【 アジアンドキュメンタリーズ映画祭2024 】「 信仰のつながり 」感想レビュー

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人々の荒波に押し流され、インドの聖なる川でさまざまな人間事情が渦巻く現実を撮影した「 信仰のつながり 」

この物語は、12年に一度行われる世界最大のヒンドゥー教の祭典「 クンブメーラ 」を題材に取り上げたドキュメンタリー映画だ。

沐浴に訪れる約1億人もの人々は、群れをなして大きな大波のごとくうねりを上げ、瞬く間に観客をインドの熱気の中へと巻き込んでゆく。

私たちが何を思うのかはそれぞれだが、一つ確かなことは、これがリアルだということ。

同じ地球上で実際に起こっている事実だということに、魂が揺れ動く。

本記事は、先日行われた「 アジアンドキュメンタリーズ映画祭2024 」の様子とともに、そこで上映された作品の一つ「 信仰のつながり 」について語っていく。

目次

信仰のつながり

あらすじ

12年に一度行われるヒンドゥー教の行事「クンブメーラ」。生涯の功徳が得られるという沐浴のために1億人もの信者が集う55日間を、映像に収めた。捨て子を保護して育てるヨギ(ヨガの達人)に芽生えた、母性のような親心。家出をしてクンブメーラにたどり着きサヴァ(ヨガ修行者)と行動を共にした少年の心の変容。はぐれた息子を1週間以上探し続ける家族の心境。苦悩や歓喜、恐怖、愛情、奉仕など人の持つ感情や行動の全てが、クンブメーラの喧騒と混沌の中に飲み込まれてゆく。この世界に生きる人、この世界を捨てた人それぞれが、この地で何を見つけ、何を得るのか。ヒンドゥー教の奥深さを凝縮した世界がここにある。

公式サイトより引用

原題

Faith Connections

上映時間

117分

予告編

キャスト

  • パン・ナリン(監督・脚本)

公式サイト

信仰のつながり

作品評価

  • 映像
  • 脚本
  • キャスト
  • 音楽
  • リピート度
  • グロ度
  • 総合評価

初の試み「 アジアンドキュメンタリーズ映画祭2024 」

©Faith Connections

2024年6月22日と23日に、渋谷のユーロライブで開催されたアジアンドキュメンタリーズの初の映画祭にお邪魔した。

映画祭には、老若男女問わず実にさまざまな観客が押し寄せ、ドキュメンタリー映画を堪能していった。

私も「 信仰のつながり 」という作品を観に映画祭に訪れたのだが、多くの人たちが列をなして開場を待つその盛況ぶりに、いち映画ファンとして心が熱くなった。

また、各ドキュメンタリー映画の上映後には、作品に縁のあるさまざまなゲストの対談イベントが開催され、今観た作品について語り合う時間が用意されていた。

作品を通して語られる生の声は、遠い国の真実をより身近に感じることができる興味深いひとときだった。

ドキュメンタリー映画に映し出された人々は、私たちとはかけ離れた人生を歩んでいて、知っても知らなくても関係がないかもしれない。

しかし、それでも映像を通して知っておくべき事実があると信じている。

私たちの身近に存在するあらゆる出来事が幸福なのか不幸なのかはさておき、遠い国では同じ現実として多様な文化がうごめいたり、ぶつかり合ったり、交わったりしている。

量産されるフィクションが早急に消費されていく現代社会において、ドキュメンタリー映画に目を向けることは、非常に重要なのではないだろうか。

ドキュメンタリー映画を通して、自分の心の内に流れ込む感情は、決して無駄ではないだろう。

子どもと行方不明とクンブメーラ

私が観賞した「 信仰のつながり 」の監督は、「 エンドロールのつづき 」のパン・ナリン。

彼の映画好きは有名だが、本作では初っ端から、とある作品のオマージュともいえる冒頭を披露し映画ファンを惹き付けた。

テーマは、12年に一度のヒンドゥー教最大の祭典であるクンブメーラ。

ガンジスとヤムナ、そして伝説のサラスバティの3つの川が合流する聖地、サンガムで行われる沐浴の祭典だ。

世界最大ともいわれる宗教祭のクンブメーラは、約1億人もの人々が激流のごとく押し寄せ、数日間で十数万人もの行方不明者を出す。

そんな世界最大の祭典であるクンブメーラの異様な世界を、3人の人物を主軸にありありと映し出しながら物語は進んでゆく。

一人は連れ去られた子どもを何日も探し続ける母親で、一人は嘘つきの脱走児の少年。

そしてもう一人は、捨て子を育てながら暮らすヨガを極めしサドゥだ。

本作には共通して“ 子ども ”というキーワードが潜んでいるのだが、

これはナリン監督が最初に出会った“ 捨て子を育てながら暮らすサドゥ ”の存在が大きいと言える。

ナリン監督は、このサドゥに出会ってからドキュメンタリーの方向性が定まったという。

確かに子どもをテーマにすることで、より混沌としたクンブメーラの世界が映し出されていたと感じる。

祝福ムードの明るいお祭りの裏で幼い子どもが連れ去られながらも、平然と続いていくクンブメーラ。

そのギャップに、私たちは恐ろしさと異様な空気感を感じざるを得ないのだろう。

人間の大波に何を見るか

未だに子どもの行方不明者が多いインドでは、その数十万人とも言われている。

しかし真相は定かではなく、むしろそれよりも多いのかもしれない。

なにしろ作中で語られる行方不明者の数は、たった数日間で既に13万5千人なのだから。

それほどまでに多くの行方不明者を出しながらも、クンブメーラの祭りは続く。

人々の激流に流されてしまった者、流れに身を任せて彷徨う者、荒波に揉まれて行き着いた者のそれぞれの物語が渦巻き、

神々と悪魔が手を組み海をかき混ぜるがごとく無秩序が蔓延る。

この混沌とした人間の大波の中、一体何を感じるのだろうか。

信仰というたった一つの共通点でのみ1億もの人々が集まり、繋がる。

この事実を目の当たりにして、自分の置かれている環境とのギャップに価値観が広がることは間違いないだろう。

フィクションとは違ったドキュメンタリー映画ならではの濃厚な世界観に、この作品を通してどっぷりと浸かってみてはいかがだろうか。

執筆者

文・ライター:みくと

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