「 デュオ 1/2のピアニスト 」公開記念インタビュー(ピアノ・デュオ 坂本彩、坂本リサ姉妹)

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読者の皆様、きょうだいはいらっしゃいますか。

私が子どもの頃はなぜか「 一人っ子だとかわいそう 」という風潮がありました。

しかし、例えば同性の兄弟、姉妹の場合、仲が良ければ良いのですが、いつからか根底にはライバル心が宿ってきます。

まして同じスポーツや習い事をしている場合は特にそうです。

アスリートに第2子が多いというのは、上の子のレベルで練習をすることと、負けず嫌いな性格が関係していると私は思います。

では、これが双子だったらどうでしょうか。

今回ご紹介する映画は「 デュオ ½のピアニスト 」実話に基づいた作品です。

©︎デュオ 12のピアニスト

主人公の双子姉妹クレールとジャンヌは、幼い頃からピアノに情熱を捧げ、名門音楽院に入学する。プレネ姉妹とその周囲の支え、あるコンサートのオーディションに向けて厳しい練習に励む中、両手が徐々に不自由になる難病が2人に降りかかる。そして訪れた困難に、双子だからできる「 ある方法 」を生み出しで臨み、自らの運命を変えていく。

本記事では、姉妹デュオとして活躍中の坂本彩さん、坂本リサさんのインタビューをお届けします。

目次

ピアノ・デュオ 坂本彩、坂本リサ姉妹

©︎Keishi Asayama

プロフィール
福岡県福岡市出身。姉の彩は4歳より、妹のリサは3歳よりピアノを始め、彩6歳、リサ4歳の時よりピアノデュオを始める。2021年、最難関として知られるARDミュンヘン国際音楽コンクールピアノデュオ部門において、日本人デュオとして初の第3位入賞・併せて聴衆賞・特別賞を受賞。姉妹ともに東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程ピアノ科で学び、ドイツ国立ロストック音楽・演劇大学ピアノデュオ科修士課程、および同大学の国家演奏家資格課程を最優秀の成績で修了。2024年11月、待望のデビューアルバム「Duettist」をリリース。

ーー姉妹デュオということですが、お仕事でも家でも一緒ということでしょうか。

彩さん「 ピアノデュオを姉妹でやる上で、常に 2 人だけで練習しているわけではなく、一人ひとりで練習している時もあります 」

ーー映画の中のクレールとジャンヌは激しくぶつかり合うシーンがありました。お2人も衝突することはありますか。

彩さん「 姉妹だから何でも言えてしまうというのはあります。しかし、それは良い音楽を追求してしまうからです」

ーーそれが練習に響いてしまうことはありますか。

彩さん「 そういったことはあまりなく、上手くいかない時は無理して音楽に向かわずに気分転換します。1人で散歩に出たり、好きなことをしてまた音楽に向かう。そして練習に戻るとひきずることはありません 」

リサさん「 散歩はとても良い気分転換です。狭い練習室を出て、外に出て歩く。その風の音や鳥の声、いろいろな自然の音を聞いていると、心がリラックスします。このリセットされる感じは、ピアノをやっている人もそうでない人も皆さん、通じることだと思います 」

ーー実にそうですね。誰でも行き詰ることはあります。それでも、なかなか上手く行かない時はどうしたらいいでしょう。

リサさん「 気持ちが乗らないのに練習しないといけないと義務のように思ってしまうと集中できず上手くいかないので、ピアノに限らず、自分をリセットできる状態に持っていけることが大事だと思います 」

ーーなるほど、自分をリセットすることがスキルとして習慣づいていれば、どの人も生きやすいかもしれませんね。

彩さん「 私たちの場合はよく美術館に行きます。自分の感性、五感が刺激されます 」

リサさん「 絵を見てると何かを感じることができる。そしてそれがピアノに向かう原動力になるんです 」

芸術家に限らず、人が成長するにあたって、その過程で夢を持ち、それに向かって頑張るには、周囲、とくに家族の協力と努力があったと思います。映画の中でも、双子姉妹のピアノにかける両親の姿が描かれていましたが、お2人にとってご両親はどんな存在ですか?

