【 クエンティン・タランティーノ作品 】「 ヘイトフル・エイト 」考察・解説レビュー、あらすじ&キャストまとめ

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本作は猛吹雪の中、家屋に閉じ込められた8人の騙し合いを描いた密室劇です。

こちらは8人を主題としているほか、タランティーノ8作目であり、タイトルロゴは「 The Hateful 8 」や、「 The H8ful Eight 」など「8」を強調して表記されました。

なお、この映画は残虐描写、フルヌードシーンからタランティーノ初のR18指定となり、制作前には脚本が流出したり、裁判沙汰になったりと公開前から話題となりました。

目次

ヘイトフル・エイト

©︎The Hateful Eight

あらすじ

南北戦争終結から数年後のワイオミング州の冬。登場人物たちは猛吹雪の中、足止めを食らい山の中のロッジで一夜を共にすることになった。100万ドルの賞金首であるデイジー・ドミニクを鎖で手につないでいる賞金稼ぎのジョン・ルースは、この中にデイジー・ドミニクの仲間がいることを確信する。そんな中、密室殺人が発生しロッジには緊張感が張り詰める。

原題

The Hateful Eight

公開日

2016年2月27日

上映時間

167分

予告編

キャスト

  • クエンティン・タランティーノ(監督)
  • サミュエル・L・ジャクソン
  • カート・ラッセル
  • ジェニファー・ジェイソン・リー
  • ウォルトン・ゴギンズ
  • デミアン・ビチル
  • ティム・ロス
  • マイケル・マドセン
  • ブルース・ダーン
  • ジェームズ・パークス
  • ゾーイ・ベル
  • チャニング・テイタム

公式サイト

なし

作品評価

  • 映像
  • 脚本
  • キャスト
  • 音楽
  • リピート度
  • グロ度
  • 総合評価

考察レビュー

©︎The Hateful Eight

本作はサミュエル・L・ジャクソンにカート・ラッセル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、タランティーノ作品の常連が多数出演。

前半の馬車でのシーンを除いてほとんどがロッジの中での密室劇となっております。

さらに上映時間は167分とタランティーノ作品の中でも最長で、鑑賞するのにかなりのカロリーを要する作品となっております。

しかし、おおむね評価は高い作品で、僕も1回目は理解できず辛さを感じました。

しかし、二回目以降はそこそこ面白く楽しめました。

上映時間の長さと強烈な密室劇でリピートはしにくいかなと思い、総合評価は普通です。

本作に関しては、紹介したい事柄が少し多いので大まかに3つに分けます。

撮影方法について

本作はウルトラパナビジョン70という撮影方式を採用しています。

ここから少し難しい話になります。

コスト削減と目まぐるしい技術の進歩により、今やデジタルでの撮影が主流となったハリウッドでも、フィルムによる撮影にこだわる映画監督はたくさんいます。

一般的にフィルムでの撮影は35mmフィルムですが、70mmフィルム(65mmカメラで撮影し、70mmの上映用のプリントで映す。)という通常より横幅の広いワイドな映像が撮れるフィルムを採用した映画もあります。

(クリストファー・ノーラン監督「TENET」など。)

しかし、本作のウルトラパナビジョン70はその中でも更に特殊であり、普通の35mmカメラを3台使い、3台の映写機で1つの映像を、147°(人間の視野角と同じ)の湾曲したスクリーンに投影するシネラボという上映方式を、

横幅の広い65mmフィルムを1台で撮影できるよう特殊整備されたカメラを使っており、通常の70フィルムよりも横幅の広い映像が上映できます。

と専門的な話になりましたが、とにかくめちゃくちゃワイドで絶景・壮観な映像ということです。

実際このウルトラパナビジョン70で本作を見た方のレビューによると、

「 とにかく雪景色が壮観!」「 自分も今そこにいるみたい!」という感想がありました。

ですが、この映像を上映できる映画館は日本にはなく…。

日本では本作の本当のポテンシャルを発揮できていないということになります。

よって、日本では通常のサイズに編集された上で上映されました。

本当にただの1つもなかったのでしょうか…。

脚本流出事件

本作は実際のクランクインの遥か前、脚本執筆段階から波乱でした。

本脚本の執筆初期段階の時点で流出し、ネットに拡散されてしまいました。

これにタランティーノは激怒。

タランティーノは拡散したサイトを提訴し、制作中止を発表しました。

タランティーノ曰く、執筆初期段階で中途半端な出来の脚本が世に出たのが、怒りのキッカケだそう。

しかし、泣けるのがここからです。

この時点で出演が決定していたサミュエル・L・ジャクソン、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーンというタランティーノ作品常連の俳優たちがこのままボツにするのは、もったいないと流出した脚本の朗読会を実施しました。

するとこれがかなりの大好評。

ファンから是非ともこれを映画にしてくれ!というメッセージが止まらなかったそうです。

その脚本は全く中途半端な出来ではなかったということですね。

そこでタランティーノは、ファンの熱意とその脚本の素晴らしさに胸を打たれ、本作の撮影に入りました。

タランティーノと俳優たちの友情、ファンの熱意が感じられるすごく素敵なエピソードだと思います。

ストーリー・登場人物について

上記で素敵なエピソードを記載しましたが、それが想像できないほど内容はエグいものになってます。

それもそのはず、本作はタランティーノ作品で唯一のR-18指定の作品なのです。

登場人物が全員ヘイトフル(悪人、憎き存在)であり、誰も好きになれません。

残虐で見ていてキツいシーンが多く、唯一の女性キャラであるデイジーはしょっちゅう殴られ、顔中アザだらけ。

終盤にはいろんな人の血や体液などでドロドロの姿に。

この役を演じているジェニファー・ジェイソン・リーはとても美人でキュートな方ですが、この映画では見る影もありません。

主人公がこれから殺す兵隊を素っ裸にし、極寒の雪山を歩かせているシーンもあります。

それらのシーンから僕が思ったのは、本作は前作「 ジャンゴ 繋がれざる者 」と同じく、人種差別をテーマにしていると思いました。

前作「 ジャンゴ 繋がれざる者 」は奴隷制度がキッカケとなった南北戦争直前を時代背景とした黒人奴隷の復讐・救出劇でした。

本作は南北戦争後を時代背景としており、未だ残る黒人差別や、黒人を大勢殺害した白人の元兵隊と、それに恨みを持っている黒人の元兵隊。

と前作よりも生々しくリアルな人種差別の描写が垣間見えます。

恐らくタランティーノの中でも人種差別問題は前作でも消化しきれなかったのでしょう。

文・ライター:たかを

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