サイボーグでも大丈夫(2006)

原題(英題)
I’m a Cyborg, But That’s OK
公開日
2007年9月15日
上映時間
107分
キャスト
- チョン・ジフン
- イム・スジョン
- チェ・ヒジン
- イ・ヨンニョ
- ソン・ヨンスン
- チュ・ヒ
- イ・ヨンミ
- チョン・ソンフン
- キム・チュンギ
- キム・ビョンオク
コメント
パク・チャヌクの芸風としてはかなり異色なロマンティック・コメディ映画。
精神病棟を舞台に、自分をサイボーグと思い込んだ女性と彼女に恋をする青年を描いている。
ロマコメ作品ではあるが、舞台は精神病棟。
実害のないレベルで頭のねじが外れたキャラクターたち(ヒロインを含め)が物語を彩る。
ここで正統派のロマコメにしないところがいかにもパクらしい。
本職は歌手のチョン・ジフン/RAIN<ピ>が劇中で披露するヨーデルが印象深い。
ロマコメなので激しい暴力描写は少ないが、ヒロインが妄想世界で大殺戮を繰り広げる場面があり、このあたりはいかにもこの監督らしい。
エロスかバイオレンスは彼の芸風に不可欠なのだろう。
パクは続く「 渇き 」「 イノセント・ガーデン 」と本作の3本を、「 人間ではない存在の三部作 」というテーマでくくっていることを明かしている。
「 JSA 」「 オールド・ボーイ 」「 親切なクムジャさん 」と比べ前売り券の売り上げは3分の一程度で、既に大物監督になっていた彼の作品の興行としては今一つの結果だった。
ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で上映され、アルフレッド・バウアー賞を受賞している。
渇き(2009)

原題(英題)
Bak-Jwi
公開日
2010年2月27日
上映時間
133分
キャスト
- ソン・ガンホ
- キム・オクビン
- シン・ハギュン
- キム・ヘスク
コメント
「 人間ではない存在の三部作 」2作目にして、3部作で最も” らしい “作品。
病院で重病患者の最期を看取ることしかできない自分の無力さに絶望した韓国人の神父が、アフリカで極秘に開発された
致死率100%というウイルスに対抗する新型ワクチンの検査で検体になり、謎の血液を輸血されて生き返るが吸血鬼になってしまう。
帰国した神父は幼馴染の妻に心惹かれるが、彼女は一家に虐げられており、夫を殺害してほしいと頼まれる、という筋立てである。
スーパーヒーローと戦うわけではないので、大立ち回りこそないが、血の臭いを感じさせる生々しい暴力描写と性描写がある。
そして、もちろん向かう先はバッドエンドである(それをただのバッドエンドと見るか、贖罪と見るかは解釈次第だが)。
R15+指定作品のため、鑑賞時は注意が必要。
主人公が神父の設定だが、韓国はキリスト教徒の比率が日本に比べるとかなり高く、韓国人からしたら仏教の僧侶よりもこちらの方が馴染み深いのだろう。
韓国のキリスト教徒はプロテスタントが多いらしいが、本作の主人公は「 神父 」なのでカトリックである。
国際的に高く評価され、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞している。
イノセント・ガーデン(2013)

原題(英題)
Stoker
公開日
2013年5月31日
上映時間
99分
キャスト
- ミア・ワシコウスカ
- ニコール・キッドマン
- マシュー・グード
- ダーモット・マローニー
- ジャッキー・ウィーバー
- フィリス・サマービル
- オールデン・エアエンライク
- ルーカス・ティル
- ラルフ・ブラウン
コメント
「 人間ではない存在の三部作 」締めくくりの作品にして、パク・チャヌクのハリウッド進出作で、初の英語作品。
本作を機に、パクは度々英語作品にも呼ばれるようになる。
パク初のハリウッド映画であると同時に、「 プリズン・ブレイク 」で当時ブレイクしたての俳優、ウェントワース・ミラーの初脚本作品でもある。
アメリカの田舎町を舞台に、父を失った母娘のもとに行方不明になっていた叔父が突然現れる。
そこから一家の身に奇怪な出来事が起こるようになる、というフィルムノワール的なサスペンスである。
理屈立ったサスペンスであるため、最後にどんでん返しがあるのだが、少々肩透かしな結末だった。
「 人間ではない存在の三部作 」の括りだと、「 サイボーグ 」「 吸血鬼 」と来て、本作でマシュー・グッドが演じるヒロインの叔父は「 怪物 」というところだろうか。
テーマに対して衝撃度はそれほどでなく、ピントがぼやけている印象だ。
雇われ仕事だったのか、他の監督作に比べるとパク・チャヌク監督のカラーが全体的に薄い印象である。
ハリウッド業界人が選ぶ製作前の優秀脚本「 ザ・ブラックリスト 」2010年版の5位にも選ばれた脚本で、
人気俳優の初脚本という話題性もあったが、賞レースで目立った結果は残せなかった。