タイタニック(1997)

原題(英題)
Titanic
公開日
1997年12月20日
上映時間
189分
キャスト
- レオナルド・ディカプリオ
- ケイト・ウィンスレット
- ビリー・ゼイン
- キャシー・ベイツ
- フランシス・フィッシャー
- ビル・パクストン
- バーナード・ヒル
- ジョナサン・ハイド
- ビクター・ガーバー
- デビッド・ワーナー
- ダニー・ヌッチ
- グロリア・スチュワート
- スージー・エイミス
- ヨアン・グリフィズ
- ジャネット・ゴールドスタイン
コメント
改めて説明するのもバカバカしくなるほどの超有名作品。
タイトルの通り、20世紀最大の海難事故となった豪華客船タイタニック号の悲劇を、ラブ・ストーリーの要素を交えて描いたスペクタクル超大作である。
劇的な出会い方をした男女が悲劇の離別をする悲恋ものロマンスで、「 ありきたりで退屈。底の浅い話 」と腐すのは簡単だが、それだけで本作を評価してしまうのはあまりにももったいない。
話そのものに美点を見出すよりも、見るべきものはやはり驚くべき映像美だろう。
相変わらずの圧倒的な映像美で、絢爛豪華な目のごちそうのような映画である。
特に氷山の衝突から沈没までの映像表現には息を呑む。
感覚刺激をここまで徹底的に追及して達成できる映像作家は、映画の歴史上でもほとんどいないだろう。
ところで、柳田理科雄氏の「 空想科学映画読本 」で、タイタニック号沈没の描写が科学的に検証されていたが、
タイタニック号の巡航速度から沈没時の船体の傾く角度に至るまで、本作の描写は科学的に極めて正確とのことである。
こういった描写の正確性はスタンリー・キューブリックを思わせる。
柳田氏はキューブリックの「 2001年宇宙の旅 」(1968)も同書で取り上げているが、そちらについても描写が科学的に正確であることを絶賛している。
キューブリックの初期衝動は芸術で、キャメロンはエンタメだと思うが、彼らは「 完璧主義者 」という点ではよく似ている。
アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む11部門を受賞している。
アバター(2009)

原題(英題)
Avatar
公開日
2009年12月23日
上映時間
162分
キャスト
- サム・ワーシントン
- ゾーイ・サルダナ
- シガニー・ウィーバー
- スティーブン・ラング
- ミシェル・ロドリゲス
- ジョバンニ・リビシ
- ジョエル・デビッド・ムーア
- CCH・パウンダー
- ウェス・スチュディ
- ラズ・アロンソ
- ディリープ・ラオ
コメント
「 タイタニック 」以降、長きにわたって沈黙したジェームズ・キャメロンの12年ぶりの監督作。
架空の惑星・パンドラを舞台に、元兵士ジェイクが現地民族のナヴィとの交流を通して、
パンドラの生命を脅かす自身の任務に次第に疑問を抱くようになり、星の運命を決する選択を迫られていくという物語である。
物語の大枠がアカデミー賞受賞作の「 ダンス・ウィズ・ウルブズ 」(1990)にそっくりと批判もされたが、ヒット作のストーリーは往々にして似るものである。
キャメロンの作る物語が王道を行っている証拠だろう。
同様の批判は「 ラスト サムライ 」(2003)にもあった。
前作から12年が経過したことで、映像表現はさらに進化している。
キャメロンはもともと奥行きのある画を好む映像作家だが、本作はデジタル3D作品であり、3Dであることの特性が存分に活かされた表現が用いられている。
完璧主義者のキャメロンらしく、世界観も詳細に作りこまれており、ナヴィという架空の種族を生み出すにあたり、ナヴィの言語まで創作している。
パンドラの世界観はガイア理論にも似た成り立ちで、どことなく大ヒットゲーム「 ファイナルファンタジーVII 」を思わせる。
批評的にも興行的にも成功し、アカデミー賞では作品賞、監督賞を含む9部門にノミネートされた。
主要部門受賞は逃したものの、美術賞、撮影賞、視覚効果賞の3部門を受賞している。
アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022)

