ヒアアフター(2010)

原題(英題)
Hereafter
公開日
2011年2月19日
上映時間
129分
キャスト
- クリント・イーストウッド(監督)
- マット・デイモン
- セシル・ドゥ・フランス
- ジェイ・モーア
- ブライス・ダラス・ハワード
- ジョージ・マクラレン
- フランキー・マクラレン
- ティエリー・ヌービック
- マルト・ケラー
コメント
32作品目となる本作をイーストウッドが監督することになったのは、
スティーブン・スピルバーグ監督からの一本の電話がきっかけだったという。
元々スピルバーグ監督と仲のいいイーストウッドは、その電話でピーター・モーガンの脚本を勧められた。
脚本を読んだイーストウッドは、その挑戦的な内容に興味を示し、監督を引き受けたという経緯がある。
本作は、3人の孤独な男女が死後の世界を共通点として繋がっていくというストーリーだ。
死者を尊重し、静かに、丁寧に描かれる現実世界での人間ドラマが、乾燥した心を暖かく包み込む。
映像は、全体的にセピア色のような抑えられた色調に統一されている。
セピア色には、昔を懐かしんだり思い出したりする心理効果があるというが、亡くなった方を思い浮かべながら見てほしい、
というイーストウッドからのメッセージなのではないだろうか。
また、物語をゆったりと彩る音楽が、心地よく脳内に流れ込む。
劇中の音楽もイーストウッドが担当しており、死後の世界と現実世界との繋がりを静かに表現した。
時に切なく、時に暖かく、時にユーモラスな物語が、僕らに大事な何かを伝えてくれる作品だ。
J・エドガー(2011)

原題(英題)
J. Edgar
公開日
2012年1月28日
上映時間
138分
キャスト
- クリント・イーストウッド(監督)
- レオナルド・ディカプリオ
- ナオミ・ワッツ
- アーミー・ハマー
- ジョシュ・ルーカス
- ジュディ・デンチ
- エド・ウェストウィック
- ジェフリー・ピアソン
- ジェフリー・ドノバン
- アダム・ドライバー
コメント
イーストウッドとレオナルド・ディカプリオが初のタッグを組んだ本作。
FBIの初代長官を務めたジョン・エドガー・フーバー(J・エドガー)の半生に迫り、謎に満ちた人物像を明らかにしていく。
注目は、イーストウッドが描くJ・エドガーの人物像だ。
多角的であり深みに潜る人物研究は、エンターテインメントの域を超えて圧倒的なリアルと意義を見出す。
そして、ディカプリオは19歳と74歳のJ・エドガーを演じ、特殊メイクに頼らず自分の演技力で観客の違和感を拭い去った。
発声から表情や所作に至るまでこだわったディカプリオの演技にも注目が集まる。
脚本はアカデミー賞を受賞した「 ミルク 」(2008)のダスティン・ランス・ブラック。
共演に「 インポッシブル 」(2012)のナオミ・ワッツや 「 ソーシャル・ネットワーク 」(2010)のアーミー・ハマーら
豪華キャスト陣が脇を固めている。
ジャージー・ボーイズ(2014)

原題(英題)
Jersey Boys
公開日
2014年9月27日
上映時間
134分
キャスト
- クリント・イーストウッド(監督)
- ジョン・ロイド・ヤング
- エリック・バーゲン
- マイケル・ロメンダ
- ビンセント・ピアッツァ
- クリストファー・ウォーケン
- マイク・ドイル
- レネー・マリーノ
- エリカ・ピッチニーニ
- ジョセフ・ルッソ
- ドニー・ケア
- キャサリン・ナルドゥッチ
コメント
1960年代にアメリカで絶大な人気を誇った「 フォー・シーズンズ 」の半生をイーストウッドが映画化。
メンバーであるフランキー・ヴァリの「 君の瞳に恋してる 」は、日本でも多くの歌手がカバーをしている名曲だ。
犯罪の多い地域から抜け出し、世界に羽ばたいたフォー・シーズンズの光と闇を見事に映し出した本作。
筆者も高校生の頃に見たが、美しい歌声とリアルな物語に心を打たれたのを今でも鮮明に覚えている。
彼らが歌う「 シェリー 」や「 君の瞳に恋してる 」を聴きながら、何度も黄昏れていたほどだ。
伝記としてのリアリティを保ちながら、映画として物語に抑揚をつけるあたりがさすがといえる。
アメリカン・スナイパー(2014)

原題(英題)
American Sniper
公開日
2015年2月21日
上映時間
132分
キャスト
- クリント・イーストウッド(監督)
- ブラッドリー・クーパー
- シエナ・ミラー
- ルーク・グライムス
- ジェイク・マクドーマン
- ケビン・ラーチ
- コリー・ハードリクト
- ナビド・ネガーバン
- キーア・オドネル
コメント
米軍で史上最強とうたわれた狙撃手、クリス・カイルの自伝をイーストウッドが映画化した本作。
ブラッドリー・クーパーが主演を務め、イーストウッドと初のタッグを組んだ。
2003年から2009年にわたり、イラク戦争で狙撃手として派遣されたクリス。
多くの仲間を救うと同時に、数え切れないほどの心臓や頭を撃ち抜いてきた。
戦争が終わり妻子のいる母国へと戻るも、クリスの心には無数の傷が生々しく刻まれているのであった。
アメリカン・スナイパーを見たあとは、しばらく虚無感に襲われるだろう。
それから戦争の悲惨さと残酷さに胸を痛め、自分の無力感に打ちひしがれる。
自分の心に余裕があるときに見てほしい映画だが、見ること自体は避けないでほしい。
退役軍人から「 あなたは伝説だ 」と言われ、感謝を述べられるシーンでもクリスの表情は浮かないまま。
大量の命を奪った自責の念と、伝説と崇められ感謝される自分との差に葛藤する心理描写は、
イーストウッドの手腕とブラッドリー・クーパーの名演が成せる技だろう。
なお、本作は第87回アカデミー賞音響編集賞を受賞した。