アカデミー賞、エミー賞ドキュメンタリー部門Wノミネート。
アメリカの中でも極めて貧困で錆びれた都市を舞台に、
3人の少年達たちの絶望から再生までを描いた12年間のリアルストーリーです。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
行き止まりの世界に生まれて

公開日
2020年9月4日
原題
Minding the Gap
上映時間
93分
キャスト
- ビン・リュー(監督)
- キアー・ジョンソン
- ザック・マリガン
- ニナ・ボーグレン
- ケント・アバナシー
- モンユエ・ボーレン
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽(BGM)
- リピート度
- グロ度
感想レビュー

まずここ近年の洋画のタイトルですが、センスや感性を疑うイケていないものが多くないですか?
今回紹介するこの「 行き止まりの世界に生まれて 」は、「 行き止まりの世界 」というフレーズが
妙にそそられる斬新な表現だと感じました。
舞台となるイリノイ州ロックフォードは、殺伐とした工業地帯でもあり貧困ムード漂う世間に見捨てられたような都市です。
そんな状況下で暮らしていると内面も貧困になってしまうのでしょうか。
3人の仲間たちはDV、家庭不和、アルコール中毒など劣悪な環境下でさまざまな問題に直面しますが、
唯一の拠り所がスケートボードでした。
冒頭のシーンがとても爽快でかっこよく、すぐさま映像に引き込まれましたね。
この3人のうちの1人、ビン・リューはこの作品で監督デビューも果たしましたが、
主要人物の12年間に渡る感情の起伏などを見事に映像化していました。
中盤まではあくまで客観的で冷めた視点であり正直しんどさを感じたりもしましたが、
後半に差しかかると一転、主人公たちの語りを中心にこのドキュメンタリーの核心を突いた描写が続き目が離せなくなります。
12年間撮り続けるという作業は並々ならぬ精神力、体力を必要としていたと思います。
何より希望に満ち溢れたエンディングに共感しました。
良かった点
その昔、僕にもスケートボードに夢中だった時期があるもので…
ズバ抜けてクオリティの高いスケートシーンを初めてスクリーンで見られたことは貴重な体験でした。
アメリカにこんな都市があるという現実を知る機会を得られたこと、この作品に感謝です。
後半の山場となるビン・リューと母の対峙、母の顔ズームアップ、そこでフィックス、親子の対話…
涙腺崩壊です。
ドキュメンタリーでしか表現できない名シーンでしょう。
悪かった点
あえて挙げるなら、中盤までの展開が失速気味でエモーショナルなエピソードが少なかった点でしょうか。
見どころ
アメリカにおける格差社会の現実、闇を垣間見た気がします。
3人それぞれの過酷な日常。
スケートボードのハイパフォーマンス。
まとめ

ドキュメンタリー映画は、一般的に浸透しにくいカテゴリーだと認識していますが、僕の偏見ですかね?
でも特に今年は幅広い切り口で語ったドキュメンタリー作品が多く公開されました。
第一次世界大戦の記録映像を再構築した「 彼らは生きていた 」
ハリウッドの映画音響にスポットをあてた「 ようこそ映画音響の世界へ 」
イタリアのオペラ歌手ルチアーノ・パヴァロッティの生涯を追った
「 パヴァロッティ太陽のテノール 」などどれも見応えのある秀作ばかりでした。
御多分に洩れず本作も、若者3人の防ぎようのない苦難を、
スケートボードと共に乗り越えた12年間の軌跡という魂の宿った力作であり傑作であると断言できます。
先にご紹介した3作品と異なるのが規模の大小ですが、小規模ならではのリアリティをより身近に感じていただけるでしょう。
ドキュメンタリーの魅力とはズバリ、これ以上の真実はないということであり、また人生観を学べます。