【 ネタバレなし 】「 ヴィレッジ 」考察レビュー

当ページの画像はIMDbまたは公式サイトより引用
  • URLをコピーしました!

長編映画では2018年「 青の帰り道 」以来のタッグとなった藤井道人(監督)×横浜流星(主演)の名タッグ。

この5年の間に藤井監督は「 新聞記者 」(2019)にて日本アカデミー賞の最優秀作品賞を獲得し、横浜流星も「 流浪の月 」(2022)で役者としての幅と深みを大きく増した。

大きな躍進を遂げ、今なお進化し続ける2人の再演――これが面白くないわけがないでしょう。

目次

ヴィレッジ

©️ヴィレッジ

あらすじ

小さな集落 – 霞門村 (かもんむら)育った青年。世間から閉ざされた狭い人間関係の中で、希望のない人生を送っていた彼は、やがて過酷な運命を辿る。

公開日

2023年4月21日

上映時間

120分

キャスト

  • 藤井道人(監督)
  • 横浜流星
  • 黒木華
  • 一ノ瀬ワタル
  • 奥平大兼
  • 作間龍斗
  • 淵上泰史
  • 戸田昌宏
  • 矢島健一
  • 杉本哲太
  • 西田尚美
  • 木野花
  • 中村獅童
  • 古田新太

予告編

公式サイト

ヴィレッジ

作品評価

  • 映像
  • 脚本
  • キャスト
  • 音楽
  • リピート度
  • グロ度
  • 総合評価

考察レビュー

早速本作について語りたいが、そのためには藤井作品のマイベスト「 ヤクザと家族 The family 」(2021)と並べないわけにはいかない気がしている。

というのもこの2本、出演者が記念撮影をしたようなポスターだけでなく、物語の構造自体もかなり似ている。

すでに観た人なら分かる通り、どちらの作品も社会の底辺や周縁から這い上がった主人公の手にした幸せが、呆気なく綻び、破滅へと向かっていくドラマになっている。

本作では直接「 邯鄲(かんたん) 」として言及されていたが、この生きることの、ある種の不条理や儚さは藤井作品に通ずるテーマだと言えるだろう。

邯鄲(かんたん)〜 人の世の栄枯盛衰のはかないことのたとえ。

「 ヤクザと家族 The family 」の結末から冒頭へと繋がっていく、朧(おぼろ)な光が差し込む水中のシーンによって、作品自体を沈んでいく賢治(綾野剛)の走馬灯として劇的に描いたが、

本作も同様に、ラストカットの優(横浜流星)の姿は、人を殺して火を放った父と、張り詰める空気のなか能を見ていた少年時代の優を描いた冒頭と象徴的に重ねることができる。

つまり藤井作品が描く世界、あるいは主人公の視点で切り取られた世界は、巧妙に1つの円環を作ることで閉じているというわけだ。

それはヤクザというアンダーグラウンドな存在の息苦しさであり、あるいは、ある種の日本社会の縮図として描かれた霞門村の閉塞感を象徴しているのだろう。

まとめ――閉塞感のその先へ

構造こそ違えど、現代日本という社会のあちこちで感じられる閉塞感や、逃げ場のなさを描き続ける姿勢は「 新聞記者 」から変わらない。

しかし「 新聞記者 」の鮮烈な絶望から4年。

「 ヤクザと家族 The family 」では翼(磯村勇人)と彩(小宮山莉渚)が賢治の死を悼む。

賢治が愛そうとした二人は、彼が生きた過去を眼差し、彼の生きた証を汲む受容が提示された。

「 Village 」ではスーツケースを引く恵祐(作間龍斗)が村を出て行く。

村を振り返る複雑な表情には、「 ヒーロー 」と憧れた優への憧憬と失望、村を離れ自分自身の未来を歩き出すことへの安堵と不安が入り混じっているように見える。

「 Village 」が辿り着いた結論は絶望でもなく、受容でもなく、託され、歩き出すことだった。

懸命に抗い、生きて、かたちのない何かを遺すこと。

あるいは、その生き様を託され、未来へ進んでいくこと。

藤井作品は世界に抗って生きる者たちの賛歌として、閉じた世界を丹念かつ致命的に描き続けている。

あわせて読みたい
「 ヴィレッジ 」考察レビュー、なぜ能をモチーフにしたのか? 伝統的に村民参加で祭で薪能が開催される深緑豊かな山あいの霞門村。 しかし、7年前の事件を境に虐げられる者の支配する者達に別れ、文明の導入による無変化と変化を描...

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この記事をシェア
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次