文・ライター:@キングギドラ
吸血蛾(1956)
とある昆虫館を取り巻く連続殺人!
狼男に扮した快楽殺人鬼の蛮行を金田一は阻止することが出来るのか?
後に怪談映画の傑作と呼ばれる「 東海道四谷怪談 」や「 地獄 」を撮った中川信夫監督による怪奇なミステリーの世界を堪能できます。
主要な登場人物&キャスト
- 中川信夫(監督)
- 池部良(主人公:金田一耕助)
- 小堀明男(警部:等々力大志)
- 久慈あさみ(ファッションデザイナー:浅芽文代)
- 有島一郎(快楽殺人鬼:村越徹)
- 東野英治郎(浅芽文代の同棲相手:伊吹徹三/江藤俊作)
- 塩沢登代路(浅芽会のリーダー格:滝田加代子)
- 万里陽子(浅芽会のモデル:有馬和子)
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
主演の池部良は、原作に登場する冴えないボサボサ頭の風来坊とはかけ離れた、ジェームズ・ボンドの様なダンディで頼れる男です。
最も金田一らしくない人が金田一を演じています。
今回の事件は、フランスから帰国した浅芽文代の元に、狼男に扮した人物から歯形の付いたリンゴが送られる所から始まります。
その日を境にモデル連続殺人事件が起こるという物語なのですが、なんと金田一は三人のモデルが殺害されるまで登場しません。
狼男の次の標的となった四人目のモデルの救世主的な存在として、中盤から登場するのです。
先述した通り今回の金田一は、頼り無いが推理力は抜群の男ではなく、むしろシャーロック・ホームズや明智小五郎の様な探偵ヒーローとして描かれています。
また、本作はモノクロ映像ということで、現代では出せない独特の不気味さが漂っています。
特に場面カット時に使用される切断された足がダンスをするシーンは怖すぎます。
そして舞台セットにも注目です。
登場する昆虫館の美術設計や不気味な殺人現場は、原作を忠実に再現しています。
仮に今の技術で完全再現しても、この妖艶でダークな作風は二度と表現できないでしょう。
終盤の舞台となった廃ビルについても、クライマックスとして最適なロケーションで、サーチライトが警官と犯人を照らす構図が印象的です。
ラストでは銃で応戦する狼男を金田一が追いかけるといった、アクション展開に突入します。
怪奇な殺人現場と犯人像がある為、かろうじて本作を金田一作品と思って観ることができました。
全体的にハードボイルドが強い作品となっています。
トリビア
浅芽文代率いるグループの名称が原作では「 虹の会 」だが、映画では「 浅芽会 」に変更されている。