吾ワールドの中では、どうしても異物感を覚えてしまう生真面目キャラだ。