今回は、クリント・イーストウッド(以降、イーストウッド)が監督した全40作品をご紹介する。
イーストウッドといえば「 荒野の用心棒 」(1964)や「 ダーティハリー 」(1971)などの作品で、
俳優としても確固たる地位を獲得した、知る人ぞ知る名俳優だ。
そして、彼は監督としてもその名を轟かせ、これまでにアカデミー賞を2度も獲得している。
俳優に監督と、二刀流、いや二丁拳銃を使いこなす偉人だ。
御年94歳にして現役を貫くイーストウッドの監督作品を今一度振り返り、映画のおもしろさに改めて浸ろうではないか。
なお、本記事では他のメディアでは監督作としてカウントされていない「 ピアノ・ブルース 」を含む全40作品をご紹介する。
*2024年11月現在日本では公開されていないものの、北米ではわずか35館でイーストウッドの最新監督作
「 Juror No.2 」が公開されているようだ。
クリント・イーストウッド作品一覧
クリント・イーストウッドの監督映画作品は下記の通り。
- 恐怖のメロディ(1971)
- 荒野のストレンジャー(1972)
- 愛のそよ風 (1973)
- アイガー・サンクション(1975)
- アウトロー(1976)
- ガントレット(1977)
- ブロンコ・ビリー(1980)
- ファイヤーフォックス (1982)
- センチメンタル・アドベンチャー (1982)
- ダーティハリー4 (1984)
- ペイルライダー(1985)
- ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場(1986)
- バード(1988)
- ホワイトハンター ブラックハート(1990)
- ルーキー(1990)
- 許されざる者(1992)
- パーフェクトワールド(1993)
- マディソン郡の橋(1995)
- 目撃(1997)
- 真夜中のサバナ(1997)
- トゥルークライム(1999)
- スペース カウボーイ(2000)
- ブラッド・ワーク(2002)
- ミスティック・リバー(2003)
- ピアノ・ブルース(2003)
- ミリオンダラー・ベイビー(2004)
- 父親たちの星条旗(2006)
- 硫黄島からの手紙(2006)
- チェンジリング(2008)
- グラン・トリノ(2008)
- インビクタス 負けざる者たち(2009)
- ヒアアフター(2010)
- J・エドガー(2011)
- ジャージー・ボーイズ(2014)
- アメリカン・スナイパー(2014)
- ハドソン川の奇跡(2016)
- 15時17分、パリ行き(2018)
- 運び屋(2018)
- リチャード・ジュエル(2019)
- クライ・マッチョ(2021)
恐怖のメロディ(1971)
原題(英題)
Play Misty For Me
公開日
1972年4月
上映時間
103分
キャスト
- クリント・イーストウッド(監督・出演ともに)
- ジェシカ・ウォルター
- ドナ・ミルズ
- ジョン・ラーチ
- ドン・シーゲル
コメント
記念すべき初監督作品は、狂った女の嫉妬劇だ。
物語は、イーストウッド扮する人気DJ・デイブが、一人の女性と関係を持つところから始まる。
なりゆきで一夜を共に過ごしたはずだったが、その日から女性はデイブを執拗につけまわすようになる。
デイブはストーカー行為にとうとう我慢の限界を迎え別れを切り出すが、嫉妬に狂った彼女は思わぬ行動に出るのであった。
本作のイーストウッドは、片手に銃ではなく女性をはべらせる人気DJとして登場する。
カウボーイの役柄のイメージとは異なるものの、狂気に満ちた物語はダーティーハリーを彷彿とさせ、
観客を恐怖の渦へと突き落とすのは間違いないであろう。
ヘビー級の嫉妬と常軌を逸した独占欲が巻き起こすサイコな展開に目が離せない作品だ。
荒野のストレンジャー(1972)
原題(英題)
High Plains Drifter
公開日
1973年6月2日
キャスト
- クリント・イーストウッド(監督・出演ともに)
- バーナ・ブルーム
- マリアンナ・ヒル
- ミッチェル・ライアン
- ジャック・ギンク
- ステファン・ギラシュ
- テッド・ハートリー
- ビリー・カーティス
- ジェフリー・ルイス
コメント
イーストウッドが監督を務めた2作品目。
「 荒野の用心棒 」の監督、セルジオ・レオーネからの影響を受けた作品で、
西部劇の醍醐味をたっぷりと盛り付けた作品となっている。
馬に乗り、とある村へと流れ着く一人のガンマンがいた。
その流れ者は、荒くれ者を撃ち殺したことで腕を買われ、村の用心棒として雇われることになる。
報酬は、都合がつくものなら何でも構わないという。
流れ者はとにかく村中を引っ掻き回すのだったが、それをよく思わない輩から目をつけられてしまう。
オープニングはイーストウッドのヒーロー物語かと思う。
颯爽と馬に乗り現れ、寡黙な様子で酒を飲む。
かっちょい〜!と思ったのも束の間、イーストウッドが町の荒くれ者3人を銃殺。
戸惑いが隠せないまま、物語が進むにつれて単純な西部劇ではなくなることが分かり、重厚でシリアスな展開が幕を開ける。
怪しげな町と用心棒の目的。
次の展開が待ち遠しくなるミステリー要素と、西部劇の醍醐味が詰まった拳銃の撃ち合いに加えて、
ホラー映画のようなバイオレンス描写が男の血をたぎらせる。
愛のそよ風 (1973)
原題(英題)
Breezy
上映時間
108分
キャスト
- クリント・イーストウッド(監督)
- ウィリアム・ホールデン
- ケイ・レンツ
- ロジャー・C・カーメル
- マージ・デュセイ
- ジョーン・ホッチキス
コメント
イーストウッドの3作品目は恋愛物語。
自由奔放なヒッピーの少女と偶然出会った中年男性の清らかな恋模様を美しく描き出す。
当初はイーストウッドが主演を務めるはずだったが、当時40代だったイーストウッドは自らを若すぎるとオファーを断る。
代わりに10歳ほど年上だったウィリアム・ホールデンを主役に抜擢し、結果的に物語のリアリティとロマンチズムを加速させた。
作品を見た者のなかには年の差の恋に違和感を覚えるという声もあったが、現代では当たり前になりつつある世代を超えた恋愛。
「 年を食っても現役だぞ 」とイーストウッドのナルシストな部分も垣間見えるが、これはこれでおもしろい。