魅力的で奥深いドキュメンタリーの世界。
フィクションとは異なる真実に基づく映像は、私たちに新たな気付きや悲しみ、喜び、希望、さまざまな感情を残酷なほどリアルに与えてくれます。
とはいえ、「 ドキュメンタリーとは何か?」「 定義はあるのか?」について、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ドキュメンタリーの定義や歴史、日本と海外の違いについて分かりやすく解説します。
ドキュメンタリーの定義
「 ドキュメンタリー 」とは、現実の出来事、人々、問題を描く映画やビデオのことを指し、歴史・社会問題・音楽・スポーツ・自然など、テーマも幅広い。
ドキュメンタリーの大きな特徴は、「 ただ事実を伝える 」だけではなく「 どのように伝えるか?」を重要視していることです。
そのため、同じ題材のドキュメンタリーであっても、制作者の意図や取材対象によっては全く異なるテーマや印象を与えることも珍しくありません。
特に戦争や環境や人権問題であれば、より違いが顕著になるでしょう。
どんな主張のドキュメンタリーであっても、徹底的な取材は必要不可欠なため、原作に基づくフィクション映画よりも制作工数に多大な時間と手間がかかります。
例えば、2003年にBBC制作の海洋ドキュメンタリー「 ディープ・ブルー(DEEP BLUE)」は撮影期間に4年半、制作に7年もかかっていて、続編の「 アース(EARTH)」は制作に5年の歳月を費やしました。
ドキュメンタリーの起源
ドキュメンタリーの起源は、遡ること1890年代。
のちに「 映画の父 」と呼ばれるフランスのリュミエール兄弟が、映画カメラとプロジェクターを兼ねた機械「 シネマトグラフ 」を発明し、世界初の映画・「 工場の出口 」(1895年)を上映。
リヨンの工場から労働者たちが出てくる様子を描いており、わずか46秒の長さです。
内容自体は極めて単純で、ストーリーやドラマは存在しません。
しかし、その当時としては、現実の人々の動きを捉えた映像をスクリーンで見ることができるという点で、非常に画期的なものでした。
「 工場の出口 」は、映画とドキュメンタリーの2つの原型ともいえる作品です。
世界初のドキュメンタリー映画は「 極北のナヌーク 」
1922年に公開された「 極北のナヌーク 」(Nanook of the North)は、ロバート・フラハティ監督による世界初の長編ドキュメンタリー映画と言われています。
カナダ北部に住むイヌイット人の日常生活を描いたこの作品では、現地での生活の厳しさや生きるための狩猟、家族の絆など、人々の生活をリアルに捉え、世界中で高い評価を受けました。
ドキュメンタリーとノンフィクションの違いは?
ドキュメンタリーとノンフィクションは、どちらも現実の出来事や事実に基づいた作品を指します。
そのため、しばしば混同されることも多いですが、一般的にはドキュメンタリーはテレビや映画など、映像媒体を使った作品であり、ノンフィクションは小説やエッセイ、書籍など、より広範囲で使われるケースが多いです。
ノンフィクションという大きな枠の中にドキュメンタリーが含まれている – というイメージだと分かりやすい。
いずれにしても、ドキュメンタリーとノンフィクションは、いずれも制作者の意図が反映された「 作品 」であることに間違いありません。
そのため、事実のみを記載したニュース記事は、「 ドキュメンタリー 」「 ノンフィクション 」のどちらにも含まれないのです。
ドキュメンタリー(日本と海外の違い)
日本と海外のドキュメンタリーの違いで、最も顕著なのは扱う「 テーマ」 だと言われています。
日本のドキュメンタリーでは、日々の生活や人と人との繋がりや交流が描かれることが多いですが、海外、特に欧米では社会問題や歴史的事件に焦点を当てて掘り下げられることが多いです。
実際、日本のドキュメンタリー映画で有名な老々介護を取り上げた「 ぼけますから、よろしくお願いします。」
建築家夫婦の暮らしを映した「 人生フルーツ 」など、鑑賞後に「 感動 」「 共感 」を感じる方も多いでしょう。
ドキュメンタリーを視聴する際、日本での媒体はテレビに集中していますが、海外ではテレビの他、映画での公開も多くドキュメンタリー作品を取り扱った映画祭も開催されるほどです。
両者の違いは文化、価値観、歴史的背景が反映されていることが大きな要因と考えられています。
まとめ
ドキュメンタリーを通して、今まで知らなかった世界を知り理解することができます。
それだけでなく、作品に込められたメッセージや問題提起を受け取ることも可能です。
もちろん、フィクション作品も素晴らしい文化ではありますが、ドキュメンタリーは情報の提供だけでなく、社会的、文化の変化を促す力を持っているといっても過言ではないでしょう。
本記事が、ドキュメンタリー作品の新しい視点を得るキッカケになれば幸いです。