「 ファーザー 」考察レビュー、アンソニー・ホプキンス主演

ジョンさん

映画ライフ楽しんでますか? 今回は、ペンネーム@ジョナんからの投稿レビューです。

羊たちの沈黙1991年) 」シリーズにハマって以来、アンソニー・ホプキンスがハンニバル・レクターにしか見えないという呪いがかけられていました。

アンソニーが最高齢で、しかも2度目となるアカデミー主演男優賞を獲ったことも関係しているのか、ミニシアターの客席は平日なのに、ほぼ満席。

平均年齢は高めでした。

この記事では、今作の基本情報と「 ハンニバルの呪い 」が解けたのかを明らかにします。

ファーザー

ファーザー

©ファーザー

公開日

2021514

原題

The Father

上映時間

97

キャスト

  • フロリアン・ゼレール(監督)
  • アンソニー・ホプキンス
  • オリヴィア・コールマン
  • マーク・ゲイティス
  • イモージェン・プーツ

予告編

公式サイト

ファーザー

作品評価

作品評価
映像
(4.0)
脚本
(5.0)
キャスト
(5.0)
音楽(BGM)
(3.0)
リピート度
(5.0)
グロ度
(1.0)
総合評価
(5.0)

ファーザー(感想レビュー)

ファーザー

©ファーザー

好きだった点

細部のこだわりが見事でした。

舞台は、父親役のアンソニーが「 私のフラット 」と呼ぶ室内。

演出上、時系列が入り乱れるのですが、絵画の有無や椅子の色の変化、家具や生活用品の位置が微妙に変わっていることで、時の移り変わりを表現していました。

その、さり気なさがよかったです。

フラットは、日本では、マンションやアパートと呼び変えるとイメージしやすいですね。

アンソニーが何度も繰り返し聴いている音楽が、アリアの「 耳に残るは君の歌声 」だったので魂消(たまげ)ました。

上映前に読んでいたSF短編の主人公が「 アリアを歌い続ける 」発作を患っている設定だったので、その偶然に驚いたのです(「津原泰水「 テルミン嬢 」)

個人的な些細な事柄が映画とリンクとするのは嬉しいですね。

嫌いだった点

伏線が多すぎる点。

多すぎるというよりも、むしろ、全てが伏線です。

記憶の不確かさがリアルに体験できるのは、「 メメント2000年)」における記憶障害体験に似ているかもしれません。

メメントの主人公は、それを自覚していて忘れないように工夫していますが、今作でのアンソニーは自覚症状がないために、「 何かおかしなことが起こっている 」という漠然とした不安を感じています。

もう一つは、最近見た「 旅立つ息子へ(2021年)」でも感じましたが、宣伝文句はどうにかならないでしょうかね(「 ラスト20分、号泣の嵐が劇場を包み込む 」など)

泣くために映画を見に行くのではないのですから。

見どころ

老いによる認知症、現実と幻想、現在と過去の入り混じる戸惑いを追体験ができるのが、今作の魅力であり、見どころでもあるでしょう。

それを可能にしたのが、映像によるトリックもありますが、何よりもアンソニーの名演にあります。

眉のミリ単位の動きや、微かな眼差しの輝きで、戸惑いを演じられるのは、熟練したアンソニーだからこそですね。

(個人予想では)故チャドウィック・ボーズマンが受賞するかと思っていたアカデミー主演男優賞を、アンソニーが受賞したのも今作を見て納得しました。

小説では、筒井康隆の老人三部作とも言われる短篇(「 ペニスに命中 」タイトルがアレですが笑)で、認知症の主人公が描かれています。

映画では、今年の1本目に鑑賞した「 キング・オブ・シーヴズ2021年)」も「 老い 」がテーマでしたね。

考察レビュー 

長い間、アンソニーの出る映画で、彼の演じる人物がハンニバルに見えてしまう現象に悩まされていました。

映画シリーズも原作小説も、解説本も繰り返し観たり読んだりしているからでしょう、

「 ザ・ライト エクソシストの真実(2011年)」では、悪魔払いの神父役なのに悪魔より恐ろしく見えてしまったり、カズオ・イシグロ原作の「 日の名残り(1993年)」で演じた執事でも、今にも家主に噛みつきそうな錯覚を覚えていました(感動作ですよ、念のため)

しかし、今作はハンニバル・レクター博士として認識されることなく、アンソニー・ホプキンスとしてみられました。

理由としては、脚本がアンソニー・ホプキンス宛に書かれていて、名前も年齢も本人と同じであること。

アンソニーの父親と、今作の役柄が重なることでアンソニー自身が、いつか迎えるであろう未来の自分を演じられたことが挙げられるでしょう。

レクター博士の入り込む余地はなかったのです。

今作は、もともと舞台劇として書かれた脚本を、監督自身がアンソニー用に脚色して映画化し、アカデミー脚色賞も受賞しています。

もとの演劇は30ヶ国以上で上演されたそうですが、また日本で鑑賞できる機会はあるのでしょうか?

気になります。

まとめ

ファーザー

©ファーザー

自分にとってアンソニー・ホプキンスは、ずっとハンニバル・レクター博士でした。

しかし、今作ではアンソニー自身でした。

人喰い博士は、80歳を越えて、ようやくアンソニー自身に戻れたのです。