「 春をかさねて 」「 あなたの瞳に話せたら 」感想レビュー【 トークイベントレポあり 】

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同時上映の「 春をかさねて 」「 あなたの瞳に話せたら 」の2作品。

監督自身の体験を落とし込んだフィクションと、” その後の私たち “をドキュメンタリーの手法で描いた作品です。

作品のレビューと、監督のトークイベントの様子をお届けします。

目次

春をかさねて

©Sonomi Sato

あらすじ

「妹さんの安否を知ったときのこと、教えていただけますか」。14歳の祐未は、被災地を訪れるたくさんのマスコミからの取材に気丈に応じている。一方で、同じく妹を亡くした幼馴染・れいは、東京からやってきたボランティアの大学生へ恋心を抱き、メイクを始めた。ある放課後、祐未はそんな彼女への嫌悪感を吐露してしまう。二人の女子中学生の繊細な心の揺れを瑞々しく描き出すフィクション。震災遺構として現在は立入禁止となっている大川小学校などで撮影された。
(公式サイトより引用)

公開日

2024年12月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開<3週間限定>

上映時間

45分

予告編

キャスト

  • 佐藤そのみ(製作・監督・脚本・編集)
  • 齋藤小枝
  • 齋藤桂花
  • 齋藤由佳里
  • 芝原弘
  • 秋山大地
  • 安田弥央
  • 幹miki
  • 鈴木典行

公式サイト

春をかさねて

感想レビュー

「 妹さんの安否を知ったときのこと、教えていただけますか 」

2011年、震災から1ヶ月が経つ日、主人公である中学2年生の祐未が、自宅にやってきた複数のマスコミインタビューに答える場面からこの物語は始まる。

「 2日経っても情報がなくて…みすず(妹)は小学校で土に埋まった状態で見つかりました。妹は普段メガネをかけてるんですけど、見つかったときもメガネをかけたままでした 」

よどみなく淡々と答える自分に、祐未の気持ちは複雑だった。

穏やかで感動的な言葉を求められる一方で、胸の内にある喪失感や苛立ちは押し殺さなければならない。

カメラに向かって語る言葉を慎重に選ぶ彼女のことを、親友のれいは「 すごいね、祐未は 」と言う。

祐未もれいも同じ年の妹を亡くした者同士。しかし、互いに妹への感情は異なる。

学習ボランティアとしてやってきている大学生に恋をしているれいは、大学生が勉強を教えに来る前にメイクをする。

妹を亡くして1ヶ月しか経っていないのに、大学生に浮かれているれいに、祐未は心の中では苛立ちを覚えているのに、それもまた表に出さないのが祐未の性格なのだ。

児童数僅か20人の学校で、祐未は一番の成績だ。

ボランティアの人が教室代わりの部屋から帰っても、一人で勉強に励む。それを見た、残っていた男子学生は祐未を励ます。

祐未もまた、れいが恋しているこの男子学生に淡い気持ちを抱いていた。

ある日の帰り道、祐未とれいはささいなことから強い口調になる。

「 私は好きな人も作らないし、結婚もしない。みすずたち、まだ小学生だったけど、これから先、中学生になって色んなこと経験して、好きな人ができて、恋もしたりしたんだろうなって 」

これまで溜めてきたれいへの苛立ち、優等生でいなければいけないと思い込んでいる自分との葛藤、何かが爆発したように祐未は饒舌になった。

それに対し、れいも言い返す。

「 私にはできないもん。別に何も考えてないわけじゃないよ!いいよね、祐未は何でも人の前で話せて、お手本みたいに生きられて、立派で! 」

緊迫したまま、二人の感情はこれを機会にすれ違っていく。

学校を休むことが増えたれい、登校しても保健室にいるれいを見舞おうと思うが、いざとなると逃げてしまう祐未。

映画のラストシーン、被災の現場となった大川小学校でばったり出会う祐未とれい。

あなたの瞳に話せたら

©Sonomi Sato

あらすじ

東日本大震災による津波で児童74名・教職員10名が犠牲になった石巻市立大川小学校。大川小で友人や家族を亡くした当時の子どもたちは、あれから何を感じ、どのように生きてきたのか。それぞれが故人に宛てた手紙を織り交ぜながら、自身も遺族である「私」がカメラを持って向き合う。震災から8年半、時間が変えたものと変わらないもの。書簡形式のナレーションで素朴に語られる言葉に宿る、やわらかな感性に胸を打たれる。
(公式サイトより引用)

公開日

2024年12月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開<3週間限定>

上映時間

29分

予告編

キャスト

  • 佐藤そのみ(監督・撮影・録音・編集)

公式サイト

あなたの瞳に話せたら

【 レポ 】佐藤そのみ監督トークイベント

「 あなたの瞳に話せたら 」のワンシーン ©Sonomi Sato

佐藤監督の思い

「 この2作品を撮り終えたのは2019年です。最初は誰にも見せないでおくつもりでした。封印しておきたいとさえ思っていたときもありました。それはすごく自分の要素を詰め込んでしまったこともあります。この映画を上映することで自分が直視されているような気がして、作った直後はそれが耐えられなかったんですよね。それに内容が内容なだけあって、特に地元の方たちがこれを見たら、すごく傷付いてしまうのではないかという危惧もあって、できるだけ見せないでおこうと思っていました。 せっかく頑張って作ったのに、たくさんの人に協力していただいたのに…。2020年から2年くらい、そういう心境でした。ですが、その後ありがたいことにお声掛けをいただくことが増え、少しずつ全国各地で自主上映会を続けてきました。それが2022年から2年ほどの間の話で、30ヶ所以上です。その中で、だんだんと、自分が直視されているみたいでつらいという思いが薄くなっていきました。作品が、自分のもとから少しずつ離れていってくれるような気がしたんです。作品が色んなところに行きたがっているような感じがして、自分自身もすごく楽になっていきました 」

お話を伺って思ったこと

” 創る “という作業は、「 知ってほしい 」「 理解してほしい 」という自己欲求から始まるものだ。

つまり、自分が主語になる。

そうやって” 創って “いると、途中で恥ずかしさとの闘いになる。

私は今、自分のことを書かなければいけないエッセイがあるのに(それは仕事ではなく、残しておかなくてはいけないという意味)、3週間経っても書けないでいる。

感謝の言葉でいっぱいにしたいのに、途中で愚痴が出てくるのだ。

それさえも直視して、困難を乗り越えたストーリーにすればいいのに、「 これは偽善だ 」と自分が嫌になり、下書きのまま。

誰にも見せたくないと思う。

だが今回、佐藤監督のお話を聞き、改めて、この年末年始に自分を直視してあのエッセイに取り組もうと思った。

執筆者

文・ライター:栗秋美穂

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