「 FALL フォール 」ネタバレなし考察・解説レビュー、これぞエクストリームホラー【 トラウマ級の恐怖 】

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最高に怖いホラー映画と言われると、あなたは何を思い浮かべるだろうか? 

多くの人は「 リング 」「 呪怨 」などのJホラー、あるいは最近人気のあるアリ・アスターの「 ヘレディタリー 継承 」などを挙げるのではなかろうか。

私の場合、他の人とはだいぶ感性が違うようで、その辺のいかにもなホラーには、あまり怖さを感じない。

私が怖いと感じるのは黒沢清の「 CURE 」「 回路 」、そしてナ・ホンジンの「 哭声 コクソン 」といった作品だ。

それらに共通するものは「 論理では理解できない未知の恐怖 」

なぜそのような「 魔 」が生じるのか分からない、「 魔 」に接した後どういう世界が待っているのかも分からない…

そんな未知なるものへの不安が想像力を刺激し、精神を巨大な暗黒へと接続してしまう作品こそが本当に恐ろしい。

それと比較すれば、一般的に人気のあるホラー映画は因果関係がハッキリしている分、怖さが薄れる。

「 リング 」など、未知なる恐怖の因果関係を追究する探偵物語であり、私が怖さを感じるものとは真逆のベクトルだ。

なお鈴木光司の原作シリーズでは、続編となる「 らせん 」「 ループ 」で、遺伝工学や仮想現実まで持ち出して、さらに因果関係を明らかにする方向に向かっていく。

SF的な面白さはあるが、ホラーとしての怖さはない。

しかし、そんな想像力を刺激する「 未知の恐怖 」とはまったく別の次元で、究極の恐怖に満ちた映画を見てしまった。

それが「 FALL フォール 」だ。

目次

FALL フォール

©︎FALL

あらすじ

地上600メートルのテレビ塔に登った2人の女性。頂上到達の喜びも虚しく、地上に降りる唯一の手段だったハシゴが崩落する。究極のサバイバルが始まる。

原題

Fall

公開日

2023年2月3日

上映時間

107分

予告編

キャスト

  • スコット・マン(監督・脚本)
  • ジョナサン・フランク
  • グレイス・キャラロライン・カリー
  • バージニア・ガードナー

公式サイト

FALL フォール

考察・解説レビュー

©︎FALL

かなり粗雑な導入部

ベッキー(グレイス・キャラロライン・カリー)は、危険なフリークライミングを趣味としていたが、夫をクライミング中の事故で亡くし、1年近く酒浸りの生活を送っていた。

そんな時、友人のハンター(バージニア・ガードナー)が現れ、ベッキーを励ますため、半ば強引に新たな冒険へと誘い出す。

それは人里離れた荒野に建つ解体寸前のテレビ塔へのクライミング。

錆びついたハシゴを登り、頂上から夫の遺灰を撒くことで、ベッキーは新たな人生を歩み出す決意をする。

しかし地上に降りようとしたとき、老朽化したハシゴが崩落。

2人は地上600mの狭い足場に取り残されてしまう。

携帯の電波も入らない状況で、どうやって救いを求めればいいのか?

絶望的状況でのサバイバルが始まる…

まず、ストーリーはかなり粗雑で強引だ。

あんな場所に行くのに、安全性をろくに確認していない。

万が一の用意もろくにしていない。

YouTuberとしていろいろな危険なこともやってきたハンター自身はともかく、1年近く引きこもりに近い生活を続けてきたベッキーを、いきなりあんな命がけのクライミングに引っ張り込むなど、

いかにショック療法と言えどもありえない無謀さだ。

しかもその頂上で、あんな危険極まりないことをやるとか…

何から何まで自業自得であり、「 この部分でキャラクターにまったく共感できず、全てがどうでも良くなった 」という意見が目立つのも当然だ。

登場人物を極限状態へ追い込むための強引過ぎる展開。

バカ映画同然のご都合主義。

この点について擁護の余地はない。

生物としての本能的恐怖を直撃

しかしそんな不満も、実際に塔を登り始めた段階から、ほとんど吹き飛んでしまう。

圧倒的な高所の恐怖と、その危機感をあざといまでに強調する演出に、足がすくみっぱなしになってしまうからだ。

一般的には「 スリラー 」とされているが、これはもはや究極の「 ホラー 」である。

未知の恐怖とか想像力の刺激とか、そんな理屈は一切必要ない。

生物としての本能的恐怖をストレートに突き刺してくる、超高性能な感覚的ホラーだ。

誤解なきように書いておくと、私は人並み以上に高所恐怖症というわけではない。

高い場所に行けば、ちょっと緊張しながらも、むしろ積極的に下をのぞき込む方だ。

タワーの展望台などにある、強化ガラスの床にも立つことができる。

映画なら「 ザ・ウォーク 」や「 ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル 」など、手に汗を握りながらも楽しんだり感動したりすることができた。

しかしそれらの映画は、あくまでも高所を、サスペンス・アクションの要素として、あるいは孤独な青年の心象風景として扱ったものだ。

ところがこの映画は、それを観客に恐怖を与える方向に全振りしている。

高所の恐怖を本気で描くと、ここまで恐ろしい映画ができてしまうものなのか。

昔ならこんな映画を作れるはずもなく、大部分は高度に発達したVFXによって作られた「 架空の高所 」だ。

それを頭で理解していても、感覚的な恐怖を抑えることはできない。

途中で耐えられなくなり、見るのをやめようかと思ったほどだ。

さらに言えば、この映画は劇場公開時に興味がありながら見損ねていたもので、今回はWOWOWで放送されたものをiPadの画面で見た。

iPadの小さな画面で見て、これだけ恐ろしいのだ! 劇場の大画面で見たら一体どうなっていたことだろう。

劇場で見なくて良かった…

トラウマを恐れない人はぜひ

作劇について言えば、前半の強引な設定は大いに不満だが、そこで舐めてかかっていると、終盤の意外な仕掛けに多くの人が「 おやっ!?」となるはずだ。

その前に感じた疑問点もそこで解消されるし、何気に周到な伏線が張られていたことにも気づき、前半の失点をここでかなり挽回する。

さらに凄いのは、最後の最後に取ったサバイバル手段だ。

これはなかなか考えつくものではなく、考えついても、それを実際に描くことは躊躇しそうだが、本作はそれを堂々とやってのける。

ご都合主義を突き抜けた非情さに背筋が凍りつき、これ以上ない見事な着地点となる。

トラウマ級の恐怖を与える作品なので積極的に他人には勧められないが、最高に刺激的な恐怖を味わいたい勇気ある方々は、ぜひご覧になるといいだろう。

なお私は、これを見た夜、早速この映画の世界に放り出された悪夢に苛まれ、明け方に飛び起きた。

それくらいメンタルに響く作品であることは、くれぐれも警告しておく。

執筆者

文・ライター:ぼのぼの

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