ゴッド・ハンドとよばれる、人ならざる” 魔 “に復讐を誓った剣士・ガッツの活躍を描いたダーク・ファンタジー。
累計発行部数 約6,000万部の大ヒットコミックスが原作です。
「 ベルセルク 」は1989年から白泉社の「 ヤングアニマル 」で連載が始まり、濃密に練られた脚本と書き込まれた作画で人々を熱狂させ続けてきました。
原作者・三浦建太郎の死後は、唯一最終回までのシナリオを聞かされていた漫画家・森恒二による監修の元で連載が続けられています。
今回ご紹介する映画シリーズは、「 鉄コン筋クリート 」や「 海獣の子供 」といった質の高いアニメ映画で知られる、
STUDIO4℃によって製作されました。
3作からなる本シリーズのおすすめの見る順番や、見どころを解説していきます。
本シリーズのおすすめの視聴順は?

- ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵(2012)
- ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略(2012)
- ベルセルク 黄金時代篇III 降臨(2012)
おすすめの視聴順はズバリ、公開順。
今シリーズは、ガッツが「 黒い剣士 」となるまでの経緯を描いた作品です。
原作3~13巻の、「 黄金時代 」と呼ばれるストーリーで構成されています。
黄金時代ではガッツの生い立ち、のちに宿敵となるグリフィスとの友愛、鷹の団での青春が描かれています。
人間界に魔が侵攻する前の時代であるため、ファンタジー要素は薄く、中世ヨーロッパを模した戦国時代のような作風です。
だからこそ、時折垣間見える「 人ではない何か 」の不気味さが増しています。
第3作目の絶望的な展開に向けて、少しずつ不穏な空気が流れていく点にも注目です。
第1作目「 ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵 」

あらすじ
ミッドランド王国とチューダー帝国の百年戦争が続く戦乱の世。身の丈を超える長剣を背負った一匹狼の傭兵ガッツは、あるとき凄腕で知られた騎士を倒し、傭兵組織《鷹の団》を率いるグリフィスから目を留められる。秘めた野望からどうしてもガッツを仲間に欲しいグリフィスは決闘を申し入れ、結果、敗北を喫したガッツは鷹の団の一員となる。やがてガッツは期待以上の戦果を上げ、彼もまた仲間との絆に安らぎを感じていくが……。
公開日
2012年2月4日
上映時間
80分
予告編
キャスト
- 窪岡俊之(監督)
- 岩永洋昭
- 櫻井孝宏
- 行成とあ
- 梶裕貴
- 寿美菜子
- 藤原貴弘
- 松本ヨシロウ
- 矢尾一樹
- 豊崎愛生
- 小山力也
- 三宅健太
- ケンドーコバヤシ
見どころ
映画ということもあり、ガッツの詳しい生い立ちの描写がカットされている点が惜しく感じます。
しかし、孤独の青年ガッツがグリフィスに出会うことで、切り込み隊として戦地で成果を挙げていくシーンは痛快です。
戦場のシーンは合戦が描かれるため、大量の人物が画面内に配置されています。
大人数でのダイナミックな戦闘描写は、CGを取り入れた映像表現によって迫力満点です。
物語としては、ガッツとグリフィスの出会いに焦点が当てられているため、まだ序章。
ガッツの、鷹の団の切り込み隊隊長としての本格的な活躍は、続編で堪能してください。
今作は戦闘シーンだけではなく、グリフィスと彼を取り巻く人物との心理戦にも注目です。
鷹の団を引き入れたミッドランド正規軍によるグリフィスの暗殺計画など、自国軍内での陰謀にも、戦場に劣らない緊迫感があります。
第2作目「 ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略 」