リサさん「 私たちが小さい頃から両親はとても応援してくれました。一緒に頑張ってきてくれたと思っているので、反抗が全くありませんでした。プレッシャーを感じるよりも、両親が自分の人生を捧げて、私たちの応援をしてくれていることへの感謝です。父は『 チーム坂本 』と言うんですよ(笑) 」

彩さん「 両親はいつもコンサートに来てくれます。仕事をしながらCDを聴いてくれたり、朝起きて朝食を食べながら『 さあ、今日も2人のCDを聴こう。今日はこの間の演奏会の録音を聴こう 』という感じで、ずっと演奏を聴いてくれています。一番のファンが両親というのは、本当に心の支えです。両親のためにもっと頑張ろうという気持ちです 」

ーー映画の中では双子姉妹に厳しい父親の設定でしたが、お2人のご両親はとても優しく見守ってくださっているのですね。

彩さん「 小さい頃から家族とピアノに向き合ってきたというのは、映画と同じですが、私たちの両親は、私たちを全く否定しませんでした。私たちのために両親は、自分たちの時間やお金を費やしてくれて、自分の選んだ道が家族の人生にも影響を与えているので、上手くいかない時は『 本当にこの道でいいの?』と、今でも感じる時はあります 」

実は大学時代までは彩さん、リサさんそれぞれソロの勉強をしていたが、「 ピアノデュオ科 」という特殊な学科がある学校に留学することを決めたのだという。

リサさん「 デュオをやったことによって見ることのできた世界や景色が本当にたくさんあるので、私たちにとってはピアノデュオという選択が最善だと思います。ソロで舞台に立つ時、ピアニストは孤独なんです。たくさんのお客様の前で、1人ピアノの前に座って演奏する。練習も常に1人です。でも、デュオになり、練習も2人になりました。2人で音楽を作り、2人で舞台に上がる。音で会話しながら演奏するということが、ソロの時とはガラッと変わったんです。新しい世界がデュオをすることによって見えました。大きな舞台に立たせていただけたこともデュオのおかげという部分もあり、それまで見ていた世界とはまるで違いました 」

さて、本作の双子姉妹は、突然降りかかった難病という試練に立ち向かいます。しかし、双子だからできた、ある秘策で、夢を諦めないのです。

ーーもしもお2人がクレールとジャンヌのようにピアノを弾くことが困難になってしまったとしたらどうすると思いますか。

リサさん「 私たちもクレールとジャンヌと同じように、2人でピアノを弾く道を選ぶと思います。困難にぶつかったから諦めるのではなく、なんとかして2人で続ける方法を模索します。でも、クレールとジャンヌの見つけ方は、本当に奇跡ですよね 」

彩さん「 もしもあの状況に直面したとしたら、普通なら演奏は諦めないといけないと思うのではないでしょうか。もうピアノも楽譜も見るのも辛いんじゃないかと……そんな風に映画を見た後に考えました。 」

そうです、それはその状況になってみないとわからないこと。

ただ一つ、お2人のお話を伺っていて思ったのは、この2人なら、ピアノを諦めずに何かを模索するでしょう。あの映画の主人公と同じように。

さて映画は、厳しい父親、2人を比較する教師、そして難病、など。

厳しい芸術の世界で緊迫する中、互いに切磋琢磨し、難病の末、思いついた方法は二人だからこそできた奇跡と言われるのです。

親は、できることなら子どもに困難や苦労はさせたくありません。

しかし、それを越えた先に見えるものがあるなら、その苦しみさえ見守らないといけないのでしょう。

この先もし彩さんとリサさんに困難が訪れても、きっと「 チーム坂本 」なら乗り越えられる。

環境は似て非なるものですが、両方を知ることで分かったことがありました。

それは人は皆、いつ困難がやってくるか分からないけれど、周囲の愛や支えを元に奮起する力をもっているのだということでした。

そして何よりもプレネ姉妹も坂本姉妹も「 ピアノが好き 」

この情熱があれば、奇跡は起こるのかもしれないと思うのです。

デュオ 1/2のピアニスト(作品情報)

公開日

2025年2月28日

上映時間

109分

予告編

死ぬまでに観たい傑作映画「 コーダ あいのうた 」のキャスト・あらすじ・レビュー(アカデミー賞)

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執筆者

文・ライター:栗秋美穂

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