莫大な成功を収めた女性実業家の人間としての側面に迫った
短編ながら衝撃度の高いドキュメンタリー。
ココ・シャネル 時代と闘った女
あらすじ
映画「ココ・シャネル 時代と闘った女」は、高級ファッションブランド「シャネル」の創業者であるココ・シャネルの生涯を描いたドキュメンタリーです。シャネルの波乱に満ちた生涯と実像を、シャネル本人や関係者らの証言、公文書、当時のニュース映像などからひも解いています。
公開日
2021年7月23日
原題
Les guerres de Coco Chanel
上映時間
55分
キャスト
- ジャン・ロリターノ(監督)
- ココ・シャネル
- エドモンド・シャルル・ルー
- マルセル・ヘードリッヒ
予告編
考察・感想レビュー
好きだった点
自立して自分だけの仕事を誇り高くやり切った、ココ・シャネルのスピリットを知れる貴重な機会だと思います。
シャネルのイメージから、その生みの親である彼女もうるわしく、エレガントなイメージを勝手に持っていました。
なんと人間臭く、狡猾で、孤独で、怖がりだったことだろうと思い偉人とされている人であっても、その裏には計り知れない現実があるのだと思い知ります。
そんな意外性が「 人間て本当に興味深いな 」と感じさせます。
嫌いだった点
ココ・シャネル本人の晩年の表情には恐ろしさを感じました。
加齢だけではない、内面的な「 すれ 」が表れてしまっているということなのかもしれません。
トゲトゲしく批判的で独善的で、ゆえに孤独で、とても幸福そうには見えない姿でした。
それもまた彼女自身の美学ゆえなのかもしれませんが。
きつくて苦しいコルセットをやめ、動きやすさを重視しつつ、エレガントなファッションを打ち出したココ・シャネル。
それは、古い伝統やしきたりから女性を解放したようなイメージを与えるのですが、インタビューの中で彼女自身が街を行く女性たちに対して
「 足がまっすぐでなくて醜い 」「 紫なんて着て 」等、彼女たちを疎んだ発言をしており、批判的で冷たかったことは、意外でしたし残念に感じました。
第二次世界大戦後、従来の自己犠牲的で形式的なファッションから女性を解放し、洗練され、のびのびと生きることを応援していたように感じられるココ・シャネル。
実際にそうした志もあったことでしょう。
しかし、ナチスとの関わりや、チャーチルとの親交など政治や戦争により、清らかではいられなかった現実を知り時代の恐ろしさを思い知ります。
そこで培われた硬骨さや処世術も、彼女がビジネスで成功するには不可欠であったと思いますが、晩年の彼女の孤独やとげとげしい表情から、やはり何者かに魂を売ってしまったのかという感は否めません。
英雄には英雄の苦労があり、名をあげるということには常に犠牲が伴うものなのだと感じる、やや切なさも漂う作品です。