今回は、ペンネーム(@Yoko)さんからの投稿レビューです。
「 ロード・オブ・ザ・リング 」シリーズの監督ピーター・ジャクソンが手がけたドキュメンタリーでして、第一次世界大戦の西部戦線でのイギリス軍の様子を描いた作品です。
もちろん現代で撮影することは不可能ですので、当時の記録フィルムを繋ぎ合わせたり音声や音を加え、さらにはデジタル技術を駆使してモノクロフィルムをカラーで再現しています。
カラーになることによってよりリアルに伝わってくる戦地の状況。
激しく悲惨な戦いだったと語り継がれている西部戦線が、どれほど過酷な戦場で、そこで兵士たちが何を感じていたのかを知ることができます。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
彼らは生きていた

公開日
2020年1月25日
上映時間
99分
キャスト
ピーター・ジャクソン(監督)
予告編
感想レビュー

やはり戦争ドキュメンタリーですから、見ていてどんどんきつくなっていきます。
戦地に向かう前半はまだいいのですが、フランスに渡り西部戦線に到着してからの状況は本当に悲惨です。
しかもそこから映像がカラーになります。
記録フィルムなので、目を伏せてしまいたくなるシーンも数々ありました。
カラーに再現したことで、はっきりと血の色などが分かります。
塹壕の中の茶色の世界の中にある赤い血によって、これが現実だったんだということを思い知らされます。
映画の中で兵士が「 次第に仲間の死体を見ることに慣れてしまう 」と言っていますが、それは映画を見ている私の中にも起きていました。
悲惨な状況をこれでもかというくらいに見せられ最初は画面から目をそらしていたのに、最後は画面の中に広がる現実を目をそらさずに見ていました。
たった99分の映像の中でその悲惨さを受け入れてしまっている自分に驚きながらも、これが戦争なんだと感じました。
人間が持っている普通の感覚を奪ってしまうのが戦争で、それがどれほど恐ろしいことなのかということを実感しました。
見どころ
記録フィルムを繋ぎ合わせているので戦場の様子が続くだけなのかと思っていましたが、「 彼らは生きていた 」にはきちんとストーリーがありました。
開戦から終戦までの兵士たちの気持ちの変化を見ることができるようになっています。
戦争が始まると若者たちはこぞって兵士に志願します。
19歳からの募集なのに、18歳以下の少年たちが嘘をついて兵士になるのです。
しかもそれを国全体が受け入れたほど、開戦当時のイギリス国内は異様な状況でした。
何も分からずに戦地に向かった兵士たち。
遊び感覚の延長で兵士になった若者もたくさんいました。
そんな彼らが戦地で見た現状。
仲間が次々と死んでいく中で恐怖と隣り合わせの生活が何日も続くのです。
しかも塹壕の中は最悪の状態で、人間が生活を送れる場所ではありません。
飛んでくる銃弾だけでなく病気などとも戦わなくてはいけなかったのです。
彼らの肉体だけでなく精神的が壊されてしまうのが画面を見ていると伝わってきました。
そんな彼らのきつくてつらい戦争が終わりイギリスに戻っても、暖かく迎えてくれる場所はありませんでした。
戦争が始まったときはあれだけ兵士になることが当たり前だったのに、戻ってきた場所は別世界だったのです。
普通に暮らしていた市民たちには、戦争の本当の悲惨さを理解できなかったのです。
戦場では命は無価値だということ。
無駄な戦争だったということ。
それは戦地で戦った彼らにしか分からないことだったのです。
戦争を時間軸に沿って見せてくれたことで、兵士に志願した彼らの気持ちの変化が強く伝わってきました。
まとめ

現代の技術を駆使して作られた「 彼らは生きていた 」
映像を鮮明にすることによって、100年前の人の出来事ではなく私たちと同じように普通に暮らしていた人たちの話なんだということが伝わってきます。
どんな戦争映画よりも、反戦のメッセージは強い作品だと思いました。
上映館数が少なさそうなので、多くの人が見てどんどん上映する映画館が増えればいいなと思っています。