1992年の「 エイリアン3 」で監督デビューし、その後「 セブン 」や「 ファイト・クラブ 」で世界屈指のヒットメーカーに上り詰めたデヴィット・フィンチャー監督。
2020年の11月頃に、Netflixと独占契約を結んだことが報じられたことでも話題となった。
彼が今までに手掛けてきた映画は、どれも想像的で驚きに満ち溢れている。
役者の演技や演出に妥協せず、何十回も撮り直しを行うほど徹底した映画作りは、作品の完成度に直結していると言わざるを得ない。
そんなフィンチャー作品たちを、本記事では一から振り返っていく。
彼の辿った監督業の軌跡を知ることで、新たな気付きや楽しみを見出していただけるとありがたい。
フィンチャー作品を見たことがある人もそうでない人も、ぜひこれを機に気になる作品を鑑賞してみてほしい。
きっと今までとは一味違った映画の世界を堪能できることだろう。
デヴィッド・フィンチャー作品一覧
デヴィッド・フィンチャーの監督作品は以下の通り。
- エイリアン3(1992)
- セブン(1995)
- ゲーム(1997)
- ファイト・クラブ(1999)
- パニック・ルーム(2002)
- ゾディアック(2007)
- ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008)
- ソーシャル・ネットワーク(2010)
- ドラゴン・タトゥーの女(2011)
- ゴーン・ガール(2014)
- Mank マンク (2020)【 Netflixオリジナル 】
- ザ・キラー(2023)【 Netflixオリジナル 】
エイリアン3(1992)
原題(英題)
Alien³
公開日
1992年8月22日
上映時間
115分
キャスト
- シガニー・ウィーバー
- チャールズ・S・ダットン
- チャールズ・ダンス
- ポール・マッギャン
- ブライアン・グローバー
- ラルフ・ブラウン
- ダニー・ウェブ
- クリストファー・ジョン・フィールズ
- ホルト・マッキャラニー
- ランス・ヘンリクセン
- ピート・ポスルスウェイト
コメント
デヴィッド・フィンチャー初の監督作品は、SF映画の名作である「 エイリアン 」(1979)と「 エイリアン2 」(1986)に続く第3弾、「 エイリアン3 」だ。
当時、CMやMVを作成していたフィンチャーが、降板続きの監督の“ 任 ”をまかされる。
しかし、初の監督業務であるにもかかわらず、時間の余裕もなく、スタジオ側とのトラブルも相次いだため、納得のいく作品には仕上がらなかった。
フィンチャーは「 もう一本映画を撮るぐらいなら、大腸ガンで死んだ方がマシだ! 」と語るほど、心身ともに疲弊したという。
実際、シリーズでも屈指の酷評である本作だが、エイリアン史上、最も闇深くスリリングな仕上がりとなったのは間違いないだろう。
セブン(1995)
原題(英題)
Se7en
公開日
1996年1月27日(日本初公開)
上映時間
126分
キャスト
- ブラッド・ピット
- モーガン・フリーマン
- グウィネス・パルトロー
- リチャード・ラウンドトゥリー
- R・リー・アーメイ
- ジョン・C・マッギンレー
- ジュリー・アラスコグ
- リチャード・シフ
- マーク・ブーン・ジュニア
- ジョン・カッシーニ
- レグ・E・キャシー
- ピーター・クロンビー
- ホーソーン・ジェームズ
- マイケル・マッシー
- リーランド・オーサー
- リチャード・ポートナウ
- リチャード・シフ
- パマラ・タイソン
- ケビン・スペイシー
コメント
「 エイリアン3 」で憔悴しきっていたフィンチャーが2作目に選んだのは、社会的に物議を醸す一本となる「 セブン 」だった。
脚本は、ビデオ屋の店長から本作でキャリアを確立していったアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーだ。
物語は最初から最後まで暗く、制作側が脚本の一部を変更するように持ちかけたほど。
結果的に一切の変更はなされず、フィンチャーは自分の意向で監督を務めることができた。
内容は、ブラッド・ピット演じる若手刑事ミルズと、モーガン・フリーマン演じる老刑事のサマセットが、キリスト教における「 七つの大罪 」をモチーフにした猟奇的な殺人事件を追うというもの。
“ 銀残し ”と呼ばれる現像手法を取り入れ、コントラストの強いダークな映像に仕上げている点も、明かりが見えないストーリーの鬱屈さを強調させている。
嵐が吹き荒れる街に大寒波が襲来したかのような絶望感は、心臓を抉り取られるような痛みすら覚える。
それなのに、私たちの心に巣食う悪魔が、どこまでも暗く残酷なこの作品を、魅惑的だと囁いてしまう。
人間の自制心と欲望を毒々しく描ききった本作は、当時のアメリカで4週にわたり全米興行成績1位に輝いた。
ゲーム(1997)
原題(英題)
The Game
公開日
1998年2月7日
上映時間
128分
キャスト
- マイケル・ダグラス
- ショーン・ペン
- ジェームズ・レブホーン
- デボラ・カーラ・アンガー
- ピーター・ドゥナット
- キャロル・ベイカー
- アーミン・ミューラー=スタール
- アンナ・カタリーナ
コメント
フィンチャー監督の3作目は、とある男が謎のゲームに巻き込まれるサスペンス・スリラー。
序盤から、あっという間に時間を忘れてしまう作品だ。
マイケル・ダグラスが演じる主人公のニコラスは、無情で周りを寄せ付けない孤独な投資家。
ある日、弟のコンラッドから謎のゲームへの招待状をもらったことをきっかけに、不可解な出来事に巻き込まれていく。
徐々に追い詰められていく男の心情を見事に表現したマイケル・ダグラスの演技が、物語の理不尽さを助長させる。
そして、ニコラスに謎の招待状を渡す弟のコンラッド役を、ショーン・ペンが好演。
どんでん返しの映画というと、ますます懐疑的に展開を推理してしまうだろうが、本作の結末はまさにどんでん返しと言わざるを得ないほど観客を欺いてくれる。
まるで行き先の分からない車に乗せられたかのような恐怖と期待を感じられるだろう。
観客の心理状態をうまく利用した物語のかき回し方は、一流そのもの。
本作は、有無を言わせぬ圧倒的なスリルと臨場感を味わいながら、本格的なミステリー要素も楽しめる一本だ。