血沸き、肉躍る音楽はこうして作られていた!
文化・精神をも創造し、1960年代から発展し続ける音楽レーベル・モータウン。
今こそ目撃すべき熱狂の音楽ドキュメント。
メイキング・オブ・モータウン
あらすじ
日本を含む世界の音楽に影響を与え続ける音楽レーベル、モータウン。2019年に創設60周年を迎えたモータウンは、スティービー・ワンダー、マービン・ゲイ、ジャクソン5など数多くのスターを輩出するまでに成長したが、その出発点はミシガン州デトロイトの一軒家にあった。創設者ベリー・ゴーディJr.が始めたアメリカン・ドリームの道のりを、本人や盟友への密着取材を通し、貴重なインタビュー映像と共に振り返っていく。
公開日
2020年9月18日
原題
The Making of Motown
上映時間
112分
キャスト
- ベンジャミン・ターナー(監督)
- ゲイブ・ターナー(監督)
- ベリー・ゴーディー
- スモーキー・ロビンソン
- スティーヴィー・ワンダー
- ジョン・レジェンド
- ジェイミー・フォックス
予告編
考察・感想レビュー
好きだった点
音楽好きならば放っておけない、60年代のモータウンの熱狂的な音楽の魅力を存分に味わえる点。
多くの音楽ドキュメントは、ミュージシャンに焦点があたりがちです。
しかし、本作では音楽に関わる様々な立場の優れた仕事を見られる点が興味深い(情熱大陸のよう)
優れた音楽を見つけ、作り、支え、伸ばし、発展させる。
それぞれの立場が信頼し合い、プラスに作用してる営みは、なるほどなと感じ入るものがありますよ。
モータウンの創立者のベリー・ゴーディーが(出身地デトロイトならではの)
フォードの組み立て工場で学んだ最強の組織作りというシナリオに沿い、偉大な音楽レーベルの成長過程を辿る点はユニーク。
会社の研修などでも使えるのでは?
と思ってしまいます(これが研修資料だったら居眠りしないなと思いますね)
嫌いだった点
他でもないモータウンのリーダーであるベリー・ゴーディーは、モータウンの枠をきっちりと作り上げ、
そこからはみ出すものや自分に逆らう者に対して容赦ないところがあり、人としては厄介だなあと感じます(それが成功の秘訣でもあるけれど)
見どころ
なんといっても、アーティストたちのライブシーン。
映画館の音響で見ると身震いするほど熱狂的で、まるで映画のワンシーンのようなステージはとにかく圧巻。
客席で踊りだしたくなります。
「 音楽に政治を持ち込む 」というタブーに関して。
ベトナム戦争の最中、恋愛や希望といったキラキラしたものだけを歌おうというコンセプトのモータウンにNOをつきつけ、
ミュージシャン自身が、自分たちは自分たちの音楽を、社会に対する影響力を使ってやっていきたいんだと表明したのは頼もしい限りです。
恐らく、これは現在の日本でも似たようなことが起きていて、「 ミュージシャンが政治を音楽に持ち込むな 」
など音楽に関わる人間の社会的な言動を歓迎しない人たちが大勢いるでしょう。
エンターテイメントなんだから、その間は夢を見ていたいという気持ちは分からなくもないです。
しかし、私たちは、楽しむ・喜ぶ・美しいものを見て感動するということと同時に、悲しみ・苦しみ・現実に涙することも容赦なく抱えて生きていますね。
辛いものを見ず、なかったことにしてしまうことは、表面上の喜びしか生まないのではないでしょうか。
まとめ
「 伝説を創るノウハウ解禁 」という触れ込みだけれど、ノウハウが明らかになったところで、やはりここに集った才能は奇跡であり、
そうそう再生できるものではないと思います。
この伝説は、単に音楽的才能に優れたミュージシャンが集まっただけではない点にポイントがあると感じました。
ミュージシャンも社会を構成する1人の人間であり、自分はどうあるべきか?
自分の力を生かして世の中に対して何をやるのか?
を自問するという信念を持った人たちだからこそ、ここまで偉大な文化を築いたのだろうと思うのです。
ベリー・ゴーディーが築き上げたモータウン帝国は「 モータウンお馴染みのきらびやかで美しい世界 」以外をかつては排除していたけれど、
意思あるミュージシャンの行動により、その壁が取り払われていくというのは映画よりも映画的だと感じました。