文・ライター:@小松糸
1971年公開の映画「 ベニスに死す 」に出演し、絶世の美男子と言われ、世界中から注目を浴びたビョルン・アンデルセンの密着ドキュメンタリー。
表舞台から去った彼に一体何があったのか。
世界で一番美しい少年

公開日
2021年12月17日
原題
Varldens vackraste pojke
上映時間
98分
キャスト
- クリスティーナ・リンドストロム(監督)
- クリスティアン・ペトリ(監督)
- ビョルン・アンドレセン
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー

「 ベニスに死す 」でのオーディション映像が印象的だった作品。
この映画で絶世の美男子となったビョルン・アンドレセンだが、そのクールな印象とは裏腹に多くの苦悩を抱えていた。
綺麗に越したことはないと思う。
でも、その綺麗さに悩まされる場合もあるとしたら、美しさは罪になるのだろうか。
他人からの妬みなども多くあっただろうが、それらの全ての原因は美しさのせいにできるのだろうか。
表舞台から去っていた彼だが、2020年公開の映画「 ミッドサマー 」に出演し、儀式によって命を落とす老人を演じた。
劇中で彼の顔を潰す残酷なシーンがある。
私は鑑賞した当時はビョルンだと知らなかったのだが、「 世界で一番美しい少年 」を観た後、「 ミッドサマー 」であのシーンを表現したのはもの凄い意味を感じた。
かつて絶世の美男子と言われた人の顔を潰すということ。
それはいろんな意味で衝撃的な出来事だったのではないか。
「 ミッドサマー 」はかなりショッキングな作品なので、個人的にはもう2度と見返したくない。
しかし、今回の密着の中で「 ミッドサマー 」のメイキング映像があった。
あんなに残酷で救いのない作品の舞台裏は、キャストもスタッフも和気あいあいでとても楽しそうだ。
ビョルンも自分の顔が潰れた人形を笑いながら写真に収めていて、この様子を観られてよかったと少しだけホッとした。
彼はインタビューのため来日するシーンもあった。
漫画家の池田理代子先生は「 ベルサイユのばら 」のオスカルは、ビョルンをモデルにしたらしい。
池田先生はインタビューの中で「 あなたの外側ばかりを見ていて内側の部分を傷つけたかもしれない 」と話していた。
あまりにも浮世離れした美しい容姿への大きな評価はあれど、中身はとても繊細な青年だ。
彼の幼少期の記憶を辿るシーンでは、母親とのことで涙を流していた。
彼のそういった一面を受け止めてくれる存在はいたのだろうか。
「 ベニスに死す 」から姿を消し、「 ミッドサマー 」で約50年ぶりにスクリーンへと復活を遂げたビョルン・アンデルセン。
彼が拒否したとしても、彼の内側を知りたい人はたくさんいるに違いない。
まとめ
ないものねだりの世界だと思う。
しかし、美しさも地位も名誉も獲得していたビョルンの孤独を理解できる人は、同じ境遇にいる選ばれた人しかできない。
でも今作で映し出されていた彼の姿を観て、1%でもそんな彼を知れたらいいと思ってしまった。