あらすじ
ミッドランド王国と敵国チューダー帝国との百年戦争が最終局面に突入する。ミッドランドの精鋭軍が難攻不落のドルドレイ要塞に攻め入るが、チューダー最強のボスコーン率いる紫犀聖騎士団に迎え討たれ、壊滅に追いやられる。鷹の団飛躍の好機とみたグリフィスは国王に、鷹の団だけでの出陣を進言、一方ガッツはその戦いを最後に鷹の団を去る決意を固める。敵は3万、味方は5000、誰もが無謀と確信した戦いは始まった……。
公開日
2012年6月23日
上映時間
93分
予告編
キャスト
- 窪岡俊之(監督)
- 岩永洋昭
- 櫻井孝宏
- 行成とあ
- 梶裕貴
- 寿美菜子
- 藤原貴弘
- 松本ヨシロウ
- 矢尾一樹
- 豊崎愛生
- 小山力也
見どころ
鷹の団が敵国チューダー帝国の要塞・ドルドレイで激戦を繰り広げるシーンは、アニメ映画史に残る圧巻の場面だと思います。
そして今作では、ベルセルクという作品全体の根幹に関わる重要な展開が描かれます。
それはガッツとグリフィスの決別です。
グリフィスはシャルロット姫に「 対等の友とは、人の夢にすがったりしない者 」と自身の考えを吐露します。
それを耳にしたガッツは、グリフィスにとっての友となるため、鷹の団の脱退を決意しました。
ガッツはグリフィスにとって唯一心を許せる友であったにも関わらず、「 友になりたい 」という理由で自ら関係を断ち切ってしまいます。
この決断がガッツに悲劇的な運命をもたらし、ひいては鷹の団の崩壊に繋がります。
第3作目「 ベルセルク 黄金時代篇III 降臨 」

あらすじ
逆賊として追われる鷹の団に、1年前団を去ったガッツが帰還する。彼の不在中、団をまとめていたキャスカは仲間を見捨てる形となった彼に怒りをぶつけるが、2人は絆を取り戻していく。その後2人は反逆者として捕らわれたグリフィスの奪還を決行するが、彼は激しい拷問によって身体を著しく傷つけられていた。すべてを失い、絶望のふちに沈むグリフィス。そんな彼の前に、失われたはずの《覇王の卵》ベヘリットが再び出現し……。
公開日
2013年2月1日
上映時間
113分
予告編
キャスト
- 窪岡俊之(監督)
- 岩永洋昭
- 櫻井孝宏
- 行成とあ
- 梶裕貴
- 寿美菜子
- 藤原貴弘
- 松本ヨシロウ
- 矢尾一樹
- 豊崎愛生
- 三宅健太
- 中村悠一
- 竹達彩奈
- 大塚明夫
見どころ
今作では、漫画史に残る残酷描写と言われる「 蝕 」が描かれます。
第1作目から始まった黄金時代の終焉です。
それはつまり、鷹の団の崩壊であり、いかにしてガッツがゴッド・ハンドを恨む「 黒い剣士 」となったのかが明らかになります。
ベルセルク本編に繋がる悲劇的な結末を迎える今作は、初めてR-15指定の認定を受けました。
今まで垣間見えていた不気味な「 人ではない何か 」の存在がついに表立って出てきます。
それに加え、これまで中世ヨーロッパのような作風だった黄金時代篇の世界が、ダーク・ファンタジーへと移り変わります。
ただ残念な点は、ガッツが「 黒い剣士 」として立ち上がる前に映画が終わるため、
見た者にトラウマを植え付ける鬱展開だけが目立つ作品となっていることです。
殺戮を始め、あらゆる凄惨なシーンがある今作。
前2作に思い入れがある人ほど、鑑賞への覚悟がいる一作です。
まとめ

今シリーズは、ベルセルクの物語を全て映像化する試みで計画された「 ベルセルク・サーガプロジェクト 」の一環です。
2013年に完結した劇場版3部作のあと、「 アニメ新プロジェクト 」が発足し、
2015年には「 黒い剣士 」としてのガッツの活躍を描いたアニメが放送されました。
そして劇場版3部作は、2022年に「 ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION 」というタイトルで再編集されます。
これは単なる総集編ではなく、新規カットも数多く詰め込まれた一つのアニメシリーズとして成立している作品です。
このように、ベルセルクは数多くのメディア展開がされた作品です。
中でも主要人物の過去が描かれた劇場版3部作は、原作を知らない方にとっても、登竜門として入りやすい構成の作品だと思います。
作風が中世ヨーロッパ風からダーク・ファンタジーへと移り変わる今作は、
アニメ映画史においても唯一無二の個性を持つシリーズだと思います。

文・ライター:キングギドラ