「 ガザ 自由への闘い 」ガザ住民が求めているのは”同情ではなく人権”という言葉が胸に響く

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2023年10月に始まったイスラエルのガザ地区侵攻。

しかしそれは唐突に始まったわけではなく、むしろ歴史的な積み重ねの上に起きた出来事だった。

2023年の侵攻以前から存在したガザ地区の地獄に迫る。

※ 本作は、アジアンドキュメンタリーズで配信されている作品です。

目次

ガザ 自由への闘い

©︎Gaza Fights For Freedom

あらすじ

イスラエル軍に包囲されたガザ地区は、経済封鎖により人口の半分が失業中。ライフラインも食料も制限され、命をつなぐことさえも難しい状況にある。空爆により破壊された家は、資材が入ってこないため再建は不可能。越境も厳しく管理され、医療目的であっても滅多に承認されない。生活と移動の自由を求めたガザ地区の人々は、故郷に戻ることを求めて「帰還の大行進」と呼ばれる平和的なデモを決行。しかしイスラエルはこのデモを「ハマスをかばう罠」と断定し、武器を持たずフェンスを超えていないパレスチナ人を狙撃隊の標的にした。狙撃により183人が殺害され、負傷者は8千人にも及んだ。死亡者には子どもや障害者、ジャーナリスト、そして医療従事者もいた。イスラエルの戦争犯罪は今も続いている。

公式サイトより

公開日

2019年

原題

Gaza Fights For Freedom

上映時間

83分

予告編

キャスト

  • アビー・マーティン(監督・脚本・ナレーション)
  • マイク・プライズナー(脚本・プロデューサー)

公式サイト

ガザ 自由への闘い

「 天井の無い牢獄 」ガザ地区

©︎Gaza Fights For Freedom

2018年から19年にかけて行われた抗議活動「 帰還の大行進 」を中心に、ガザ地区の悲惨な実態とイスラエルの暴虐を描いたドキュメンタリー。

イスラエル最大の支援国であるアメリカの製作である点が興味深い。

作品中では、多くのパレスチナ人が、イスラエルを止めてくれるようアメリカ人に向けて訴える。

2019年の作品なので、作中ではイスラエルの肩を持つトランプが批判されているが、バイデン政権になっても状況は変わらないのだから救われない。。

前半は、イスラエルの包囲によって「 天井の無い牢獄 」と化したガザ地区の悲惨な生活を描く。

食料は最低限しかない、淡水はほとんど有毒、電気は4時間程度しか通じない、医療もまともに機能しない…

これは23年10月以降の話ではない。

2018〜19年の時点ですでにそんな状態が続いていたのだ。

ガザ地区は海岸沿いなので、その悲惨な実情に似合わず、風景だけは美しいというイメージがあったが、あの海もイスラエル軍によって封鎖されていて、船が規定よりも海岸から離れれば銃撃されるという事実を初めて知った。

目の前にある自由の象徴のような大海原が、実は牢獄の壁でしかないという残酷さ。

すべてはイスラエルの筋書き通り

©︎Gaza Fights For Freedom

大いに注目すべきは、「 イスラエルはハマスがガザ地区を支配することを望んでいた。ハマスがガザ全域を支配すれば、イスラエル軍はガザを危険とみなし、攻撃できるから 」という機密文書の暴露だ。

すべてはイスラエルの筋書き通り。

これによってイスラエルのガザ地区に対する攻撃は正当化されることになった。

2023年10月にハマスがイスラエルを攻撃し、人質を取ったのは事実だ。

それ自体はもちろん認められる所業ではないが、彼らがそんな窮鼠猫を噛む行為に及んだのも、イスラエルによって仕組まれた罠のようなものだったということが分かる。

明白な国際法違反

©︎Gaza Fights For Freedom

このドキュメンタリーは、どこまでもパレスチナ側に立ち、イスラエルを糾弾する内容だ。

その意味では客観性に欠ける部分もあるかもしれない。

しかしここで描かれたさまざまな説明にある程度の偏りがあったとしても、後半の映像を見ていれば、イスラエルが国際法に反する残虐な殺傷行為を行っていることは明白だ。

条約で禁止されているはずの炸裂弾や毒ガスの使用。

子ども、障がい者、ジャーナリスト、そして医療関係者に対する意図的な攻撃…

その実態を映し出す映像は緊迫感に満ちたもので、頭部を撃たれた少年の姿など凄惨極まりない。

武器を持たぬ者たちに対する容赦ない攻撃は、明らかに人道から外れたものだ。

終盤はラザン・アルジャナールという看護師が銃撃によって死亡するまでの経緯がくわしく描かれる。

1人の人間の未来が一瞬の暴力によって奪い去られる悲劇。

しかし彼女と同じような犠牲者は他にもたくさんいるし、23年10月以降は、この作品で描かれたものすら超える地獄が展開しているはずだ。

「 欲しいものは同情ではなく人権です 」というラザンの母親の言葉が胸に響く。

英語版はこちらから視聴できます。

執筆者

文・ライター:ぼのぼの

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