藤井道人監督×豪華キャスト競演による温かくて優しい魂の鎮魂歌。
世界的パンデミックに加え、自然災害が多いこの日本にいま、必要な映画です。
パレード

あらすじ
大災害の最中、互いに離れ離れになった息子を捜す母親は、すでに自分が死んでしまった事実を知る。今の世界がこの世に未練を残した者たちが集まる場所だということを悟るのであった。
公開日
2024年2月29日
上映時間
132分
予告編
キャスト
- 藤井道人(監督)
- 長澤まさみ
- 横浜流星
- 森七菜
- 黒島結菜
- 中島歩
- 若林拓也
- 北村有起哉
- 深川麻衣
- 菅田俊
- でんでん
- 舘ひろし
- 木野花
- 奥平大兼
- 田中哲司
- 寺島しのぶ
- リリー・フランキー
- 康すおん
- 高石あかり
- 上原実矩
- 岩川晴
- 三浦健人
- 大政凛
- 藤崎ゆみあ
- 水間ロン
- 花瀬琴音
- 寺田藍月
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー

主要キャストから脇役まで豪華俳優陣が出揃い、ネット配信作としては異例の規模で宣伝もしていた。
企画倒れを心配していたが、そんな杞憂を吹き飛ばす豪華キャストを活かしきった完成度の高い作品。
長澤まさみは浮き沈みの激しい時期も長かったが、2022年のドラマ「 エルピス 」辺りから演技力と美貌に磨きがかかり、それが本作にも反映されていた。
マイケルがパレード前に必ず神社に参拝していたように、日本は八百万(やおよろず)の神々の国だから、亡くなった人が“その先”に行く前に大切な人を傍で見守っているということもあり得るのではないだろうか。
大切な人を亡くした人々がいわゆる「 夢枕 」をキッカケに立ち直ろうと思えるのも、こういうことなのだろう。
後悔を受け入れるには膨大な時間が必要だから、仲間がいることや“歩いて探す”パレードはとても有効的だ。
ただ、悔やんで動かずにいるよりも、行動した方が何事も消化されやすい。
宮城県各地で撮影されたという夜のパレードは、満点の星空と弔いの列に似た無数の灯りがとても幻想的で美しい。
廃墟(宮城県大崎市古川)の遊園地を復活させて撮影しているのも、本作のテーマと合っていて素敵。
亡くなってなお諦めきれずに行動する彼らをみていて、今、生きるのが苦しいと感じている人は、人生を諦めきれない人だから、
死んでしまったらもっと苦しくて諦められなくなるのではないかと気付かされた。
想いを交わすことが難しい相手を一途に想い続けることは苦しい。
けれど、私たちが生きていられる時間は短い。
今日、明日終わることだってある。
自分も、大切な人も。
それはわかっているはずなのに、殺伐とした日常に押し潰され、動けなくなってしまうことがある。
そんな人々に活を入れ、やり尽くしたと言えるよう、精一杯生きなければと再び立ち上がる力をくれる救いの映画だった。
ラストにパレードのあるメンバーが仲間たちの希望をつなぐ役割を果たすのだが、このような温かなサプライズがあるから、先の読めないオリジナル脚本は面白い。
エンドロールまで慈愛に満ちていて、野田洋次郎の書き下ろし曲「 なみしぐさ 」も皆に降り注ぐ暖かな春の雨のように沁みわたり、私たちに深い余韻を残す。
藤井監督のオリジナリティが溢れている、今、出会えて良かった逸作だ。