原題(英題)
Avatar: The Way of Water
公開日
2022年12月16日
上映時間
192分
キャスト
- サム・ワーシントン
- ゾーイ・サルダナ
- シガニー・ウィーバー
- スティーブン・ラング
- クリフ・カーティス
- ジョエル・デビッド・ムーア
- CCH・パウンダー
- イーディ・ファルコ
- ジェマイン・クレメント
- ジョバンニ・リビシ
- ケイト・ウィンスレット
- ブリテン・ダルトン
- ジェイミー・フラッターズ
- トリニティ・ジョリー・ブリス
- ジャック・チャンピオン
- ブレンダン・カウエル
- ベイリー・バス
- フィリップ・ジョルジョ
- デュアン・エバンス・Jr.
- ディリープ・ラオ
コメント
「 アバター 」の13年ぶりの続編。
映像表現はさらに進化し、惑星パンドラを主人公・ジェイクたちが縦横無尽に駆け巡る。
左右、前後だけでなく、上下の動きまでダイナミックに取り入れた表現で、参加型アトラクションの中にいるような没入感を味わえる。
世界観の描写も変わらず詳細に至っている。
劇中の描写を見ると、ナヴィは狩猟採集民族で小規模なコミュニティを形成し、人類のアニミズム信仰に似た原始宗教を信仰していることが分かる。
本作ではジェイクが妻子持ちになり、家庭を築いているためナヴィのコミュニティに関する描写が増えている印象である。
ナヴィには複数の部族が存在し、ジェイクたち森の民だけでなく海の民が存在することも劇中で明らかになっている。
今回は海が主な舞台になっており、惑星パンドラには海にも豊かな生態系が築かれていることも分かる。
キャメロンは今後のシリーズを通じてパンドラの世界を広げていくつもりなのだろう。
続編の本作も高く評価され、アカデミー賞では作品賞を含む4部門にノミネートされた。
最終的に視覚効果賞を受賞している。
「 アバター 」シリーズは2025年に3作目となる「 アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ 」が公開予定。
シリーズ4作目は2029年、5作目は2031年公開予定で、「 アバター 」シリーズ以外の作品への着手はそれ以降になるとのことである。
ドキュメンタリー作品について
アルフォンソ・キュアロンは「 ゼロ・グラビティ 」(2013)の圧倒的映像美で、アカデミー賞の最優秀監督賞を受賞したが、
同作で使われた表現はあまりにも革新的で、キュアロンの構想する表現に技術が追いつくまで5年待つことになった。
キュアロンは技術的困難を極めた同作のプロジェクトを進めるにあたり、2人の映画監督にアドバイスを仰いでいる。
一人はデヴィッド・フィンチャーで、もう一人がジェームズ・キャメロンである。
2人の見解は共通しており「 現時点では技術がないので不可能 」だった。
キャメロンはさらに「 5,6年後なら可能 」との見解を示しているが、結局キュアロンは5年待ったため、キャメロンの見解はほぼ正確だったことになる。
自身も第一線の映画監督であるキュアロンがわざわざ技術的見解を求めるのだから、それだけキャメロンの技術屋としての能力が優れているのだろう。
実際、キャメロン自身は新しいテクノロジーの導入に非常に積極的な監督である。
彼は2本のドキュメンタリー映画と1本のドキュメンタリーTV番組を監督している。
映画「 ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密 」(2003)と「エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ」(2005)はどちらも深度3,000mを超える深海で撮影を敢行しているが、
深海は光も音も存在しない極めて特殊な環境であり、その世界をとらえることは容易でない。
また、ディスカバリー・チャンネル制作の「 海底の戦艦ビスマルク 」の監督をゲイリー・ジョンストンと共同で担当している。
こちらも舞台は深海である。
当時の最新技術を駆使して撮影されており、技術屋としてのキャメロンの凄みを感じることができる。
その他の活動
キャメロンは私生活では5度結婚しているが、3番目の妻となったキャスリン・ビグローは離婚後に「 ハート・ロッカー 」(2008)で、アカデミー賞監督になっている。
ビグロー監督の「 ストレンジ・デイズ 1999年12月31日 」(1995)は、キャメロンがジェイ・コックスと共同で脚本を担当しており、後のアカデミー賞監督2人が監督、脚本でコラボした豪華な陣容になっている。
同作は、女性でありながら男性より男性らしいビグローの骨太な芸風を堪能することができる、ハードボイルドSFの佳作である。
マーティン・スコセッシ、リドリー・スコット、デヴィッド・フィンチャー、クエンティン・タランティーノ、ギレルモ・デル・トロなど他の大物映画監督の例もある通り、キャメロンもテレビシリーズの監督を手掛けることがある。
キャメロンが原案、製作総指揮に名前を連ねた「 ダーク・エンジェル 」では、第2シーズン第21話の監督をキャメロン自らが担当している。

文・ライター:ニコ・トスカーニ