90年代初期のイギリス映画低迷期に、彗星の如く現れ、ハリウッドとは一味違う独特な映像感覚と音楽のセンスで映画史を彩り、印象に残る作品を作り続けるダニー・ボイル。
彼の作品は当たり外れが多いとも囁かれますが、出世作の衝撃が大きく、アカデミー賞受賞の栄光も手にした監督への期待が大きいからこその声だと思います。
それぞれの作品に絶妙な味わいがあるので、先入観なしに見ると、他の監督作品には見られない映画体験ができるでしょう。
この記事では、ダニー・ボイルの監督作品を年代順に紹介していきます。
ダニー・ボイル作品一覧
ダニー・ボイルの監督作品は以下の通り。
- シャロウ・グレイブ(1994)
- トレインスポッティング(1996)
- 普通じゃない(1997)
- ザ・ビーチ(2000)
- ストランペット(2001)
- ヴァキューミング(2001)
- 28日後…(2002)
- ミリオンズ(2004)
- サンシャイン2057(2007)
- スラムドッグ$ミリオネア(2008)
- 127時間(2010)
- トランス(2013)
- スティーブ・ジョブズ(2015)
- T2 トレインスポッティング(2017)
- イエスタデイ(2019)
シャロウ・グレイブ(1994)
原題(英題)
Shallow Grave
公開日
1996年11月9日
上映時間
88分
キャスト
- ユアン・マクレガー
- クリストファー・エクルストン
- ケリー・フォックス
- ケヴィン・ピー・スコット
- キース・アレン
コメント
ダニー・ボイル監督のデビュー作。
アパートで共同生活を送っていた3人の若者が、4人目の同居人が大金を失くすことをきっかけに、関係性が崩れていきます。
のちに出世作の顔となるユアン・マクレガーが、生き生きと役を演じているのが見どころでしょうか。
斬新で若々しいカメラワークは、30年経った現在から見ても、ほとんど色褪せていません。
第48回英国アカデミー賞を受賞していますが、まだまだこれから成長していくだろうという、可能性の断片が見られるのも楽しいです。
スピルバーグ監督で例えると、「 ジョーズ 」(1975)で名を馳せる前のデビュー作「 激突! 」(1971)のような位置付けと言えるかもしれませんね。
トレインスポッティング(1996)
原題(英題)
Trainspotting
公開日
1996年11月30日
上映時間
93分
キャスト
- ユアン・マクレガー
- ユエン・ブレムナー
- ジョニー・リー・ミラー
- ケビン・マクキッド
- ロバート・カーライル
- ケリー・マクドナルド
- ピーター・ミュラン
- ジェームズ・コスモ
- アイリーン・ニコラス
- スーザン・ビルダー
- ポーリーン・リンチ
- シャーリー・ヘンダーソン
- スチュワート・マッカリー
- アービン・ウェルシュ
- デイル・ウィントン
- キース・アレン
- ケビン・アレン
コメント
ドラッグ中毒の若者たちの青春を描き一斉を風靡した、監督の出世作といえるでしょう。
ダニー・ボイル監督という名前を耳にして、本作を思い浮かべる映画ファンは少なくないと思います。
アーヴィン・ウェルシュによる原作小説もセンセーショナルで、過激な表現という点では、原作の方が上です。
ただし、映画版では原作の世界観を見事に表現し、娯楽映画はハリウッドだけではないということを世界に知らしめた、いい意味での問題作に仕上がりました。
デビュー作でも活躍したユアン・マクレガーの演じる語り部・レントンが、「 未来を選べ 」に続く饒舌なリリックをかましながら、仲間たちと軽快なブリティッシュ音楽に乗って走っているシーン。
その疾走感こそが、本作の魅力の一つだと思います。
イギー・ポップの「 ラスト・フォー・ライフ 」を筆頭に、時代を切り取った音楽たちが、どん底を生きる若者たちの悲惨な現実と、ドラッグによるトリップの情景を立体的に彩っています。
スコットランドとイングランドの関係、ヨーロッパの過去と未来が垣間見られると書けば、大袈裟でしょうか。
監督は、のちの2012年ロンドンオリンピックで開幕式の演出を担当しているので、あながち外れてはいないでしょう。
サウンドトラックだけでも聴く価値ありですよ。
筆者が、高校時代から自分の部屋の壁に「 トレスポ 」のポスターを貼り付け、サントラを聴きながら原作を読み、「 トレインスポッター 」を称していたのは、ここだけの話。
第49回英国アカデミー賞脚色賞を受賞。
普通じゃない(1997)
原題(英題)
A Life Less Ordinary
公開日
1998年6月27日
上映時間
103分
キャスト
- ユアン・マクレガー
- キャメロン・ディアス
- ホリー・ハンター
- デルロイ・リンドー
- イアン・ホルム
- モーリー・チェイキン
- ダン・ヘダヤ
- イアン・マクニース
- トニー・シャルーブ
- スタンリー・トゥッチ
- K・K・ドッズ
- デビッド・スティフェル
コメント
タイトルはイギリスの詩人ジョン・ミルトンから引用されています。
ダニー・ボイルのセンスが光る不条理なラブコメです。
まるで少年ジャンプの読み切りマンガのような内容ですが、90年代の音楽と映像の魅力があり、若かりしキャメロン・ディアスとユアン・マクレガーの可愛らしさが魅力的でした。
ダニー・ボイル版「 トゥルーロマンス 」という印象ですね。
ザ・ビーチ(2000)
原題(英題)
The Beach
公開日
2000年4月22日
上映時間
119分
キャスト
- レオナルド・ディカプリオ
- ティルダ・スウィントン
- ビルジニー・ルドワイヤン
- ギョーム・カネ
- ロバート・カーライル
- パターソン・ジョセフ
- ラース・アーレンツ=ハンセン
コメント
バンコクを旅するリチャード(レオナルド・ディカプリオ)は、安宿で奇妙な男から伝説のビーチの話を耳にし、地図を手に、そのビーチを目指します。
一時のバックパッカー、自分探しの一人旅ブームがあった時代の、得も言われぬ高揚感がよく表れています。
最近の映画だと「 ミッドサマー 」(2019)系の話といえるでしょうか。
楽園を目指して共同体と過ごすうちに、非日常から狂気へと進んでいく感じです。
若いディカプリオの演じる、独りよがりな主人公を好きになれるかどうかも、ポイントの一つでしょう。
本作と同名のホラー映画がありますが、別物ですので探す際は要注意です。