今回は、既に20年以上監督作が途絶え、今や監督としては半ば引退状態にあるジョージ・ルーカスのフィルモグラフィーを改めて振り返っていく。
ジョージ・ルーカスについて

1944年、アメリカ合衆国カリフォルニア州モデスト出身。
南カリフォルニア大学スクール・オブ・シネマ(現スクール・オブ・シネマティック・アーツ)で映画を学ぶ。
在学中に制作した短編「 電子的迷宮 THX 1138 4EB 」(1967)が数々の賞を受賞したことをきっかけに、フランシス・フォード・コッポラ監督の「 フィニアンの虹 」(1968)にスタッフとして参加する。
翌年にはコッポラとアメリカン・ゾエトロープ社を設立し、1971年に同社の第1作として「 THX-1138 」(1971)で長編監督デビューを果たす。
その後、自身の製作会社ルーカス・フィルムを立ち上げ「 アメリカン・グラフィティ 」(1973)を発表する。
制作費100万ドルにも及ばない低予算作品ながら、興行・批評の両面で成功を納め、ルーカス自身もアカデミー賞の監督賞候補になる。
続いて発表した「 スター・ウォーズ 」(1977)がさらなる大ヒットを記録。
スター・ウォーズシリーズはドル箱シリーズとなり、ルーカスの手を離れた現在もスピンオフ、続編、前日譚が製作され続けている。
以降、ルーカス自身が監督をすることは極端に少なくなり、監督作はスター・ウォーズのエピソード1~3(1999〜2005)のわずか3本に留まっている。
現在も同シリーズには関わっているが、その役割は「 製作総指揮 」「 原作 」「 原案 」など限定的なものになっている。
ジョージ・ルーカス作品一覧
ルーカスの全作品は以下の通り。
- THX-1138(1971)
- アメリカン・グラフィティ(1973)
- スター・ウォーズ(1977)
- スター・ウォーズ エピソード1 / ファントム・メナス(1999)
- スター・ウォーズ エピソード2 / クローンの攻撃(2002)
- スター・ウォーズ エピソード3 / シスの復讐(2005)
THX-1138(1971)

原題(英題)
THX 1138
上映時間
86分
キャスト
- ロバート・デュバル
- マギー・マコーミー
- ドナルド・プレザンス
- ドン・ペドロ・コリー
コメント
記念すべき巨匠ジョージ・ルーカスのデビュー作。
業界入りのきっかけとなった学生時代の短編「 電子的迷宮 THX 1138 4EB 」が元になっている。
主演は後に「 ゴッドファーザー 」で有名になるロバート・デュバル。
ジョージ・オーウェルの小説「 1984 」を思わせるコンピューターに支配されたディストピア世界を舞台に、自らの意志に目覚め愛を育んだ男女が逃亡を決意する物語である。
白を基調にした無機質で均質的なデザインのSF的な世界観が素晴らしい。
後の「 スター・ウォーズ 」に通じるセンスを感じさせる。
残念ながら興行的には成功せず、日本では劇場未公開だったが、後にルーカスが有名監督になり、ロバート・デュバルがスターになったことで知名度に引っ張られる形でソフト化された。
「 ミッション:インポッシブル 」シリーズ(オリジナルのテレビシリーズは「 スパイ大作戦 」の名前で知られる)のテーマ曲で知られるラロ・シフリンが音楽を担当、
製作総指揮に名前を連ねるフランシス・フォード・コッポラが資金提供するなど意外な大物が参加している。
アメリカン・グラフィティ(1973)

原題(英題)
American Graffiti
公開日
1974年12月21日
上映時間
112分
キャスト
- リチャード・ドレイファス
- ロン・ハワード
- ポール・ル・マット
- チャールズ・マーティン・スミス
- キャンディ・クラーク
- マッケンジー・フィリップス
- シンディ・ウィリアムズ
- ウルフマン・ジャック
- ハリソン・フォード
コメント
ジョージ・ルーカスの監督2作目。
1作目とは大きく方針転換し、半自伝的なフィクションラインの低い作品になっている。
そもそもの監督作品が少ないルーカスだが、本作は唯一の非SF作品である。
1962年のカリフォルニア州モデスト(ルーカスの生まれ故郷)を舞台に、多くの登場人物たちが旅立ちを翌日に控えた夕刻から翌朝までの出来事を追う群像劇である。
点描を積み重ねたようなラフな作りで、どこにでもありそうな田舎町の、どこにでもいそうな若者たちが登場する。
当時のアメリカ人は郷愁を感じたことだろう。
若者たちにとっての旅立ち前の「 特別な一夜 」を切り取って、その空気感を表現した演出が素晴らしい。
一応はカート(リチャード・ドレイファス)を主人公としているが、群像劇的要素が強く、全員が主人公とも言える。
当時まだ無名だったが、後にルーカスのスター・ウォーズシリーズで人気キャラクターを演じ遅咲きスターになったハリソン・フォード、
後に映画監督に転身しアカデミー賞を受賞するロン・ハワードなど、出演者に意外な顔を見つけることができる。
興行的にも批評的にも大成功し、第46回アカデミー賞で作品賞を含む5部門の候補になった。
ルーカス自身も監督賞と脚本賞の候補になっている。
スター・ウォーズ(1977)

原題(英題)
Star Wars
公開日
1978年6月30日
上映時間
121分
キャスト
- マーク・ハミル
- ハリソン・フォード
- キャリー・フィッシャー
- ピーター・カッシング
- アレック・ギネス
- アンソニー・ダニエルズ
- ケニー・ベイカー
- ピーター・メイヒュー
- デビッド・プラウズ
- ジェームズ・アール・ジョーンズ
- フィル・ブラウン
- シェラ・フレイザー
- エディ・バーン
- デニス・ローソン
- ギャリック・ヘイゴン
コメント
ご存じの通り、映画という枠を超え、社会現象を巻き起こした伝説的シリーズの第1作。
後に前日譚が制作されたことから「 スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望 」と改題されている。
あまりにも有名すぎるため、物語を説明する必要があるのか疑念が生じるが、特別な力「 フォース 」を持つ青年ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)が運命に導かれるように仲間と出会い、
反乱軍の一員として悪の帝国に立ち向かう特大スケールのSF大作である。
SF映画の歴史を一歩先へと進めた革新的な作品であり、これ一本でもルーカスの名前は映画史に残るだろう。
精巧な模型、ストップモーションアニメ、コンピューター制御撮影など当時最新鋭の技術を大量投入した特撮は今見ても見応えがある。
ルーカスは技術の開発にも熱心なフィルムメーカーであり、本作に先立ち1975年にVFX工房インダストリアル・ライト&マジック(ILM)を創設している。
「 セブン 」(1995)「 ソーシャル・ネットワーク 」(2010)「 Mank マンク 」(2020)などで知られる映画監督のデヴィッド・フィンチャーは元ILMのアニメーターで、
旧3部作の完結編である「 スター・ウォーズ エピソード6 / ジェダイの帰還 」(1983)に参加している。
本作は興業、批評の両面で大成功を納め、第50回アカデミー賞で作品賞を含む10部門の候補になった。
以降、ルーカスは続編の監督を自ら務めず、しばらく監督作が途絶える。